ものの考え方や見方ひとつで、人生は変わるー父から子へのメッセージ/岩野響『15歳のコーヒー屋さん』

ものの考え方や見方ひとつで、人生は変わるー父から子へのメッセージ/岩野響『15歳のコーヒー屋さん』 21.jpg10歳で発達障害のひとつ、アスペルガー症候群と診断された岩野響さん。中学校に通えなくなったのをきっかけに、あえて進学しない道を選んだ15歳の「生きる道探し」とは?
著書『15歳のコーヒー屋さん』を通じて、今話題のコーヒー焙煎士・岩野響さんの言葉に耳を傾けてみましょう。今回は響さんの父・開人さんからのメッセージです。

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前の記事「響は、そのままでいいー母から子へのメッセージ/岩野響『15歳のコーヒー屋さん』(20)」はこちら。

 

一歩踏み出せば、人とのつながりができる

響に「コーヒー屋をやってみたい」と言われたとき、うれしい半面、もっと一緒に働きたかったな、ととてもさびしい気持ちになりましたね。

15歳の響がコーヒー屋を始めたというニュースは、あっという間に広がり、支援したいという人もたくさんいらして、本当にありがたく思っています。

いま響が仕事に使っている焙煎機は、「若い焙煎士を応援したい」と言ってくださる方に、いただいたものです。その方は、響のことを新聞の記事でお読みになって、純粋に応援したいというお気持ちで譲ってくださいました。本当にありがたいことです。

ふだんは無口な響も、大好きなコーヒーのことだと臆せず話せて、はじめての大人の人とも気兼ねなく話せるようでした。

響がはじめて焙煎を覚えた小型の焙煎器も、じつは知人からいただいたものです。小さい焙煎器から始めたことが、ここまで大きな世界に広がったのはすごいことです。

これからは、継続していくための努力や工夫も必要だし、チャレンジも必要だと思います。失敗もするかもしれません。それでも、まだ15歳。いくらでもやり直しはできるし、それを応援していきたいと思っています。

 
ものの考え方や見方ひとつで、人生は変わる

結婚する前までのぼくは、障害のある人のことについてほとんど知識もなく、理解もしていませんでした。むしろ、遠ざけるようにしていました。

正直言うと、関わると自分が苦労するだけだという気持ちがあったからです。結局は、自分のことしか考えていなかったんですね。

では、そういう人を切り捨てていくのか?

となると、自分の息子ですから、そういうわけにいかない。親としては理解してやるしかなくて、そして、理解することによって、ぼくはものの見方が変わるようになりました。

まず、響との関係がどんどんよくなりました。ぼくらの関係性がよくなることで、夫婦の仲もよくなり、そして、下の息子たちとの関係もよくなるという好循環が生まれました。

響のことを理解することで、こんな考え方しかできないという自分の限界が見えることがあります。それまでの自分に足りなかったものが見えてくるのです。

結局はものの考え方や見方ひとつで、人生は変わります。
人を見るときにも、「この人はこういう人だ」と決めつけるのでなく、こんな面もあるかもしれない、もしかしたら、こういう事情があるのかもしれない、あぁ、やっぱりそうだった、みたいな発見がいろいろありました。

あんなにぶつかって大変だった学校の先生たちも、響のコーヒーを買いに来てくれました。
響のことを心配してくれ、可愛がってくれていることは、ぼくらと変わらなかった。だけど、学校というシステムの中で響だけを特別扱いできないということで、先生方も大変だったんだなと、いまはわかります。

こんな考え方ができるようになったのも、響のおかげだなと思っています。響がこうやっていてくれるのは、ぼくの人生にとって必要だったんだと思います。

いま響は毎日、忙しそうに、立派に働いていますが、もっと遊んでいろいろな経験をするのもありかなと思います。彼なりに頭の中では計画があるようで、お金が貯まったら世界旅行をしたいそうです。そんな日がくることも楽しみです。

 
撮影/木村直軌

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岩野 響(いわの・ひびき)

2002年生まれ。群馬県桐生市在住。10歳で発達障害のひとつ、アスペルガー症候群と診断される。中学生で学校に行けなくなったのをきっかけに、あえて高校に進学しない道を選び、料理やコーヒー焙煎、写真など、さまざまな「できること」を追求していく。2017年4月、自宅敷地内に「HORIZON LABO」をオープン。幼い頃から調味料を替えたのがわかるほどの鋭い味覚、嗅覚を生かし、自ら焙煎したコーヒー豆の販売を行ったところ、そのコーヒーの味わいや生き方が全国で話題となる(現在、直販は休止)。

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『15歳のコーヒー屋さん』

(岩野 響/KADOKAWA)

現在、15歳のコーヒー焙煎士として、メディアで注目されている岩野響さん。10歳で発達障害のひとつ、アスペルガー症候群と診断され、中学校に通えなくなったのをきっかけに、あえて進学せずコーヒー焙煎士の道を選びました。ご両親のインタビューとともに、精神科医・星野仁彦先生の解説も掲載。

『15歳のコーヒー屋さん』

 

「HORIZON LABO」公式ホームページはこちら「HORIZON LABO」コーヒー豆の通販はこちらで行っています。

 
この記事は書籍『15歳のコーヒー屋さん』からの抜粋です

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