病気やけがをしたとき、それに関する用語(病名・症状など)の意味をそもそも知らなかった、なんてことはありませんか? また、時代の流れとともに「ADHD」「ノロウィルス」など新しい用語もどんどん現れています。
書籍『やさしい家庭の医学 早わかり事典』で、病気や健康分野の正しい知識を身につけ、いざというときに役立てましょう。
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インスリンが不足することで起こる
「糖尿病」
●悪化すると昏睡状態になることも
「糖尿病」の説明をする前に、まずは血糖(けっとう)について説明しましょう。低血糖症の項でも述べましたが、体を動かすエネルギー源となるのはブドウ糖です。このブドウ糖は血液の流れに乗って体の細胞に運ばれ、筋肉や臓器で使われます。つまり、人間はブドウ糖によって動くことができているわけです。ところが、膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンというホルモンが足りなくなったり、うまく細胞に作用しないようになると、ブドウ糖が細胞の中に運ばれなくなり、血液中にあふれてしまうようになります。すると、尿の中にも糖が交じるようになります。これが、糖尿病の症状です。
一言でいえば、糖尿病とは、インスリンが不足したり、その作用が低下したりする病気といえるでしょう。
インスリンは体の中で唯一血糖を下げることができるホルモンで、食事のあとに血糖が上がらないように調整する役目を担っています。また、先述のように、ブドウ糖をコントロールする役目もありますので、インスリンが不足すると筋肉や内臓が動かなくなってしまうことになるのです。
糖尿病の種類には1型糖尿病と2型糖尿病があります。1型は、膵臓のβ(ベータ)細胞というインスリンをつくる細胞が破壊されることによって起こるもので、子どもや若年者に発症しやすいものといえます。子どものうちに発症するところから、以前は小児糖尿病ともいわれていました。
2型は、過剰な食事や運動不足など、生活習慣の乱れによって中年以降に引き起こされるもので、日本人の糖尿病の95%以上が2型といわれています。
そのほか、遺伝による場合や、感染症、免疫の異常などによって糖尿病になる場合もありますが、このときは薬剤による対処が必要になります。
治療法としては、1型の場合は1日に数回インスリンを注射して体内に取り込む必要があります。2型の場合は生活習慣を改善するところからはじまることも多く、うまく効果が得られない場合は薬を飲むことになります。
糖尿病で恐ろしいのは、合併症です。
インスリンが不足し、うまく栄養が体内に行き渡らないことによって血管や神経がもろくなり、糖尿病腎症や糖尿病網膜(もうまく)症、糖尿病神経障害などを引き起こすことになるのです。
また、糖尿病性昏睡(こんすい)といって、脱水や嘔吐(おうと)などの症状が出たのち、血圧が低下して昏睡状態に陥(おちい)ることもあります。
これは1型でも2型でも起こりうる症状ですので、とくに糖尿病を悪化させている患者さんは注意が必要でしょう。
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中原 英臣(なかはら・ひでおみ)
1945年、東京生まれ。医学博士。ニューヨーク科学アカデミー会員。東京慈恵会医科大学卒業。77 年から2 年間、アメリカ(セントルイス)のワシントン大学にてバイオ研究に取り組む。その後、山梨医科大学助教授、山野美容芸術短期大学教授を経て、現在、新渡戸文化短期大学学長、早稲田大学講師。おもな著書に『ウイルス感染から身を守る方法』(河出書房新社)、『こんな健康法はおやめなさい』(PHP 研究所)、『テレビじゃ言えない健康話のウソ』(文藝春秋)などがある。
『やさしい家庭の医学 早わかり事典』
(中原英臣[監修]/KADOKAWA)
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