昨年47歳で第1子が誕生。「だから、あと20年は走り続けないと」鈴木浩介さんインタビュー

3月から始まる舞台『奇蹟』で、井上芳雄さん演じる記憶喪失の名探偵と共に、謎の事件に挑む医師役を演じる鈴木浩介さん。俳優としての歩みについて聞きました。

昨年47歳で第1子が誕生。「だから、あと20年は走り続けないと」鈴木浩介さんインタビュー 2202_P071_01.jpg

年をとって、できるようになること、できなくなること。その変化も楽しみなんです。

本当は謎解き、したくないんです!?

――今回の舞台は、鈴木さんの長ぜりふから始まります。

最初に舞台に出て、お客様に語りかけながら物語へと案内する役割なんですが、本当に、どうしようって感じです(笑)。

そもそも僕、謎解きって苦手なんです。

できるだけ平穏に過ごしたい方でして、怖い話とか苦手で...だから事件の謎、本当は解きたくないんです(笑)。

――そもそも舞台の世界に入られたのは、西田敏行さんがきっかけだそうですね。

そうです。

小学4年生の時、再放送していたドラマ『池中玄大80キロ』に感動して。

大学進学で東京に来てから、西田さんのプロフィールを調べたら、青年座のご所属だと知り、会えるかもしれないという一心で青年座の試験を受けました。

結果的に研究生になれたのですが、それまで演劇なんて見たこともなかったんですよ(笑)。

でも入ってから、その面白さに目覚めました。

研究生になって初めて、自分が大学生活とは合っていなかったと分かったんです。

なぜ僕は興味もないサークルにいるんだろうというモヤモヤが吹き飛んで、こんなに面白い世界があったんだと思いました。

僕が恵まれていたのは、演劇をやっていく中で、素晴らしい先輩方に出会えたことです。

例えば、浅野和之さんには舞台での立ち方や歩き方、段田安則さんには「相手のせりふをよく聞いて大きな声で話しなさい」ということを教えていただきました。

いずれも基本中の基本ですが、俳優にとっては、これがいちばん難しい一生のテーマなんです。

相手のせりふをよく聞くということは、相手のことを考えて、どうすれば相手がやりやすいのか、常に考えることでもある。

だから、究極、自分のことは見えていなくてもいいんです。

それは相手が輝かせてくれるから。

......ということは、今回の主役は芳雄くん。

全部、お任せしようと思います(笑)。

――井上さんとは九州の同じ高校のご出身だそうですね。

そうなんです。

同郷ですが、芳雄くんは緻密にお芝居を積み上げて本番に向かうタイプ。

僕はもっと適当というか(笑)。

相手役の方によって本当に変わるので。

"壊れた精密機械"と言われたことがあるぐらい(笑)。

ただ、今回は語り部役でもあるので、僕が壊れたら大変です。

ちゃんとした「精密機械」を目指したいと思います。

あと20年は走り続けないと

――すてきな先輩方のお話がありましたが、年齢を重ねることについては?

楽しみですね。

俳優の仕事は、年をとることがプラスになりますから。

いままでできなかったことができるようになったり、その逆もある。

その変化も楽しみになりました。

でも、この仕事は求められなくなれば、おのずと終わる厳しい仕事。

そういう覚悟は常にありますが、昨年、47歳で子どもを授かりまして...。

だから、あと20年は走り続けないと(笑)。

今回の『奇蹟』は1980年代から精力的に新作を書き続けておられる北村想さんの戯曲で、言葉も瑞々しいし、事件の解決法も、よく考えつくなと思うような斬新な発想です。

そういう戯曲のエネルギーも感じていただける舞台になると思います。

それに芳雄くんとは、コロナ禍で本番直前で中止になった『櫻の園』という舞台で初共演の予定だったんですが、今回やっと実現します。

この未完に終わった舞台が本当に残念で、いまもそのことは、心のどこかで乗り越えられていない気がしています。

だからこそ、『奇蹟』は何としても最後までやり遂げたいですね。

取材・文/多賀谷浩子 撮影/齋藤ジン ヘアメイク=国府田雅子(barrel) スタイリング=久修一郎(インピゲル)

 

鈴木浩介(すずき・こうすけ)さん
1974年、福岡県生まれ。劇団青年座を経て(2004年退団)、舞台や映像作品で活躍。1月からドラマ『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)に出演。

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『奇蹟』

3月12日(土)~4月10日(日)
世田谷パブリックシアター
4月13日(水)~17日(日) 森ノ宮ピロティホール
作:北村 想 演出:寺十 吾
出演:井上芳雄 鈴木浩介 井上小百合 岩男海史 瀧内公美
大谷亮介
記憶喪失の私立探偵(井上芳雄)と彼を支える親友の医師(鈴木浩介)。予想のつかない展開とユーモラスな設定で二人が追う謎の事件を描く、唯一無二の世界観が魅力の舞台。

この記事は『毎日が発見』2022年2月号に掲載の情報です。

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