何歳になっても持ち続けたい「生きがい」はありますか？ 年金3万円、数々の病に見舞われて、一日のほとんどをベッドで過ごしていた84歳のG3（じーさん）は、ミシンと出会って生活が激変！ SNSで手作りのがま口バッグが話題になり注文が殺到するまでになりました。妻のB3（ばーさん）や、娘、孫たちと明るく前向きに生きるG3の日々を綴ったエッセイ『あちこちガタが来てるけど 心は元気！ 80代で見つけた 生きる幸せ』（KADOKAWA）より、人生後半の生き方のヒントをお届けします。
※本記事はG3sewing著の書籍『あちこちガタが来てるけど 心は元気！ 80代で見つけた 生きる幸せ』から一部抜粋・編集しました。
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G3の趣味は詩吟です。
詩吟のコンクールなどでもらった賞状を「ちょうどいい厚さだった」と、がま口バッグの型紙に。
びっくりしましたが、何事にも自由な人なのです（笑）。
材料が買えなくて困っていたとき、G3の友人が使わなくなったネクタイを送ってくれました。
ネクタイなので、素材はほとんどがシルクです。
B3が、ムダにしないようにていねいに糸をほどき、アイロンをかけて1枚の布にしてくれま した。
元はネクタイだから、細長い布です。
G3は、数枚組み合わせて縫い、ポーチにしたのです。
「すごいやろ！」と世紀の発見をしたように得意気なG3。
さらに、うれしそうに、こんなことも言いました。
「生地がな、喜んどる！」。
私は「それはパッチワークっていう手法で、何百年も前からあるものだよ」とか「柄と柄と合わせるなんて、センス悪い！」なんて、G3に対して、いつものように憎まれ口を叩いてしまいました。
G3は、そのネクタイポーチを、私の主人のお弁当入れとして使って欲しいと言いました。
水分がついても大丈夫なように、裏地はナイロン製にしてありました。
そのナイロン生地は、なんとB3の自転車カバーでした（笑）。
落ち着いて見てみると、パッチワークのことを知らずに、細長い布を組み合わせてポーチにした発想力はすごい。
柄と柄の合わせ方も悪くない。
どうにか有効に使いたいと思っていたネクタイの活用法にも、共感できます。
おまけに、裏地をナイロン製にしたのも、用途を考えたG3なりの工夫です。
B3からも「あんたが帰った後で、落ち込んでいたよ」と言われ、いい部分はちゃんと褒めればよかったなと反省しました。
商品は売れないけれど、G3の物作りへの情熱は止まりません。
家族が、「やりすぎはダメだよ」と注意しても聞きません。
G3のミシンの腕は、少しずつ上がってきました。
中でも、ヒットだったのは長女のために作ったトートバッグ。
介護の仕事をしている長女は荷物が多く、バッグを3〜4個持って出勤していました。
だから、ポケットがたくさんついている大容量タイプです。
これなら荷物が1個にまとめられます。
トートバッグの仕上がりには、私も感激しました。
長女も喜んで職場に持って行くと、職場の人にも「使いやすそう！」と好評。
友人に宣伝をして、注文まで取ってきてくれました。
元々は、私が縫い方を教えたのですが、今では私にはできないような難しいものまで縫えるようになりました。
先生がいるわけではなく、全て自分で工夫して、技術を習得していきました。
どんなものでも、必ず「できる！ できる！」と大口を叩くのです。
私が帰った後、「すごく苦労していたよ」とB3が様子を教えてくれます。
そんなに大変なら、「最初からできないって言えばいいのに」と思いますが、職人のプライドなのか、絶対に「できない」とは言いません。
でも、そんなG3に、長年培ってきた職人魂を感じ、徐々に、すごいなと思うようになりました。
