日本人の約4300万人が高血圧といわれています。高血圧は、脳卒中や心筋梗塞、腎不全などのリスクを高めるため、血圧のコントロールは重要な課題になっています。 では、血圧はどの程度、下げたらいいのでしょうか。
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薬は一生飲み続けないといけない?
「降圧剤は一生飲み続けないといけないからイヤ」という人がいます。たしかに、多くの人が血圧をコントロールするために一生飲み続けています。
しかし、生活習慣の改善によって血圧が安定的に下がってくれば、薬を減らしたり、止めたりすることも夢ではありません。ぼくの患者さんで、血圧160/100㎜Hgだったのが、生活習慣の改善と服薬によって、1年で血圧120/76㎜Hgになった人がいます。この患者さんは薬を止めることができました。
ただし、自己判断で薬を止めるのは禁物。薬を止めた時ほど、血圧測定をする必要があります。血圧が安定して下がっていることが確認できれば、薬を止めていいのです。
女性は高血圧になりにくいか
高血圧は男性に多い病気ですが、女性も閉経期後は要注意です。若いころからずっと基準値内だった人も、閉経期にさしかかったら、血圧を測る習慣をもったほうがいいでしょう。
しかも、この時期発症する高血圧は、薬を複数使っても効きにくい「治療抵抗性高血圧」が多いと考えておく必要があります。治療抵抗性高血圧で注意すべき疾患が他にもあります。睡眠時無呼吸症候群です。家族に睡眠時の呼吸の状態をみてもらい、1時間に5回以上無呼吸の状態があれば、睡眠中の呼吸状態を検査する必要があります。
検査法も治療法も進歩しました。睡眠時無呼吸症候群の治療をきちんとすると、血圧が驚くほど安定してくることがあります。
認知症のリスクを高める血圧の乱高下に注意
診察室では基準値の血圧でも、早朝に血圧が高くなる人や夜間に高くなる人がいます。1日に何回か血圧測定をして、自分のタイプを知っておくことが大切です。
早朝高血圧の人は、夜寝る前に薬を飲んで、朝、薬が効いているようにするなど、薬の種類や飲む時間を考える必要があります。血圧が急上昇する血圧サージだけでなく、日によって上がったり下がったりする変化も、認知症リスクが高いといわれ、注意が必要です。
こうしたタイプも、血圧の高い日だけに服薬しますが、薬でのコントロールは難しく、むしろ食事や運動などの生活習慣を改善するほうが安全で効果的である場合が多いです。
どんな高血圧の人でも、生活習慣の改善を基本とするのが鎌田流の血圧治療です。
鎌田 實(かまた・みのる)さん
1948年生まれ。医師、作家、東京医科歯科大学臨床教授。チェルノブイリ、イラクへの医療支援、東日本大震災被災地支援などに取り組んでいる。近著に『遊行(ゆぎょう)を生きる』(清流出版)、『人間の値打ち』(集英社新書)、『カマタノコトバ』(悟空出版)、『「わがまま」のつながり方』(中央法規)。