何歳になっても持ち続けたい「生きがい」はありますか? 年金3万円、数々の病に見舞われて、一日のほとんどをベッドで過ごしていた84歳のG3(じーさん)は、ミシンと出会って生活が激変! SNSで手作りのがま口バッグが話題になり注文が殺到するまでになりました。妻のB3(ばーさん)や、娘、孫たちと明るく前向きに生きるG3の日々を綴ったエッセイ『あちこちガタが来てるけど 心は元気! 80代で見つけた 生きる幸せ』(KADOKAWA)より、人生後半の生き方のヒントをお届けします。
※本記事はG3sewing著の書籍『あちこちガタが来てるけど 心は元気! 80代で見つけた 生きる幸せ』から一部抜粋・編集しました。
【前回】何でも「できる !」と大口を叩く80代父。止まらない物作りへの情熱!
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だんだん難しいものが作れるようになったG3は、私のリクエストでがま口バッグに挑戦します。
私はがま口バッグが大好きなのですが、店頭で見ると値段が高く、いつも悩んだ末に買えずにいました。
G3が作ってくれたら、私がうれしいし、人気商品にもなるはずだと思いました。
まずは、小さながま口財布から作り始めましたが、これが難しい。
最初に出来上がったがま口財布は、形が歪んだとんでもないものでした。
私は、思わず「下手 !」と言ってしまいました。
でも、それがG3の職人魂を燃え上がらせ、がま口作りに没頭していきます。
当時作ったがま口財布を家族にあげていましたが、「おじいちゃんが持ってけ持ってけって言うけど、いらんから」と、私にクレームが入ります。
最近になってテレビの取材を受けたときに「以前のがま口財布を映像に撮りたい」と頼まれ、「昔作ったがま口財布を持ってない ?」とみんなに聞いたら、全員に「捨てた !」と言われました。
それくらい下手だったのだと思います。
でも、負けず嫌いな職人は諦めるはずもなく......。
だんだんうまくなってきたので、いよいよもっと大きい、がま口バッグを作り始めました。
そんなG3を見ていた次女が、「新型コロナウイルスの特別定額給付金10万円を私ら3人で出して、新品の生地をどさっと買おう」と、言い出しました。
長女も「G3への投資やな(笑)。返ってくる可能性は低いけれど」と賛成。
私は、「ええ〜 ! 全額は無理だけど、半分なら......」と一番消極的に賛成(笑)。
こうして、半額5万円×3人分の15万円で生地を買うことにしました。
このとき3人で、「これだけ生地があって、毎日何か作っていたら、おとなしく死ぬだろう」なんて、不謹慎な話までしていました。
また、一方で、私にはこんな思いがありました。
G3の年金は月3万円、B3の年金は月4・5万円なので、本当に貧しい生活です。
今まで貧乏だったので、貯金もほとんどありません。
病院代、薬代を払うとほぼ終わり。
好きなものも食べられない、欲しいものも買えません。
子どもたちも援助はしていましたが、それぞれの家族もいるので限られた金額です。
それに、お金を渡すだけなのは、以前、G3の飲食店経営のための資金、B3の運転免許取得の費用などを出した経験から、あまり良い思い出がありません。
その場限りの"焼け石に水"という感じがして、モヤモヤしていました。
魚をあげるのではなく、魚釣りの方法を教えたら、2人の生活は潤うし、気持ちも明るくなるのではないか。
金額は少なくても、自分の力でお金を生み出すことができるような仕組みを作れないだろうかと、考えていました。
だから、この15万円をチャンスと捉えました。
がま口バッグを作れるほどG3のミシンの腕が上がったので、「これはいけるかもしれない !」という予感も少しだけありました。
G3sewingを代表する椿のがま口バッグ。
84歳のG3(=じーさん)が、明るく華やかなバッグを作っています。出来たてほやほやです!