尿漏れや便漏れなどの排泄トラブル。歳だから仕方ない......と後回しにしがちですが、健康で快適な暮らしを送るには避けては通れない問題です。そこで、ユニ・チャーム株式会社 排泄ケア研究所の梅林真紀さんに現代の排泄事情からケア方法までを伺いました。
前の記事「ムレやかゆみ、あせもを防ぐために。大人用おむつ使用者はお尻ケアにも気をつけたい(9)」はこちら。
ドラッグストアの大人用おむつコーナーにも陳列ルールがある
まずは、歩行器があれば自分でトイレに行ける母親を在宅介護していた人の体験談をご紹介します。
――夜中に何度も一人でトイレに行っているのが心配だったので、就寝中だけでも『紙パンツ』にしては?と提案したところ、デイサービスでの入浴時にお仲間が使っているのを見ていたようで『みんなもはいてるやつね。試してみようかしら』と、すんなりOKを出してくれました。ああ、よかった!と胸をなでおろしたのは、そこまで。
早速近くの大型ドラッグストアへ大人用おむつを買いに行って、あまりの数と種類の多さに愕然。どれを選んだらいいのか全く分からず、店員さんに相談したのですが、若いアルバイト男性だったからか要領を得ず......。とりあえず適当と思われるものを買って帰ったのですが、後日、ヘルパーさんがそれを見て『お母さまには小さいかも。はきづらくありませんか?』と。
実は母も自分ではくのに苦労していたようなのです。すぐに買い直しましたが、こんなことなら最初からヘルパーさんに相談して買いに行けばよかったと、後悔しきりです――
そう、今やドラッグストアで扱っている介護用品の数と種類には、目を見張るものがあります。何の知識もなく飛び込んでしまっては、この体験談のようになりかねません。でも、必要に迫られて......という場合はあるもの。では、どんなことを知っておけばいいのでしょうか。
「どのメーカーさんも同じだと思うのですが、店頭に大人用おむつを並べる際にお願いするのは、『お体と介護の状態のレベル順に並べる』ということと、『紙パンツ専用尿とりパッドは紙パンツの近くに、テープ止めタイプ専用パッドはテープ止めタイプの近くに』ということの2点です。
いいかえれば、大人用おむつの陳列法はこの2点が特徴。あまりの数と種類に驚かれるかもしれませんが、まずはどのタイプのものが必要か的を絞って見てください。
また、商品パッケージには「自分で・介助で歩ける方」「立てる方」「座れる方」「寝て過ごすことが多い方」などのアイコンがついていますが、売り場の棚に同じアイコンがついている場合もあるので、それらを目安にするといいですよ」と、梅林さん。
身体の状態を表すアイコン。左から「一人で外出できる」「一人で歩ける」「介助で歩ける」「介助で立てる」「主に寝て過ごす」
あとは、紙パンツタイプならウエストを、テープ止めタイプならヒップを基準にサイズを選べばOKです。いざというときに慌てないためにも、時間と気持ちに余裕があるときに、大人用おむつコーナーをじっくり見ておくのもいいかもしれません。
また、購入した際は、レシートを必ず受け取りましょう。大人用おむつやパッド類は医療費控除の対象になるため、ほかの医療費とあわせて年間10万円を超える場合は、税金の一部が還付されます。
次の記事「ある日突然トイレに行けなくなる? 排泄ケアのための相談窓口を知っておこう(11)」はこちら。
取材・文/岸田直子
梅林真紀(うめばやし・まき)さん
ユニ・チャーム株式会社 排泄ケア研究所 研究員。看護師。全国の施設・病院で排泄ケアの実態を調査しながら、紙パンツを使ったトイレ誘導・自立排泄支援の普及活動に携わる。元気なシニア向けの尿漏れ防止講座、紙パンツの使い方講座などの講師として全国を飛び回っている。