乳房を切除したアンジェリーナ・ジョリーの選択/鎌田實「だまされない」

pixta_33880747_S.jpgテレビやネットにあふれるあやしげな健康情報や社会の思い込み。あなたはいつのまにか信じてしまっていませんか?

だまされないでください。
医師にして作家である鎌田實が50年近く医療に携わることで気づいた、健康のための王道をまとめた書籍『だまされない』で、「健康で幸せに生きるという目標」を達成するための技術を身に付けましょう。

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前の記事「「太るのは遺伝だから仕方がない」とあきらめるのか?/鎌田實「だまされない」(3)」はこちら。

 

自己決定する生き方

母親を乳がんで亡くしたハリウッド女優アンジェリーナ・ジョリーは、遺伝子検査を受けた結果、〈BブルカRCA1〉という遺伝子に変異が見つかりました。さまざまなデータがあるため一概には言えませんが、BRCA1に変異がある人の55%、BRCA2に変異がある人の45%が乳がんになると言われています。そのため、彼女は乳がんを発症する前に、乳房を切除する手術を受けました。

この遺伝子変異があると卵巣がんも増えるため、彼女は卵巣も予防的に切除しています。日本ではBRCA変異が陽性となれば、検診の間隔を短くして、丁寧な検診をし、早期発見を心がけることが多いようです。遺伝子検査で異常が見つかった場合、自分はどうすればいいのか、選択にすごく迷うでしょう。

ここで大切になるのが、ヘルスリテラシーを身につけておくことと、きちんとした人生観を持っていることです。医師からの説明を受けて、現実を受け止めながら、一番よい選択をする、それがヘルスリテラシーです。健康に対する「理解力」と思ってください。誤った選択をしないために、この「理解力」を向上させることも、この本の目的です。

アンジェリーナ・ジョリーのように、予防的手術を受けるのか。検診を欠かさず早期発見を心がけるのか。あるいは別の方法をとるのか。絶対的な正解はありません。身につけたヘルスリテラシーと、人生観で判断するしかありません。遺伝子検査を行っているところは、検査後の相談窓口が充実していることが大切です。これはとても大事なことです。遺伝子検査を受けたあと、結果によっては途方に暮れる人たちの命がけの選択をサポートする医療者が必要です。

 

パートナーに左右される健康

遺伝子レベルで病気予防の研究をしている、信州大学医学部教授(当時)の谷口俊一郎先生に直接話を聞いたことがあります。

「まったく同じ遺伝子を持つ一卵性双生児でも、住む場所や仕事、結婚相手が違えば、2人の体質や病歴、健康状態も変わってきます。つまり健康状態は遺伝子だけでなく、環境やその人の生き方の影響を受けているのです」。

特に一卵性の双生児の研究では、男性の場合、妻の影響が大きいと言います。つまり不健康な食事を出す妻と同じ食事を長年続ければ病気になりやすい。反対に、健康的な食事を好む妻に従って一緒に食事をすれば、肥満や糖尿病になりにくく、健康でいられるのだとか。妻選びは男にとって、その後の寿命や命までかかっているということか!

 

※『毎日が発見』本誌に連載した記事はこちら

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鎌田 實(かまた・みのる)さん
鎌田 實(かまた・みのる)

1948年東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県茅野市の諏訪中央病院医師として、患者の心のケアまで含めた地域一体型の医療に携わり、長野県を健康長寿県に導いた。1988年に同病院院長に、2005年から名誉院長に就任。また1991年からチェルノブイリ事故被災者の救援活動を開始し、2004年からはイラクへの医療支援も開始。4つの小児病院へ毎月400万円分の薬を送り続けている。著書に『がんばらない』『あきらめない』『なげださない』ほか多数。

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『だまされない』
(鎌田 實/KADOKAWA)

社会は人をだます。人も自分をだます。実は自分の身体すらも自分をだましにかかってくる。そんな環境に生きながらも、幸せに生きるためにはなにを知るべきか、どうすべきか、どう考えるべきか。医師にして作家である鎌田實が、その答えに迫ります。健康問題から社会問題まで、翻弄される人々の目覚めを促す言葉の劇薬!

この記事は書籍『だまされない』からの抜粋です

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