日本でめまいやふらつきでつらい思いをしている人は約300万人、そのうち女性は男性の約2.5倍もいるとされています。長年「めまい改善訓練」を患者に教えてきた医師・新井基洋先生は、「めまい」や「ふらつき」の原因の9割は「内耳の不調」にあり、その「内耳の不調」を改善する訓練が必要であると語ります。今回は、新井先生の著書『全国から患者が集まる耳鼻科医の めまい・ふらつきの治し方』を一部抜粋してお届けします。
めまい改善訓練ってどんなもの?
ここからは、めまい改善訓練について具体的に解説します。
なぜ効くのか理由がわかると積極的に取り組めますよ。
【めまいが軽減する仕組み】
小脳を鍛える
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バランスの左右差が回復する
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めまい・ふらつきが軽減する
小脳は、目、耳、足の裏で鍛えます!
それではどうやって小脳を鍛えるのか。
人間は、目(視覚)、耳(前庭覚)、足の裏(深部感覚)から、平衡に関する情報を受け取っています。
小脳はこれらの情報をまとめ、体の各機能を動かして平衡を保っているので、めまい改善訓練(平衡訓練)では前述の3つの場所を刺激して行います。
これを反復することで、めまいに負けない体になるのです。
年齢は関係なし。
いくつであっても小脳を鍛えて平衡機能を高めることで、めまいは改善します。
目、耳、足の裏を刺激してめまいを予防!
めまい改善訓練の効果には 証拠(エビデンス)があります!
「フラフラするのに動いていいの?」。
めまい経験者なら、そう思うことでしょう。
ですがご安心ください。
慢性めまいには、めまい改善訓練による治療は不可欠で、(※)2021年度の慢性期の前庭神経炎の治療法として、エビデンスレベルⅠ、推奨度Aとして認められ、平衡障害改善の効果が証明されています。
私自身、めまいを発症した際に、当院の患者さんとともに訓練を実践し、つらいめまいを克服しました!
※慢性期前庭神経炎ガイドライン2021 平衡訓練:レベルⅠ 推奨度A / 患者 個人に合った平衡訓練を医師が指導した上で自宅で1日3回、合計2分以上
出典:武田憲昭「前庭代償と平衡訓練 慢性期のめまいに対する平衡訓練」
平衡訓練先進国アメリカの標準的な治療法です
私が考案するめまい改善訓練は、めまいの平衡訓練先進国であるアメリカの、平衡訓練の4つの基本的考えに基づいています。
A 症状を起こしやすい動作を繰り返す「馴化訓練」
B 目と耳の反射を鍛える「適応訓練」
C 内耳の代わりに目と足の裏からの神経で補う「代用訓練」
D 耳石を元に戻す「耳石置換法」
なんと、「症状を起こしやすい動作を繰り返す」なんて信じられませんよね!
でも、アメリカでは標準的治療法なんですよ!
めまい改善訓練の4つの分類
A.馴化訓練
症状を起こしやすい動作を繰り返すことにより症状を軽減する訓練
【主な訓練】
・座位及び立位ジャンプヘッドチルトホッピング
・寝返り
B.適応訓練
目(視覚)と耳(前庭覚)の反射刺激を加え、適応をはかる訓練
【主な訓練】
・ふり返る
・上下
・はてな
C.代用訓練
耳の代わりに目(視覚)と足の裏(深部感覚)を活用する訓練
【主な訓練】
・速い横
・ゆっくり横
・速い縦
・ゆっくり縦
・開眼・閉眼50歩足踏み
・つま先立ち
・片足立ち
・つぎ足歩行
・ハーフターン
D.耳石置換法
良性発症性頭位めまい症〈BPPV〉に対する、耳石を元に戻す訓練
【主な訓練】
・エプレ法
・グフォーニ法
・逆グフォーニ法
当院ではA〜Dのたくさんある訓練から、患者さんに最適なものを選択して治療しています。
本書でも自分の症状から選べる項を設けていますので、自宅ですぐに実践できます。
もちろん、高齢のめまい患者さんには、加齢で生じた全身の問題点を明確化し、年齢で落ちた平衡機能をも考えあわせて訓練を選択していますからご安心ください。
それでは次のページで、具体的なめまい改善訓練をご紹介します!