何歳になっても持ち続けたい「生きがい」はありますか? 年金3万円、数々の病に見舞われて、一日のほとんどをベッドで過ごしていた84歳のG3(じーさん)は、ミシンと出会って生活が激変! SNSで手作りのがま口バッグが話題になり注文が殺到するまでになりました。妻のB3(ばーさん)や、娘、孫たちと明るく前向きに生きるG3の日々を綴ったエッセイ『あちこちガタが来てるけど 心は元気! 80代で見つけた 生きる幸せ』(KADOKAWA)より、人生後半の生き方のヒントをお届けします。
※本記事はG3sewing著の書籍『あちこちガタが来てるけど 心は元気! 80代で見つけた 生きる幸せ』から一部抜粋・編集しました。
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G3が作る商品はレベルアップし、これならどこに出しても恥ずかしくない、と思えるようになってきました。
でも、教会のお店、知人からの注文、手作りサイトなどでの販売では、なかなか広がっていきません。
そんなとき、アメリカに留学していた私の息子が、1年ぶりに帰ってきました。
数カ月後に再び海外の大学に留学することになっていたので、その間、家にいたのです。
私は、「じーさんと2人で頑張っているけど商品が売れないから、生地代が捻出できない」と、今の状況を話しました。
18歳の息子は、ちょうど反抗期を抜けた時期。
1年間ほとんど連絡がなかったのですが、親元を離れての生活で苦労をしたのだと思います。
留学前は、親に無関心だったのに、このときは私の話を親身になって聞いてくれました。
G3の仕事、病気で、私たちがずっと苦労しているのも知っています。
「おじいちゃん、すごいな。そんな年でミシンを始めて、こんなに上手に作れへんで。SNSを使ったら、もっと広がるよ。特に、ツイッターは一番広がりやすいツールだから、やってみたら?」と、アドバイスまでしてくれたのです。
でも、SNSは詳しくないアラフィフの私は、「ツイッターは若者のツールやろ? 使い方もわからんから、無理。炎上すると怖いから嫌や」と、最初は息子のアドバイスを受け入れませんでした。
でも、息子は「絶対にやったほうがいい」と言って、ツイッターのアカウントを作ってくれました。
さらに、こんなやりとりになりました。
息子「アカウント名はどうするの?」
私「一応、G3sewingって名前は決めているけど、あのじーさんが世に出たら恥ずかしい。私が作っていることにしようか?」
息子「あかん、あかん。そんな人たくさんいるから、売れへんよ。おじいちゃんが作っていることを出したほうがいいよ。アカウント名はG3sewingな」
息子が言っていることに「なるほど」とも思いました。
そして、今まで、販路が拡大できずに、一人で悩んでいたので、やっと助けてくれる人が出てきたと、うれしくもありました。
私は、G3の商品に発表する機会があれば、「名前はG3sewingでいこう」と思っていました。
でも、現実にそんな機会がきたら、「破天荒なG3のことを世の中の人に知られたくない。G3sewingという名前を出したくない」という思いが湧いてきたのです。
複雑な私の気持ちを理解したかどうかわかりませんが、息子は「おじいちゃんの頑張りはすごい。これは世に広めるべきだ」と言ってくれました。
そんな素直な言葉に励まされ、「G3sewingでいこう」と私も覚悟ができました。
そして、G3sewingの名前で、2020年7月21日にツイッターにコメントをアップ。
なんの変化も起こらなかったので、「私の仕事が増えただけやん」と息子に愚痴を言ってしまいました。
でも、息子が「フォロワーがたくさんいる人が、リツイートをしてくれたら拡散していくものだ」と仕組みを教えてくれたので、気長にアップしていこうと思いました。
SNSは、息子世代の若い人にとっては身近なものですが、その親のアラフィフの私には、飛び込むことに勇気がいります。
さらに、その上の80代のG3やB3には、顔が見えない人にインターネットで物を買ってもらうことが、最初は理解できなかったようです。
それに、「じーさんが作っているのが面白い」なんて発想は、私には思いつきませんでした。
最初は半信半疑でしたが、思い切って試してみたのがよかったんだと思います。
今の社会の空気を敏感に感じている若者のアイデアは、貴重です。
私の娘と息子がずっと手伝ってくれています。
G3sewingがうまくいかなくて、私の心が折れそうになったときも、2人に支えてもらいました。
80代が活躍するG3sewingですが、世代を超えて、それぞれが影響し合える場所になっています。