低コレステロールの食事は意味がない/鎌田實「だまされない」

低コレステロールの食事は意味がない/鎌田實「だまされない」 pixta_15721418_S.jpgテレビやネットにあふれるあやしげな健康情報や社会の思い込み。あなたはいつのまにか信じてしまっていませんか?

だまされないでください。
医師にして作家である鎌田實が50年近く医療に携わることで気づいた、健康のための王道をまとめた書籍『だまされない』で、「健康で幸せに生きるという目標」を達成するための技術を身に付けましょう。

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コレステロールを恐れるな

日本では長い間、コレステロールに対する誤解がありました。従来のコレステロールの1日の摂取基準は、男性は750ミリグラム未満、女性は600ミリグラム未満。卵1個が含むコレステロール値が約235ミリグラムなので、コレステロール値が少し高い人は、卵は1日1個までと指導されることが多かったのです。しかし、卵や肉などのコレステロールを含んだ食品は、決して健康の敵ではありません。

 

栄養不足が日本人の脳卒中を増やす

日本人の多く、特に中高年の人は、タンパク質が不足している傾向があります。

僕は、脳卒中が多く短命だった長野県を健康県に変えようと決意したとき、できるだけ、卵やチーズ、肉を食べるようにと指導してきました。タンパク質が不足すると血管の壁がもろくなります。栄養状態が悪かったかつての日本では、そのために脳出血が多かった。同じように脳の細い血管が詰まる〈ラクナ梗塞〉も、栄養状態が悪いときに起こりやすくなります。だから勘違いしてはいけないのです。粗食がいいなんて思わないでください。

欧米の脳梗塞は〈アテローム血栓性梗塞〉という、太い血管に粥(かゆ)状の動脈硬化ができるパターンが多く、これは高脂血症が原因で起こるものです。だから欧米人は肉や油ものに注意する必要があります。もちろん、欧米人並みに300グラムのステーキを食べる日本人もいるなど、食の欧米化が進んでいますが、毎日300グラムの肉を食べる日本人は少ないはずです。そもそも欧米人の健康づくりと、食習慣や食生活が違う日本人の健康づくりは違います。日本人に多い脳出血や細い血管が詰まる脳梗塞を減らそうと思えば、卵や肉を制限することはあまり意味がないのです。

 

低コレステロールの食事は意味がなかった

ご存じでしょうか、実は厚生労働省は2015年、コレステロールの摂取基準を撤廃しているのです。日本動脈硬化学会も、食事内容に注意したところで、体内のコレステロール値は大きく変わらないと発表しています。

つまり、卵は1日1個までという食事制限をする必要はないということです。卵1個ルールに意味などないのです。それよりも重要なのはタンパク質の摂取です。卵は料理の種類が豊富でタンパク質が多く、安くておいしい。なおかつ、ニワトリの命の源なので、完全栄養食品です。そういう意味ではスーパーフードと言っていいでしょう。

僕は運動後にタンパク質を摂取する目的で、味付け玉子をつくりおきしています。ゆで卵を冷やしたあと皮をむき、黒豆茶にめんつゆを加えた漬けダレに1日ほど漬けておけば完成です。かつて、ウーロン茶で漬け込んだ味付け玉子を台湾で食べたことがあります。あまりにもおいしかったので自分でもつくろうと試してみたのですが、なかなかウーロン茶では黒光りするような色が出ません。そこで黒豆茶を使うことにしたのです。鎌田流味付け玉子です。

 

卵は1日3個でも大丈夫

僕は、卵を1日3個食べることを目標にしていますが、コレステロールも中性脂肪も正常です。体重もピークから7キロやせています。皮下脂肪が減り、タンパク質が筋肉に変わり始めています。体脂肪を測れる体重計で測定すると、筋肉の量が多くなってきました。卵を食べているおかげだと思っています。

もともと日本脂質栄養学会は、コレステロールの数値が高い人は、むしろ長生きであると主張してきました。僕もこれに賛成しています。2006年に上梓した『ちょい太でだいじょうぶ』(集英社)には、「〈ちょいコレ〉で大丈夫」と書いていますが、ちょっとコレステロールが高いくらいは心配ないということです。野菜さえしっかり食べていれば、肉や卵を食べても大丈夫なのです。

日本はコレステロールを下げる薬を、先進国のなかでも異常にたくさん使っていると言われています。もちろんコレステロール値が極端に高い場合は、僕も薬を処方しますが、総コレステロール値も悪玉コレステロール値も、基準値より20㎎/dlくらい超えている程度なら、運動と野菜の摂取で肥満を改善する生活指導を中心に行うように心がけています。

 

※『毎日が発見』本誌に連載した記事はこちら

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低コレステロールの食事は意味がない/鎌田實「だまされない」 鎌田 實(かまた・みのる)さん
鎌田 實(かまた・みのる)

1948年東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県茅野市の諏訪中央病院医師として、患者の心のケアまで含めた地域一体型の医療に携わり、長野県を健康長寿県に導いた。1988年に同病院院長に、2005年から名誉院長に就任。また1991年からチェルノブイリ事故被災者の救援活動を開始し、2004年からはイラクへの医療支援も開始。4つの小児病院へ毎月400万円分の薬を送り続けている。著書に『がんばらない』『あきらめない』『なげださない』ほか多数。

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『だまされない』
(鎌田 實/KADOKAWA)

社会は人をだます。人も自分をだます。実は自分の身体すらも自分をだましにかかってくる。そんな環境に生きながらも、幸せに生きるためにはなにを知るべきか、どうすべきか、どう考えるべきか。医師にして作家である鎌田實が、その答えに迫ります。健康問題から社会問題まで、翻弄される人々の目覚めを促す言葉の劇薬!

 

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この記事は書籍『だまされない』からの抜粋です

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