40代半ばを過ぎて妙にイライラすると感じたら、更年期が始まっているかもしれません。更年期は、思春期と並ぶホルモンの大変動期で、疲労や肩こり、のぼせなど、これまで感じなかったさまざまな不調が起こりやすくなります。ひどくなると、更年期障害と呼ばれ、日常生活に支障をきたすこともあります。
この大変動期をできるだけ心地よく過ごすにはどうしたらよいのか、飯田橋レディースクリニック院長の岡野浩哉先生にお伺いしました。今回はその14回目です。
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漢方は、更年期の不調の強い味方です
更年期の2大治療のもう一つが、漢方による治療です。
「更年期に起こる不調は、のぼせやめまい、動悸など、人によってさまざまです。いくつもの症状が重なったり、日によって不調の具合が変わったりすることも珍しくありません。また、わけもなく落ち込んだり、イライラしたりといったなんとなくの不調も更年期によく見られる症状です。そういったなんとなくの不調や、比較的症状が軽い人の場合、漢方による治療で症状が和らぐことがあります」とは、飯田橋レディースクリニック院長の岡野浩哉先生。
漢方では、心と体は一体と考えられており、全身の調和を整えるための治療を行います。そもそも漢方では、心身の不調を「気(き)・血(けつ)・水(すい)」のバランスから探っていきます。なかでも、女性ホルモンが減少する更年期に現れる不調は、「気」や「血」が足りなくなったり、巡りが悪くなったりすることで起こりやすくなると考えられています。
漢方薬は生薬を組み合わせて作られるものなので、一つの薬に複数の有効成分が含まれています。そのため、一剤で複数の症状を同時に改善させることができるのが特徴です。たとえば、更年期の治療によく用いられる漢方薬の一つである加味逍遙散(かみしょうようさん)は、のぼせや肩こり、疲れやすさ、イライラ、不安、不眠など複数の症状に対して効果を発揮し、更年期の不調に悩む女性の強い味方です。
漢方では、症状だけでなく、1人1人の体質に合った薬を選ぶことが大切です。そのため、同じ症状でも人によって用いられる漢方薬が異なることもあります。また、漢方薬は長く飲まないと効果が出ないと思われがちですが、飲んですぐに効果が出る場合もあります。
もちろん、ホルモン補充療法との併用も可能です。更年期は、心と体の不調が次から次へと出てきやすい時期です。漢方は不調の原因が分からなくても治療ができ、副作用が比較的少ないので、上手に利用しましょう。
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取材・文/笑(寶田真由美)
岡野 浩哉(おかの・ひろや)先生
飯田橋レディースクリニック院長。群馬大学医学部卒業後、同医学部附属病院産婦人科、 東京女子医科大学産婦人科などで臨床経験を経て、平成20年に飯田橋レディースクリニック設立。 「患者にやさしい医療」をモットーに、新聞・雑誌等メディアへ執筆多数。