抜け毛は自分とは関係ないと思い、特に気にせず生活していませんか? そんな方は要注意! 髪は抜け始める前からケアすることが重要なのです。特別なことは必要ありません。衣食住を中心とした生活習慣を根本から見直すだけで、数年後の未来の自分の髪に先行投資することができます。最新の科学的根拠をもとに知識を深め、薄毛にならないための生活を今から始めてみませんか。
抜け毛にまつわるさまざまな原因や治療法、ケアなどを薄毛治療の第一人者である岡嶋研二先生に伺います。
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白髪は老化が主な原因ですが、完全には解明されていません
髪の色はメラニン色素の量で決まります。メラニン色素の生成量が減ると、髪が白くなるというわけです。このメラニン色素が減ってしまう原因は大きく分けて3つあります。
(1) 加齢
年齢を重ねることで次第に細胞の新陳代謝が滞り、髪に栄養が行き渡らないことで白髪になりやすくなるといわれます。
(2)ストレス
マリーアントワネットが処刑される前、一夜にして白髪になったというエピソードが残っています。極端な話ですが、過度の精神的ストレスなどの影響を受けると白髪になりやすいといわれています。
(3)遺伝
基本的には薄毛ほど遺伝的要素はありません。しかし、若くして白髪になる場合は、ビタミンB12欠乏症などの病気が原因となっている可能性があります。逆に、50代以降に発現する白髪は、遺伝とは全く関係ないといわれています。
薄毛の原因ナンバーワンはホルモンバランスの変化!
薄毛は白髪よりも原因が解明されており、先に述べたように、女性の場合は女性ホルモンが減って男性ホルモンの働きが増えることで薄毛になりやすくなるといわれています。
(1) 男性ホルモンの活性化
男性ホルモンであるテストステロンが、毛根の5αリダクターゼにより変化したDHT(ジヒドロテストステロン)が、男性型脱毛症(AGA)を引き起こすことが分かっています。
(2) 頭皮のIGF-Iが低下する生活環境
運動をしない、偏った食事、睡眠不足などの生活習慣により、頭皮のIGF-Iが増えにくくなり、薄毛になることもあります。また、過度のシャンプーも、皮脂を過剰に取り除き、頭皮のIGF-Iを減らします。
(3) 遺伝
薄毛は白髪と異なり、遺伝的影響を大きく受けます。母方の薄毛遺伝子を引き継ぐため、母方の祖父の髪を見ると薄毛になりやすい体質かどうかが分かるともいわれます。
「白髪の人は薄毛にならない」は迷信です
一般的に白髪の多い人は薄毛になりにくいといわれることが多いですよね。
しかし、白髪と薄毛に相関関係はありません。白髪と薄毛を同時に併発するより、白髪が先に生えてくる場合が多いことから、白髪が多い人は薄毛になりにくいと思われているのかもしれません。
また、白髪と薄毛のメカニズムは違いますが、IGF-1を増やすとメラニン色素が増え、髪色が黒くなることが、マウスへの実験で分かっています。老化を抑える生活習慣は白髪にも薄毛にも有効ということですね。
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取材・文/荒井さやか
岡嶋研二(おかじま・けんじ)先生
1978年、熊本大学医学部卒業。1982年、熊本大学大学院医学研究科修了(医学博士取得)。日本学術振興会特定国派遣研究員としてウィーン大学医学部への留学、熊本大学医学部助教授、そして名古屋市立大学大学院医学研究科教授を経て、2012年4月、名古屋Kクリニックを開院。血液学を中心に研究を進め、育毛作用を有するインスリン様成長因子-1(IGF-1)を増やす新たな方法を見いだし、育毛効果を発揮する治療法の開発へと応用している。