洗剤のボトル集めに夢中だったわが子ー母親が語る幼少期/岩野響『15歳のコーヒー屋さん』(6)

6.jpg10歳で発達障害のひとつ、アスペルガー症候群と診断された岩野響さん。中学校に通えなくなったのをきっかけに、あえて進学しない道を選んだ15歳の「生きる道探し」とは?
著書『15歳のコーヒー屋さん』を通じて、今話題のコーヒー焙煎士・岩野響さんの言葉に耳を傾けてみましょう。

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前の記事「発達障害を知らなかった私たちー母親が語る幼少期/岩野響『15歳のコーヒー屋さん』(5)」はこちら。

 

シャンプーや洗剤のボトル集めに夢中

3歳で保育園に入園しましたが、はじめは馴染めなくて大変でした。でも、保育園に慣れなくて大泣きするという話はよく聞く話ですよね。だから、「やっぱりか」くらいに思っていました。
保育園にいてもずっと機嫌は悪いし、お昼寝はしないしで、保育士さんたちも響の扱いには苦労していたようです。

あるとき、保育園にあった新聞広告の薬局のチラシに響が反応を示して、機嫌がよくなったことに保育士さんが気づきました。その頃の響は、シャンプーやリンスなどのボトルをいっぱいコレクションしていて、100本くらいの容器を、5時間でも6時間でも並べ替えて遊んでいました。そこで、保育士さんに「毎日、薬局のチラシを持って保育園に来てください」と言われました。

保育士さんのアイデアは大正解でした。チラシを保育園バッグに入れて「保育園で先生と見ようね」と言うと、安心して保育園に通えるようになりました。
朝、離れるのが嫌で「ママー」と大泣きしていた響は、途端にすんなりと私から離れられるようになり、先生に「これはアタック、花王、デンターシステマ......」と、喜んで説明していたそうです。

年長クラスになった頃には、ブームが携帯電話コレクションに変わりました。
あまりに響が欲しがるので、友人から使わなくなった機種をもらっては、集めてあげました。

子どもがミニカーや電車、恐竜、虫など、何かに夢中になるという話はよく聞いていたので、響の場合は、たまたま洗剤のボトルや携帯電話なんだろうと思っていました。
だから、薬局に行きたいと言われれば連れていき、携帯ショップを見に行きたいと言われれば連れていきました。楽しい遊園地や動物園などより、響が行きたい場所は、薬局や携帯ショップだったのです。
 

同世代の男の子と興味、関心が全然違う

わが子が楽しそうなようすを見るのは、親としてはうれしいものです。これが好きだと言われたら、親としてはできるだけ協力して揃そろえてあげたいし、関心があるものは大切にしてあげたいと思っていました。

だから、響に行ってみたいと言われたら、迷わず連れていってあげました。
響はもともと物欲がないタイプで、おもちゃやお菓子などを欲しがって困るという子ではありませんでした。ただ、好奇心があるものとないものの差が激しかったですね。興味のあるものに対してはとてもこだわりが強いところがあったので、「あぁ、いまはこれが好きなんだな」というのがわかりやすい子でした。

1~2歳の頃は、私と一緒に公園に遊びに行くと、その辺の石ころや葉っぱや木の枝などを集めてきては、触ったり、なめたりして喜んでいましたね。

雪が降った日も大興奮!冷たい雪を触って大喜びでした。
とにかく、自然の中にいることは大好きで、触って眺めて口にして、まるで「はじめて地球に来た人ですか?」と思うほど。まだ赤ちゃんなのだからなんでもはじめてだし、いろいろ観察して覚えている時期なのかなぁくらいに思っていました。

私自身、洗剤の空き容器を集めるのも、携帯電話を集めることも、そんなに苦ではなかったし、響が喜んでいるのだからいい、と思っていました。

セロハンテープを巻くことにはまっていた時期もありました。そのときはセロハンテープの消費量がすごかったですね。まぁ、巻きたいわけだから、巻かせておけばいいかという感じでしたが。

ただ、なすがままに放っておいたわけではなく、同世代の男の子が興味をもつものを買い与えて、誘導してみようと努力もしました。
保育園や学校で会話に入れず、仲間外れにならないようにと、みんなが遊んでいるゲーム機を買ってあげたこともあります。親が「ゲームをしなさい」というのも、なんだかおかしな話ですよね。

でも、全然遊びませんでした。興味がないものは興味がないんです。
そんなこともあって、響には響なりの感性があって、彼が楽しめるものを大切に、のびのびやっていればいいのかな、とも思うようになりました。


撮影/木村直軌

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岩野 響(いわの・ひびき)

2002年生まれ。群馬県桐生市在住。10歳で発達障害のひとつ、アスペルガー症候群と診断される。中学生で学校に行けなくなったのをきっかけに、あえて高校に進学しない道を選び、料理やコーヒー焙煎、写真など、さまざまな「できること」を追求していく。2017年4月、自宅敷地内に「HORIZON LABO」をオープン。幼い頃から調味料を替えたのがわかるほどの鋭い味覚、嗅覚を生かし、自ら焙煎したコーヒー豆の販売を行ったところ、そのコーヒーの味わいや生き方が全国で話題となる(現在、直販は休止)。公式ホームページはこちら「HORIZON LABO」コーヒー豆の通販はこちらで行っています。

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『15歳のコーヒー屋さん』

(岩野 響/KADOKAWA)

現在、15歳のコーヒー焙煎士として、メディアで注目されている岩野響さん。10歳で発達障害のひとつ、アスペルガー症候群と診断され、中学校に通えなくなったのをきっかけに、あえて進学せずコーヒー焙煎士の道を選びました。ご両親のインタビューとともに、精神科医・星野仁彦先生の解説も掲載。

この記事は書籍『15歳のコーヒー屋さん』からの抜粋です
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