発達障害を知らなかった私たちー母親が語る幼少期/岩野響『15歳のコーヒー屋さん』(5)

5.jpg10歳で発達障害のひとつ、アスペルガー症候群と診断された岩野響さん。中学校に通えなくなったのをきっかけに、あえて進学しない道を選んだ15歳の「生きる道探し」とは?
著書『15歳のコーヒー屋さん』を通じて、今話題のコーヒー焙煎士・岩野響さんの言葉に耳を傾けてみましょう。

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幼少期の響は、とにかく寝ない赤ちゃんでした

響はとにかく、寝てくれない赤ちゃんでした。

寝かせるためにあれこれ試行錯誤しました。でも、はじめての子ということもあって、何が正解なのかもよくわからない。ミルクだとよく寝るけど、母乳だとあまり寝ないと聞くと、母乳で育てているからいけないのか、と悩んだりもしました。

しかも、響は絶対的に睡眠時間が少ない子で、夜中も2~3時間ですぐ目を覚まします。朝は早くから起き出してきて、昼寝をしなくても平気なようす。それに付き合う私たちはクタクタでした。

友人に相談しても、「うちも寝ないわよ」と言われるので、赤ちゃんはそんなものなのかな?
とも思いましたが、夜中の3時頃に起き出して、「わー!」と楽しそうに積み木で遊びだす響を見て、どうしたものかと途方にくれたものでした。

寝かしつけのためにいいと言われることは、ほとんどやりました。
昼間にたくさん遊んですごく疲れさせるとか、車に乗せて寝かせるとか、家中の電気を消して寝たふりをするとか......みんながやっているようなことは、ほとんど試しましたね。だけど、電気を消した真っ暗の部屋でも、響は平気でずっと遊び続けていたのです。

じつは、この寝ないというのも発達障害の症状のひとつだったようです。
発達障害のある子は睡眠障害を抱えていることが多く、なかなか睡眠・覚醒のリズムが確立しないと言われています。定型発達の赤ちゃんだと、生後3~4か月頃には、昼に起きて、夜に寝るという生活リズムができますが、響は2歳になっても、夜になったら寝るという生活リズムにならなかったのです。

散髪や歯磨き、爪切りなども、発達障害の子が苦手とするもののひとつです。特に響は爪切りをとても嫌がりました。ある日、爪を切ろうとしたら、響が突然、気を失ったように眠ってしまったのです。そのときはとても驚きましたが、もしかしたら、意識をなくすことで嫌なことを感じないようにする体の反応だったのかもしれませんね。

爪切りのたびに眠ってしまうことに気づいてからは、毎晩「はい、ひーくん、爪切りするよ。おいで」と誘っては寝かしつけていました。

この爪切り作戦を始めたのは2歳の頃。それまでは本当に寝なくて大変でした。
はじめての子どもだったこと、私たち夫婦が「発達障害」という存在を知らなかったこともありますが、響の症状になかなか気づけなかったのには理由があります。

オムツは意外にすんなりはずれたし、たった1日で断乳することもできました。
言葉を話し始めるのは遅かったのですが、その遅れを取り戻すかのように、話し始めたと思ったら、急に大人のような口調になりました。子どもはちゃんと話せるようになる前にカタコトの言葉を使ったりしますが、そういうこともほとんどありませんでした。

そんなこともあって、ちょっと変わっているけどふつうに成長しているし、子どもってこんなものだろう、と思いつつ毎日が過ぎていきました。3歳児健診は問題なくスルーしました。

(上の写真は左から父・岩野開人、響、母・久美子)

 

撮影/木村直軌

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岩野 響(いわの・ひびき)

2002年生まれ。群馬県桐生市在住。10歳で発達障害のひとつ、アスペルガー症候群と診断される。中学生で学校に行けなくなったのをきっかけに、あえて高校に進学しない道を選び、料理やコーヒー焙煎、写真など、さまざまな「できること」を追求していく。2017年4月、自宅敷地内に「HORIZON LABO」をオープン。幼い頃から調味料を替えたのがわかるほどの鋭い味覚、嗅覚を生かし、自ら焙煎したコーヒー豆の販売を行ったところ、そのコーヒーの味わいや生き方が全国で話題となる(現在、直販は休止)。公式ホームページはこちら「HORIZON LABO」コーヒー豆の通販はこちらで行っています。

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『15歳のコーヒー屋さん』

(岩野 響/KADOKAWA)

現在、15歳のコーヒー焙煎士として、メディアで注目されている岩野響さん。10歳で発達障害のひとつ、アスペルガー症候群と診断され、中学校に通えなくなったのをきっかけに、あえて進学せずコーヒー焙煎士の道を選びました。ご両親のインタビューとともに、精神科医・星野仁彦先生の解説も掲載。

この記事は書籍『15歳のコーヒー屋さん』からの抜粋です

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