何歳になっても持ち続けたい「生きがい」はありますか? 年金3万円、数々の病に見舞われて、一日のほとんどをベッドで過ごしていた84歳のG3(じーさん)は、ミシンと出会って生活が激変! SNSで手作りのがま口バッグが話題になり注文が殺到するまでになりました。妻のB3(ばーさん)や、娘、孫たちと明るく前向きに生きるG3の日々を綴ったエッセイ『あちこちガタが来てるけど 心は元気! 80代で見つけた 生きる幸せ』(KADOKAWA)より、人生後半の生き方のヒントをお届けします。
※本記事はG3sewing著の書籍『あちこちガタが来てるけど 心は元気! 80代で見つけた 生きる幸せ』から一部抜粋・編集しました。
【前回】なかなか売れない80代父の手作りバッグ。18歳孫のアイデアでSNSに挑戦!?
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ちょうどその頃、今のG3sewingの看板商品になっている椿の柄のがま口バッグが仕上がりました。
椿の柄の生地は、G3と2人で「絶対にかわいい。これで作りたいね!」と意見が一致しました。
ただ、姉たちからは「こんな派手な柄、誰が買うの?」、孫たちからは「花柄、おばさんっぽい」と反対意見が続出。
でも、G3と私の勘を信じて、がま口バッグを試しに作ることにしました。
そして、G3ががま口バッグを持っている写真を、ツイッターを始めて1週間ほどたった7月28日にアップしました。
それは、B3が「そんな格好で、ちょっと......」と言うようなランニング姿のG3。
本当に、G3が「こんな格好ですみません」と言ったので、その姿を私が笑いながら撮影しました。
息子から、G3の正直な姿や言葉を発信したほうがいいと言われていたので、それを試そうと思ったのです。
G3に「何か言うことある?」と聞いたら、「今の時代はすごいなぁ。驚いた。あと20年若かったらな、もっと色々できたなぁ」と言ったので、その言葉をそのままアップしました。
私の本業は英語教室の先生なのですが、ツイッターは仕事に行く前の夕方にアップ。
夜、仕事から戻って確認したら、ものすごい数のDM(ダイレクトメッセージ)が届いていました。
そのほとんどが「どうしたら注文できますか?」というような、ありがたいメッセージでした。
あまりにびっくりして、息子と2人で「なかったことにする?」とツイッターのアカウントを削除しようかと思ったほど。
パニックになった私は、その夜から3日間、目の前の絡まった紐をほどこうとしているけど、なかなかほどけない、体中に虫がくっついてきて懸命にはらっている、そんな悪夢を見続けてうなされました(笑)。
でも、息子が冷静に「俺が交通整理をする。こんなに手間がかかるがま口バッグを安い値段で売っていたら、おじいちゃんが倒れる。ママは、ちゃんとした金額を設定し、どんな生地で作るのかなど商品の概要を考えて。それから、おじいちゃんが効率よく作れる方法も考えたほうがいい」と、言ってくれました。
82歳の老人がやっと見つけた生きがいをどうにか続けさせてあげたいと、息子が動いてくれたことがうれしくて、私の中でもスイッチが入りました。
息子がまいてくれた種を、枯らさずに育てることは、親としての責任なのだと思いました。
そして、奮闘している親の背中を見せることは、息子の今後の人生にとっても必ずプラスになるはずだとも考えました。
今まで、材料費が賄(まかな)えればいいくらいの金額設定をしていましたが、G3の作業代を含めた金額に改めました。
そして、椿の生地を含め、6種類の柄に決めました。
DMをくれた1人ひとりに、金額の変更と柄の紹介、そして「82歳が1人で作っているので、お待たせすることになります。それでも良かったら注文してください」と添えて返信をしました。
注文が取れるように、息子がグーグルの注文フォームを作ってくれたので、それを活用しました。
金額も上がり、お待たせすることになるにもかかわらず、800件も注文が入りました。
82歳のG3の職人魂がこもったバッグが、18歳の息子のアイデアで、たくさんの人に知ってもらうことができました。
三世代の思いが詰まった、G3sewingが本格始動しました。
それからはありがたいことに、予約は途切れることがありません。
1年以上お待たせしてしまうこともありますが、お客様からは「おじいちゃんの体調を第一に考えて。いつまでも待ちます!」というようなありがたい言葉をいただいています。
右は2020年7月28日、左は2021年4月2日ツイッターにアップした写真。
右の写真でバズり、がま口バッグの予約が入るように。
好きなことをしていたら、元気になりました。