のどは「発声」「呼吸」「飲み込み」の役割を担う重要な器官です。しかし、年齢とともに全身の筋肉が衰えるように、のどの筋肉も衰えていきます。飲み込み力がおちて誤嚥性肺炎になる恐れがあります。のどを鍛えるにはどうすればよいか、池袋大谷クリニック院長の大谷義夫先生に聞きました。
前の記事「気管に入った唾液や飲食物が原因! 誤嚥性肺炎はこうして起きる(2)」はこちら。
飲み込み力は年々低下。トレーニングが必要です
「のどトレ」はのどを鍛える3つのトレーニングです。まずは下の「ゴックンチェック」で、自分の「のどの状態」を確かめてみましょう。判定が出たら、トレーニングを開始します。「発声のどトレ」は、飲み込みに関係する器官とほぼ共通する発声器官を鍛え、飲み込み力アップを目指します。「呼吸筋のどトレ」は、咳をするときに使う呼吸筋を鍛えます。呼吸筋とは肋骨付近の筋肉のこと。鍛えることで咳を出やすくして誤嚥を防ぎます。「飲み込みのどトレ」は、のど仏を動かす筋肉の鍛錬です。3つの「のどトレ」で、飲み込み力をアップさせましょう。
「のどトレ」の前に知っておこう
自分の"のどの状態"ゴックンチェック
チェック法
口の中を水で湿らせ、水を飲み込みます。次に30秒間で唾液を何回飲み込めるか数えます。
のど仏は加齢で下がる
のどの位置は、前の記事のグラフのように加齢で下がります。
---判定---
■3回未満
飲み込み力が低下しています。今すぐ「のどトレ」を始めましょう。
■3~7回
飲み込み力が落ちないように注意。「のどトレ」を行いましょう。
■8回以上
飲み込み力は問題ありません。この状態を保つようにしましょう。
発声のどトレ
声を出す力と飲み込み力は比例します。「発声のどトレ」で飲み込み力も上げましょう。
●声に高い、低いなどの差をつける
あ・え・い・う・え・おの発声
1. 発声は図のように、「あ(高音)「え(高音)」「い(高音)「う(低音)」「え(高音)」「お(低音)」「あ(高音)」「お(低音)」と音に高低差をつけます。
2. 同じように続けて、「か・け・き・く・け・こ・か・こ」「さ・せ・し・す・せ・そ・さ・そ」と、「ら行」まで高低差をつけながら発声します。
*1日に行う回数:1~2回
<ポイント>
音の高低差に意識を向けて、高い声を出すときはのど仏をしっかり上げて、低い声を出すときは下げるようにします。
●早口言葉
舌を噛みそうになる早口言葉は、できるだけ滑舌をよくして、なるべく早く発音できるように、練習を繰り返し行います。
早口言葉の例
・ジャズ歌手・シャンソン歌手・フォーク歌手
・青巻紙・赤巻紙・黄巻紙
・生麦・生米・生卵
・東京特許許可局
*1日行う回数:1~2回
<ポイント>
早口言葉は舌と唇を鍛えるのに最適なトレーニング。できるだけ言葉を明確に、かつ早く発音するようにします。
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取材・文/松澤ゆかり・山川寿美恵
大谷義夫(おおたに・よしお)先生
池袋大谷クリニック院長。群馬大学医学部卒業。九段坂病院内科医長、東京医科歯科大学呼吸器内科医局長などを経て2009年より現職。著書は『65歳からの誤嚥性肺炎のケアと予防9割の人は持病では死なない!』(法研)など。