70歳から料理を始めて料理研究家に! 小林まさるさん(89歳)の「挑戦人生」

90代でも現役宣言! それぞれの分野で活躍されているお二人にインタビューしました。今回は、料理研究家の小林まさるさんにお話を伺いました。

【前回】「いまの私は、老いの実況中継」90歳の評論家・樋口恵子さんに訊く「バイタリティ豊かに生きるコツ」

「夢は、男のための料理教室」
小林まさるさん(料理研究家)89歳

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「19年間、俺が磨いてきた雪平鍋。きれいだろ」とまさるさん。

60歳からの人生は長い。

迷わず挑戦。前進あるのみ

小林まさるさんが料理の仕事を始めたのは70歳のとき。

長男の妻で、料理研究家の小林まさみさんが初めて料理の本を出すことになり、「洗い物でも手伝おうか」と声を掛けたのがきっかけだったそうです。

「料理研究家として独立したばかりのまさみちゃんは、まだアシスタントがいなくて、てんてこ舞いしてた。

それで、見るに見かねて手伝ったら、そのままずっとアシスタントをすることに。

俺は、鉄鋼会社を定年退職して、釣りをしているだけだったからね。

それなら家のことは掃除でも洗濯でもなんでもやるし、アシスタントもやるから、『まさみちゃんは料理に全部ぶっこめ!』って言ったのが始まりだよ」とまさるさん。

このような経緯で誕生したのが、嫁が料理研究家で、舅がアシスタントという異色のコンビ。

二人はすぐにテレビや雑誌で人気者になりました。

「まさか自分がテレビに出て料理をするとは思ってなかったよ。

でも、年だからダメだとか、嫁と一緒で恥ずかしいなんてことは、一切考えなかった。

年だからこそ、やる。

後がないんだから前向きに行かなきゃ。

後ろ向きになったらガンバコ(棺桶)が待ってるだけだもんな(笑)。

だから、アシスタントを何年かやって『料理の本を出さないか』と言われたときも、こんなチャンスは二度とないと思って、すぐ『やる、やる』って言ったね」

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まさるさんが作ってくれたのは、北海道で過ごした子ども時代によく食べたという母の味。大きな真鱈の生たらこ、玉ねぎ、しらたきを甘辛いしょうゆ味で煎りつけた日本酒によく合う一皿でした。

78歳で自分の料理本を出版したまさるさんは、88歳になったのを機にYouTubeにも挑戦。

「小林まさる88チャンネル」と題し、酒のつまみや簡単な料理だけでなく、趣味の釣りなども披露しています。

「俺はね、定年前に連れ合いに先立たれたの。

昔から料理や家事をしていたことが、いますごく役立ってる。

"男は厨房に立つな"なんて、侍時代の男の勝手な言い分。

人生何が起きるか分からない。

奥さんに先立たれたら本当に困るから、男も家事ができた方がいい。

特に年をとったら料理をした方がいい。

料理を作って『うまい!』と言われたらうれしいし、料理は段取りを考えるから頭の体操にもなる。

台所を片付け、買い物に行くのも運動になるからね」自宅の料理教室やテレビの料理番組ではまさみさんのアシスタントを務め、家族が忙しければ食事を作り、トイレや風呂掃除もやるというまさるさん。

2023年4月で90歳とは思えない元気さです。

「俺は樺太で生まれて、15歳で北海道へ移ったの。

父親が炭鉱の修理員だったから、俺も高校卒業後は炭鉱で働いた。

27歳から3年間は、炭鉱員としてドイツにも行ったよ。

きつい仕事だったから、そこで体の基礎ができたんだろうな。

いまでも動くのは、全く苦にならない。

でも、元気だと思っていても、料理の材料を買い忘れて、『あー、お父さんボケてる』なんて言われることもあるよ(笑)。

そう言われて怒る人もいるけど、むしろ『気付かせてくれてありがとう』だよ。

うっかり忘れが増えたと思ったら、いつもメモを取るようにして、何度も確認をする。

出かけるときも、『窓閉めた、ガス止めた』と、指さし確認をする。

そういう習慣を身に付ければ、物忘れも防げると思うよ」

そう話すまさるさんの健康維持法も、ユニークな習慣ばかり。

「まず、風呂体操。

体操をしようと決めても、俺は三日坊主になるタイプ。

風呂に入るときに体操をすれば忘れないだろうと考えて始めたら、35歳のときから続いてる。

あと、車に乗ったときは、目にした車のナンバーをパパッと足し算することも続けてる。

例えば、887だったら、(8×3-1)で23。

これは、頭の体操になる。

息子にも、親父、計算速いなぁと驚かれるね(笑)」

まさしく、継続は力なり。

70代、80代と新しいことにチャレンジしてきたまさるさん。

90代のチャレンジは? と聞いてみると「酒のつまみを作ってみんなで一緒に飲める、男のための料理教室を作るのが夢だね」と返ってきました。

「60歳からの定年後の人生は、本当に長いよね。

70歳で料理の仕事を始めて、もう20年になるなんて信じられないよ。

でも、元気でいれば、90代になっても何でもできる。

挑戦あるのみ、前進あるのみだよ!」

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これが、「生たらこの炊き炊き」です。

取材・文/丸山佳子 撮影/原田 崇
 

小林まさる(こばやし・まさる)さん
料理家小林まさみさんの義父。料理好きが高じて、定年後70歳にしてまさみさんの料理アシスタントに。現在は、雑誌、テレビなどでシニア料理家としても活躍中。著書は、『小林まさるのカンタン!ごはん』(KADOKAWA)など。

この記事は『毎日が発見』2023年1月号に掲載の情報です。

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