足の血管が浮き出る、ボコボコしている、むくみがひどい...。それらの症状は「下肢静脈瘤」が原因かもしれません。放置しておくと重症化する場合もある「下肢静脈瘤」ですが、軽症のうちはセルフケアで何とかなります! そこで今回は"血管の名医"である広川雅之先生の著書『血管の名医が教える 下肢静脈瘤の治し方』をご紹介。自分の症状はセルフケアで治るの? 放っておくとどうなるの? 別の病気の可能性は? 「下肢静脈瘤」に関する疑問を名医が徹底解説します。
※本記事は広川雅之著の書籍『血管の名医が教える 下肢静脈瘤の治し方』から一部抜粋・編集しました。
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血管内治療には、血管を「焼く」または「くっつける」治療法がある
血管内治療は、静脈の中にカテーテルという細い管を入れて、血管の内側から治療を行う方法です。
治療の目的は、静脈をふさいで、壊れた弁による血液の逆流を止めることです。
静脈を焼いてふさぐ「血管内焼灼術」と、焼かないでふさぐ「NTNT治療(グルー治療)」があります。
血管内焼灼術は、血管を内側から焼いてふさぐ方法で、レーザーで焼く「レーザー治療」と、カテーテルに電流を流して焼く「高周波(ラジオ)治療」の2種類があります。
レーザー治療と高周波治療の治療効果は同じですので、どちらでも受診した医療機関で採用している方法でかまいません。
手術ではなく、細いカテーテルを入れる小さな穴を開けるだけなので、傷跡がほどんど残りません。
下肢静脈瘤の根本治療でありながら、痛みや皮下出血などの合併症が非常に少なく、患者さんの体への負担が少ないので、現在、標準的な治療法になっています。
入院の必要がなく、日帰りできる点も患者さんにとってメリットです。
治療後すぐに歩くことができますし、事務仕事や家事労働であれば翌日には通常の生活に戻ることもできます。
シャワーも可能です。
ただ、妊娠中の人や局所麻酔のアレルギーがある人、過去にエコノミークラス症候群を発症したことがある人などには適さないので注意が必要です。
もうひとつのNTNT治療とは、熱を使わずに血管をふさぐ治療法です。
従来の下肢静脈瘤の治療を根本から変える、画期的な治療法と期待され、欧米では普及が進んでいます。
グルー治療とは英語で糊(接着剤)を意味するglueから来ていて、NTNT治療のひとつです。
2019年12月に日本で健康保険が適用されました。
グルー治療で使用される接着剤は、シアノアクリレート系接着剤で、市販の瞬間接着剤とほぼ同じ成分です。
シアノアクリレート系接着剤の医療への応用は、ベトナム戦争の頃から50年以上の歴史があり、発がん性などの安全性は確立しています。
現在では、動脈の病気や皮膚の接着などに広く使われています。
血管内焼灼術に比べてグルー治療の優れている点は、局所麻酔が1カ所でよく、治療後の弾性ストッキングをはく必要がなく、治療後の生活の制限がほとんどないことです。
また、血管内焼灼術では、熱によって静脈周囲の神経が障害されて皮膚の感覚が鈍る場合がありましたが、熱を使わないグルー治療ではその心配がありません。
そのため、これまでは血管内焼灼術では治療がむずかしかったひざ下の大伏在静脈や、足首近くの小伏在静脈の治療が安全にできるようになりました。
また、グルー治療であれば治療当日からシャワーも可能です。
体を動かす仕事にもその日のうちに戻れるため、多忙な人に向いている治療法です。
下肢静脈瘤は、仕事や家事を長期間休めない忙しい人ほど症状が強く、重症化しやすいので、短期間に治療が終わるのは多くの人にとってメリットがあるといえるでしょう。
血管内治療のスケジュール
初診
下肢静脈瘤の程度やタイプを診断。治療希望者には日帰りか入院かを相談する
術前検査
血液検査と心電図検査を行う。治療予定日1カ月前が目安。
治療当日
体温測定、問診、静脈の確認、点滴後、治療へ。治療後は処置を施し、会計と翌日診察の予約をして帰宅。
治療翌日診察(グルー治療は1週間後)
傷の消毒、およびエコー検査で静脈の状態を確認。
1カ月後診察
エコー検査で、静脈や静脈瘤の状態を確認