テレビやネットにあふれるあやしげな健康情報や社会の思い込み。あなたはいつのまにか信じてしまっていませんか?
だまされないでください。
医師にして作家である鎌田實が50年近く医療に携わることで気づいた、健康のための王道をまとめた書籍『だまされない』で、「健康で幸せに生きるという目標」を達成するための技術を身に付けましょう。
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コレステロール値は低いほうがあぶない
アメリカの医学界ではチュージング・ワイズリーというキャンペーンが行われています。「賢い選択」運動です。約50の医学会が後押しして、無駄な医療や検査を公表する試みです。そのなかの代表的なものにコレステロールがあります。「70歳を超える高齢者のコレステロール値は下げてはいけない。コレステロール値が低いほうが、死亡率が高い」とのことです。
少しくらいコレステロール値が高くても、ビクビクしなくていいということです。ただし、遺伝性の高脂血症の人の場合には、主治医とよく相談をしてください。薬が必要な場合が多い。薬の嫌いな僕でも、多くの場合で薬を使います。
オレイン酸が知能を高める
紅花油、ごま油などに多く含まれるオメガ6脂肪酸は、血液をべとべとにして血管を詰まりやすくする原因にもなります。しかし身体にいい油は、脳のひらめきや血管の老化を防ぐためには欠かせません。
では、どのような油がいいのでしょうか。米国イリノイ大学の研究によると、オリーブオイルや、ナッツ類、アボカドに多く含まれるオメガ9脂肪酸のオレイン酸が、認識機能や、脳の背側経路に働きかけて知能を高めていることが明らかになりました。
そのほか、青魚に含まれている多価不飽和脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)はオメガ3脂肪酸という種類の油で、こちらも脳を活性化します。つまり、できるだけ魚を食べることが大事で、サラダにかけて食べるのは、オメガ3脂肪酸を含むえごま油や亜麻仁(あまに)油などがおすすめと言えるでしょう。
ただし、えごま油は熱に弱いので、加熱する際にはほかの油を使い、食べる前にえごま油をかけると効果的です。オメガ9脂肪酸を含むオリーブオイルは、新鮮なバージンオイルならオメガ3脂肪酸に近い効果を示してくれます。コレステロールの数値におびえすぎないで、健康にいい油を適度に摂取するとともに、タンパク質不足にならないように気をつけましょう。
「魚でうつ病が減る」というウソみたいな本当の話
国立がん研究センターが、魚を1日平均110グラム食べる人たちは、50グラムしか食べない人たちよりもうつ病のリスクが56%低かったと、世界的にも権威のある英国の科学雑誌「ネイチャー」に発表しました。長野県に住む1181人を25年間追跡調査した結果、判明したことです。
110グラムとはどれくらいの量でしょう。イワシが1匹80グラムくらいですから、1匹と少し食べればいい計算です。サバも切り身はだいたい80グラムです。うつ病のリスクを減少させる要因は、青魚に含まれるオメガ3脂肪酸の一種、〈エイコサペンタエン酸〉の影響と思われています。
「油はダメ」という言葉に惑わされてはいけません。たしかに紅花油やごま油に含まれるオメガ6脂肪酸は慢性炎症を起こしやすく、脳の働きを悪くし、動脈硬化を起こすので、少し控えなければなりません。ただ、オメガ3脂肪酸のように、しっかりとってもいい油もあるのです。
※『毎日が発見』本誌に連載した記事はこちら。
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1948年東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県茅野市の諏訪中央病院医師として、患者の心のケアまで含めた地域一体型の医療に携わり、長野県を健康長寿県に導いた。1988年に同病院院長に、2005年から名誉院長に就任。また1991年からチェルノブイリ事故被災者の救援活動を開始し、2004年からはイラクへの医療支援も開始。4つの小児病院へ毎月400万円分の薬を送り続けている。著書に『がんばらない』『あきらめない』『なげださない』ほか多数。
(鎌田 實/KADOKAWA)
社会は人をだます。人も自分をだます。実は自分の身体すらも自分をだましにかかってくる。そんな環境に生きながらも、幸せに生きるためにはなにを知るべきか、どうすべきか、どう考えるべきか。医師にして作家である鎌田實が、その答えに迫ります。健康問題から社会問題まで、翻弄される人々の目覚めを促す言葉の劇薬!