聴力ケア

耳が聞こえにくいのは難聴ではなく「大人の中耳炎」かも? 「中耳炎」セルフチェック【耳鼻咽喉科 教授が解説】

何度も繰り返すと孔が塞がらなくなる

中耳炎は、鼓膜の奥の中耳に炎症が起こる病気で、急性と慢性に大きく分けることができます。

例えば、風邪をひいたときに発症しやすいのは急性中耳炎です。

耳と鼻は、空気の通り道の耳管でつながっています。

風邪をひいて鼻水や鼻詰まりを起こしたときに鼻をかむと、いつもは閉じている耳管が開き、鼻水に潜む細菌が中耳に侵入して炎症を起こすことがあるのです。

「急性中耳炎は、耳管の長さが短い小児に発症しやすい病気です。大人は数が少ないともいえます。ただし、子どもの頃に急性中耳炎を繰り返した人や、急性中耳炎で鼓膜に孔が開いた状態が続いている人は、慢性中耳炎のリスクが高くなります」。

急性中耳炎で鼓膜に孔が開いても、すぐに閉じる再生能力が鼓膜にはあります。

ところが、何度も急性中耳炎になって孔が開くことを繰り返すうちに、再生能力が下がり、孔が塞がらなくなることがあるそうです。

結果として、中耳の炎症が慢性化するようになるのですが、慢性中耳炎では急性中耳炎のような痛みはなく、「聞こえにくくなった」といった老人性難聴と間違われやすい症状になります。

「急性中耳炎の後に発症しやすい別の中耳炎としては、滲出性中耳炎が代表格です。耳管が腫れて中耳の液体を排出することができなくなり、その滲出液が中耳腔にたまって聞こえにくくなるのです。痛みや発熱、耳だれもないので、大人で発症すると、やはり、老人性難聴と間違われやすいといえます」と伊藤先生。

滲出性中耳炎は、中耳腔の空気がなくなることで、外圧に押されて鼓膜が内側にへこみ、聞こえにくくなるそうです。

この状態を放置すると、真珠のようなかたまりを形成する真珠腫性中耳炎になり、重篤な事態にもつながります。

取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史

<教えてくれた人>

帝京大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科 教授 
伊藤 健(いとう・けん)先生
1988年東京大学医学部卒。東京大学耳鼻咽喉科、仏国ボルドー第2大学などを経て2011年より現職。難しい耳科手術の経験豊富で最先端医療を提供。日本耳鼻咽喉科学会専門医・代議員。

この記事は『毎日が発見』2022年4月号に掲載の情報です。
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