生きていく上で欠かせない三大栄養素はたんぱく質、炭水化物、そして脂質です。健康維持に役立てるには「量」と「質」を考えることが大切です。
脂質は、脂肪酸という酸で構成されていて、構造の違いによって分類することができます。その中には体内で合成できない、または合成量が少ないため、必要量を満たすには食物から摂取しなければなりません。
脳の認知機能、知力の維持(物忘れ防止)、血液サラサラ効果のある代表的植物油であるオリーブ油、えごま油、ごま油、亜麻仁油について、料理研究家で管理栄養士の村上祥子先生に教えてもらいました。
知らなかった! オイルの話
その1 油と脂の違いって?
「油」は常温で液体のものを指し、植物の種実を搾って作る植物油などがあります。「脂」は常温で固体のものを指し、肉の脂身やバター、ラードなど動物性のもののほかに、ココナツオイルなど植物由来のものもあります。
マーガリンやショートニングは液状の植物油(パーム油)に水素を添加する製造過程で生成されるトランス脂肪酸が心筋梗塞の引き金になるとして、アメリカでは外食産業や販売用の調理加工食品などへの使用が規制されています。
その2 脂質は大切なエネルギー源です
脂質は私たちの生命活動に必要なエネルギーの源になります。他にも細胞膜を維持するためや脳内の伝達機能に関わるなど、生きていく上で不可欠な栄養素です。
その3 摂り過ぎないで適量を
どの植物油も1gで約9kcalと炭水化物やたんぱく質の倍以上のカロリーがあり、必要ですが、高カロリーでもあります。摂取量が必要量より多い人は、心筋梗塞や肥満の発症率が高いことも分かっています。適切な量を摂ることがよいのは言うまでもありません。また、自分の体調改善に効果のある種類を選んで摂るようにします。
その4 オイルは冷蔵か冷暗所保存が原則
どんなオイルも太陽光や室内灯に当たると劣化・酸化し、品質の低下を招くので、冷暗所か冷蔵で保存します。ただし、オリーブ油は冷蔵保存すると固体になるので、使用する少し前に冷蔵庫から出しておいて液状に戻してから使います。
その5 加熱して摂ると体内の吸収率がアップ
n-3系の脂肪酸であるα-リノレン酸を含むえごま油、亜麻仁油、またn-6系の脂肪酸であるリノール酸を含むごま油など、成人1日当たりの摂取目安量は小さじ2分の1程度です。そのままでもいいのですが、食材は体温に近い温度の方が消化吸収率がアップします。必要量は少量なので炒める、焼くなどして少し加熱して効率よく吸収させましょう。また、加熱するとおいしくなります。
【脂肪酸の構造による分類】
■飽和脂肪酸
肉や乳製品に多く含まれ、効率のよいエネルギー源。体内で合成されるので不足することはまずありません。摂り過ぎは心筋梗塞や肥満の発症率を高めることが分かっています。
・ココナッツオイル、パームオイル...ラウリン酸
・ラード、バター...パルミチン酸
■一価不飽和脂肪酸
主にオレイン酸。体内で合成できる脂質のため、摂取の目安料や文句兵糧は設定されていません。酸化しにくく、動脈硬化の予防効果が期待されているほか、料理にも使いやすい油です。
・オリーブ油、サフラワー油、ひまわり油、ごま油...オレイン酸
■n-6系(ω〈オメガ〉-6脂肪酸)
不飽和脂肪酸のうちの多価(たか)不飽和脂肪酸の1種。リノール酸、γ(ガンマ)-リノレン酸、アラキドン酸の3種がよく知られています。血液中のコレステロールを減少させる作用がありますが、摂り過ぎると善玉コレステロールも減少します。通常不足することはまずありません。
・ごま油、大豆油...リノール酸
■n-3系(ω〈オメガ〉- 3脂肪酸)
不飽和脂肪酸のうちの多価(たか)不飽和脂肪酸の1種。α(アルファ)-リノレン酸、イコサペンタエン酸(IPAまたはEPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ドコサペンタエン酸(DPA)がよく知られています。血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪を減らし、善玉コレステロール値を上昇させます。
・魚油...EPA・DHA
・えごま油、亜麻仁油...α-リノレン酸
取材・文/石井美佐 撮影/中野正景
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村上祥子(むらかみ・さちこ)さん
料理研究家・管理栄養士。1942年、福岡生まれ。公立大学法人福岡女子大学国際文理学部・食・健康学科客員教授。食材の持つ力で健康寿命の延伸を図る研究に関与する。同大学内の「村上祥子料理研究資料文庫」では50万点の資料が一般公開されている。
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