男性のがん死亡率1位は青森県。その理由は?/鎌田 實先生に聞く(1)

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日本は、各都道府県内を3から21の二次医療圏に分け、全国どこでも標準化した救急医療やがんの高度医療を受けられるようにしてきました。全国には344の二次医療圏がある。国立がん研究センターが昨年発表した、2012年の男性の全がん標準化死亡比のデータを見ると、がん死亡率の低いトップ10に、長野県内の五つの医療圏が入っています。ぼくの住んでいる諏訪も含まれている。他は、岐阜県飛騨、静岡県西部、愛知県東三河北部など。女性で最もがんの死亡率が低いのは、沖縄県八重山です。

 

がんセンター設置よりも禁煙

これらの医療圏に共通点として浮かび上がることは、地域にがんセンターがないという点。がんセンターを作ればがんの死亡率が下がるわけではないということです。

喫煙とがんに相関関係があることはよく知られています。2010年の国民健康・栄養調査によれば、男性で習慣的に喫煙している人の割合が最も高いのが青森県でがん死亡率も1位。2位和歌山県、3位鳥取県、4位北海道。日本一死亡率の低い長野県は44位。がん死亡率の低い熊本県は、45位。福井県もがん死亡率の低い県だが、喫煙率は全国で一番低い。このデータを見る限り、たばこをやめることが大事だということになります。がんの最先端医療も大事だけど、喫煙者を減らすことのほうが手っ取り早く効果が出そうなのです。

 

野菜摂取量日本一で死亡率低下

長野県は野菜の摂取量が日本一多い。野菜は食物繊維の塊なので、腸の働きを良くしてくれる。多くの免疫細胞が腸にあるので、腸が良くなれば免疫機能も良くなる。さらに食物繊維の王様である寒天をよく食べていることも、腸を良くし免疫力を上げている可能性があります。野菜摂取量日本一になるために、一番効果があったのが「具だくさんみそ汁」でした。みそ汁に野菜をたっぷり入れ、さらにきのこやこんにゃくも入れる。トン汁に近い。豚が入っていないトン汁なのです。

繊維をたくさん摂ると、免疫力が上がる。野菜に含まれるポリフェノールは、抗酸化作用があり、細胞が酸化し傷ついてがん化するのを防いでくれます。長野県は、野菜をたくさん食べることで、がんの死亡率が日本一低い県となったのです。減塩運動に取り組んだことも大きい。塩分摂取量と胃がんは正比例の関係にあることが分かってきました。胃に塩分があると、ピロリ菌が活発に活動し、前(ぜん)がん状態を作りだすのではないかといわれています。

胃がんの死亡率が全国で2番目に低いのが熊本県。熊本県の男性の塩分摂取量は、47都道府県中41 番目です。塩分摂取量が少ないことが、熊本県の胃がんを少なくしている可能性があるのです。飲酒習慣者は、多い方から順に、青森県、鳥取県、島根県、秋田県、岩手県。全がんの死亡率とおそらく相関していると思う。飲酒の機会を減らすことががんの死亡率低下につながりそうです。

長野県の健康診断の受診率は決して高くありません。中位くらい。健診をすればいいというのではなく、健診をきっかけに、生活習慣を見直すことが大事なのです。塩分を減らし、野菜を多く摂り、きのこや海藻などの繊維の多いものを食べ、発酵食品を食べるなど、食生活を変えることが重要。がんの先端医療に安心するのではなく、毎日の生活の仕方が大事なのです。

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鎌田 實(かまた・みのる)さん
鎌田 實(かまた・みのる)さん

1948 年生まれ。医師、作家、東京医科歯科大学臨床教授。チェルノブイリ、イラクへの医療支援、東日本大震災被災地支援などに取り組んでいる。近著に『遊行(ゆぎょう)を生きる』(清流出版)、『検査なんか嫌いだ』(集英社)、『カマタノコトバ』(悟空出版)、『「わがまま」のつながり方』(中央法規)。

この記事は『毎日が発見』2017年11月号に掲載の情報です。

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