放置すると関節の破壊が進行し、全身に症状が広がる「関節リウマチ」。早期に発見し、適切な治療を受けることが大切です。「関節リウマチ」について、東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター所長の山中寿先生に聞きました。
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関節に負荷をかけない筋力をつける心掛けを
関節リウマチの治療では、現在、抗リウマチ薬のメトトレキサートを最初に処方するようになっています。関節の炎症に関わるビタミンの一種・葉酸(ようさん)という成分の働きを抑えることで、服用後の1~2カ月で関節の腫れや痛みが軽くなる人が多い薬です。炎症を抑えて関節を守ることができるため、早期の段階で治療を受けることで、関節や骨の破壊を防ぎ、日常生活を支障なく過ごすことが可能です。
「薬の服用と同時に、関節に負荷をかけすぎない、関節を固まらせない、関節を支える筋力をつけることで、日常生活を過ごしやすくできます。痛みによって関節を動かさないと、筋力が低下するなどして動かしにくくなるからです」と山中先生はアドバイスします。
関節リウマチで関節が動かしにくくなっていると、ペットボトルのフタを開けるのもたいへんです。でも、時間がかかっても自分で行うことが大切。関節を守りながら動かすことを心掛けることで、その機能を保つことにつながるそうです。痛みなどで無理なときには、家族や便利な道具に頼りましょう。
「ご家族の支援も重要です。関節リウマチは、薬の服用や関節を守る日常生活で、軽くはなりますが治る病気ではありません。継続した治療が必要であり、費用もかかりますので、病気についてご家族に理解していただくことが必要なのです」
滑膜(かつまく)を敵と見なした免疫は、薬を服用しても排除することはできません。薬を止めてしまうと、再び炎症が起こるのです。炎症で関節が変形すれば、手術が必要になったり、寝たきりにつながることも。適切な治療の継続が、関節リウマチでも健康寿命を延ばし、はつらつとした生活を維持できると考えましょう。
◎知っておきたい達人のツボ1
生物学的製剤とは?
生物学的製剤は、バイオテクノロジー技術で生み出された医薬品の総称です。関節リウマチでは症状の進行した人に対して処方されます。例えば、免疫細胞が活性化するために必要な物質をターゲットにして、その働きを妨げることで炎症を抑えます。従来の抗リウマチ薬とは効き方が異なり、強力な免疫抑制作用があるのが特徴といえます。
◎知っておきたい達人のツボ2
自己免疫で全身が侵されていく膠原病(こうげんびょう)とは?
膠原病は、全身の関節や筋肉に炎症を引き起こし、機能障害をもたらす病気の総称です。頬から鼻にかけて赤い湿疹が特徴的な全身性エリテマトーデス、皮膚や筋肉に炎症を引き起こす皮膚筋炎など、さまざまな病気があります。自身の免疫が組織を敵と見なして攻撃するため治療が難しく、難病指定されている病気がいくつも含まれます。関節リウマチも膠原病の一つですが、国内の患者数が60万人以上とされ、膠原病の中で最も発症頻度が高いといえます。
関節リウマチの治療に使われる薬
●抗リウマチ薬
【主な特徴】
現在の第一選択薬。免疫の異常に作用して、病気の進行を抑える。
【注意すべき点】
効果が出るまでに1カ月から半年くらいかかるために、消炎鎮痛薬を併用することも。効果が不十分な場合は複数の抗リウマチ薬の使用も。
●消炎鎮痛薬
【主な特徴】
関節の腫れや痛みを和らげる。即効性がある。症状が長期間続く場合は継続的に使用する場合が多い。
【注意すべき点】
炎症を根本から取り除くことはできない。副作用である胃潰瘍や十二指腸潰瘍に注意する必要がある。
●ステロイド
【主な特徴】
炎症を抑える作用が強く、関節の腫れや痛みを和らげる。
【注意すべき点】
有効な薬剤だが副作用もあるため必要最小限に使用する。早期に中止することがすすめられる。
●生物学的製剤
【主な特徴】
免疫の働きを抑える薬。炎症を引き起こす物質の働きを妨げ、関節破壊が進行するのを抑える。注射(点滴または皮下注射)で投与するが、その回数は1週間に2回から2ヵ月に1回までとさまざまで、通院回数やライフスタイルに合わせることができる。
【注意すべき点】
重い感染症にかかっている場合には投与できない。皮膚に異常が見られる場合には、投与を見送られることもある。副作用として肺炎や結核などの感染症が起こることも。投与の際にアレルギー反応が起こることがある。
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取材・文/安達純子
山中寿(やまなか・ひさし)先生
東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター所長。三重大学医学部卒。米国スクリプス・クリニック研究所研究員などを経て、2008年より現職。関節リウマチ患者を対象とした大規模調査などの研究成果で、2012年度に日本リウマチ学会学会賞を受賞。