何度も繰り返すと孔が塞がらなくなる
中耳炎は、鼓膜の奥の中耳に炎症が起こる病気で、急性と慢性に大きく分けることができます。
例えば、風邪をひいたときに発症しやすいのは急性中耳炎です。
耳と鼻は、空気の通り道の耳管でつながっています。
風邪をひいて鼻水や鼻詰まりを起こしたときに鼻をかむと、いつもは閉じている耳管が開き、鼻水に潜む細菌が中耳に侵入して炎症を起こすことがあるのです。
「急性中耳炎は、耳管の長さが短い小児に発症しやすい病気です。大人は数が少ないともいえます。ただし、子どもの頃に急性中耳炎を繰り返した人や、急性中耳炎で鼓膜に孔が開いた状態が続いている人は、慢性中耳炎のリスクが高くなります」。
急性中耳炎で鼓膜に孔が開いても、すぐに閉じる再生能力が鼓膜にはあります。
ところが、何度も急性中耳炎になって孔が開くことを繰り返すうちに、再生能力が下がり、孔が塞がらなくなることがあるそうです。
結果として、中耳の炎症が慢性化するようになるのですが、慢性中耳炎では急性中耳炎のような痛みはなく、「聞こえにくくなった」といった老人性難聴と間違われやすい症状になります。
「急性中耳炎の後に発症しやすい別の中耳炎としては、滲出性中耳炎が代表格です。耳管が腫れて中耳の液体を排出することができなくなり、その滲出液が中耳腔にたまって聞こえにくくなるのです。痛みや発熱、耳だれもないので、大人で発症すると、やはり、老人性難聴と間違われやすいといえます」と伊藤先生。
滲出性中耳炎は、中耳腔の空気がなくなることで、外圧に押されて鼓膜が内側にへこみ、聞こえにくくなるそうです。
この状態を放置すると、真珠のようなかたまりを形成する真珠腫性中耳炎になり、重篤な事態にもつながります。
取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史