日本でめまいやふらつきでつらい思いをしている人は約300万人、そのうち女性は男性の約2.5倍もいるとされています。長年「めまい改善訓練」を患者に教えてきた医師・新井基洋先生は、「めまい」や「ふらつき」の原因の9割は「内耳の不調」にあり、その「内耳の不調」を改善する訓練が必要であると語ります。今回は、新井先生の著書『全国から患者が集まる耳鼻科医の めまい・ふらつきの治し方』を一部抜粋してお届けします。
■ストレス関与別めまい疾患
「メニエール病」
[起きやすい年齢]30〜50歳くらいの男女
ここからはストレス関与が高い疾患です。
内耳に内リンパ液が異常に増えて、水ぶくれになること(内リンパ水腫)で、平衡機能と聴覚に異常をきたします。
水ぶくれの原因はストレスとも言われています。
めまいは、数十分から数時間で治りますが、何度も繰り返すケースが多く、発作を繰り返すと聴力が低下します。
聴力が安定して、めまいやふらつきが残る場合は、訓練を行ってください。
メニエール病の人は、塩分の摂りすぎに注意をして、水を多く摂取(男性1日2L、女性1日1・5L)しましょう。
《メニエール病治療に中耳加圧療法が保険適用となりました》
メニエール病は、耳鳴り、難聴、めまいを繰り返す疾患です。
中耳加圧療法は、2018年に保険適用となった新しい治療法で、強弱をつけた圧力(圧波)を耳の奥に送り、内耳の過剰なリンパ液を減少させます。
治療の主な流れは、病院より器械をレンタルし、1回3分を1日2回毎日施行。
月間の症状日誌をつけ、月1回通院して状態を確認します。
メニエール病と診断がつき、基本治療では効果がなく、手術を検討しなければならないような重症者に適用となります。
片頭痛に15年も付き合えばめまいの原因に
片頭痛に15年も付き合っていると、めまいを起こす人がいることをご存じですか?
片頭痛は、男性よりも女性の患者数が3倍。
日常生活に影響をきたす大変つらい疾患です。
ところが日本人は、つらいことにもじっと耐える性質ですので、ついつい、耐えてしまいます。
でも、実際には、我慢できずに、吐いて寝込んでしまう方も多いのですよ。
こんな状態を15年以上も抱えていると、ついにはめまいを併発します。
こういった症状を、「前庭性片頭痛」と言い、一般的には「片頭痛性めまい」として知られています。
■ストレス関与別めまい疾患
「片頭痛性めまい」
[起きやすい年齢]25~55歳くらいの女性
片頭痛は頭の片側が急に激しくズキズキする、先に述べたように、女性に多い症状です。
仕事が一段落した週末に発症しやすく、激しい痛みのために嘔吐することもあります。
原因は遺伝のほか、ストレスや脳内の神経伝達物質であるセロトニンの関与、女性ホルモンのエストロゲンの変動などが影響します。
めまいは、片頭痛と同時か、または前後して起こるケースが多いのです。
片頭痛とめまいがあったら、めまい専門医の診察を受け、薬の処方を。
片頭痛予防薬での改善は7割程度で、治らないめまいには訓練が有効です。
■ストレス関与別めまい疾患
「持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)」
[起きやすい年齢]30~50歳くらいの女性
持続性知覚性姿勢誘発めまいは、壮年期に多く、高齢者には比較的患者さんが少ない病気です。
浮遊感、不安定感が3カ月以上にわたって、ほぼ毎日か2日に1度の割合で起こります。
また、立っている姿勢のときにめまいが起こることが多く、朝方よりも夕方に症状が悪化します。
日常生活に支障をきたし、寝たきりになってしまうこともあります。
この病気はストレス関与が高いため、治療には、「めまい改善訓練+認知療法+抗うつ剤」が必要です。
■ストレス関与別めまい疾患
「心因性めまい・めまいに伴ううつ状態」
[起きやすい年齢]10~30歳くらいの男女
精神的なダメージが原因で起こる、真の心因性めまいはまれです。
ストレスで内耳の血流障害などが起き、めまいやふらつきを訴える患者さんはいます。
心因性めまいの患者さんで多いのは、めまいが治らないことによって、うつ状態や不安になり、自宅に引きこもりがちになってしまうケースです。
その結果、体を動かさなくなり、さらに平衡機能が衰え、めまいやふらつきが悪化することは考えられます。
心因性めまいは、めまい専門医だけでなく、心療内科医や精神科医による心のケアも必要です。