実は、真冬よりも朝晩が冷えて日中は暖かいような冬の初めや、春先に患者が増えるのが「しもやけ」。悪化すると水疱やただれ、潰瘍ができることもあります。今回は、野村皮膚科医院 院長の野村有子(のむら・ゆうこ)先生に「しもやけの原因とセルフケア」について教えてもらいました。
主な原因
加齢に伴う末梢の循環障害
冬の寒冷な環境および気温差
末梢の血流を調整しにくい遺伝的な体質
主な予防・改善法
手足を冷やさないようにする
血行を良くする
しもやけはどこに起こる?
寒さにさらされやすい体の末端部分にできやすい
●手指
●鼻先
●耳の先
●足指
しもやけの種類
【多形紅斑型しもやけ】赤い湿疹や水疱が現れる
【樽柿型しもやけ】指の真ん中あたりが赤紫色に腫れる
しもやけは正式名称を凍瘡といい、皮膚に赤みや腫れ、むずがゆさや痛みなどの症状が出ます。
悪化すると、水疱やびらん(ただれる)、潰瘍ができることもあります。
症状は上図のように、血流が乏しくなりやすい体の末端に現れます。
子どもから高齢者まで幅広い年齢層で起こる身近な病気ですが、重症化すると生活に支障を来します。
しもやけの大敵は冷えと温度差です。
最低気温が5度以下で一日の気温差が10度以上あると発症しやすくなります。
真冬よりむしろ朝晩が冷えて日中は暖かいような、冬の初めや春先に患者が増えます。
他の原因に遺伝的要因(末梢循環が悪くなりやすい)や環境要因(温度差が激しい生活習慣)などもあります。
特にこの時期は寒い日に洗濯物を干した後、お湯で食器を洗うなど、日常生活の中で急激な温度差にさらされます。
またコロナ禍での手洗いやアルコール消毒の習慣は冷えの原因になります。
手をしっかり拭かないと気化熱の原理でさらに皮膚の温度を低下させるので、要注意です。
アルコール消毒は石鹸での手洗いができないときだけで十分です。
あなたもしもやけ予備軍かも??
□冷え性体質である
□家族にしもやけになりやすい人がいる
□寒い日やクーラーで手足が冷えてしまう
□夜、布団で温まると手足がむずがゆいことがある
□秋から冬にかけて指輪がきつくなる日がある
□手足に汗をかいて湿りやすい
□手足が冷たくて寝つけない夜がある
□冬に手足の指が暗紅色になるときがある
□冬の入浴後に手足の指が赤くかゆくなることがある
□季節の変わり目の温度差で不調を感じやすい
※チェックして一つでも当てはまればしもやけ予備軍。早めにしもやけ予防対策をしましょう(下記参照)
セルフケアでしもやけを予防・改善
●ビタミンE配合の保湿クリームで手足などをマッサージする(下記参照)
●手や足・首などを冷やさない
●湯船に入り血行を良くする
●水分が残らないように吸水性のすぐれたタオルで拭く
●血行改善につながる食材を摂る(ビタミンEを含むかぼちゃやほうれん草、血行を促進するしょうがなど)
●急激な温度変化を避ける(部屋の温度を一定にするなど)
●蒸れにくい工夫をする(汗や雨で濡れたら、靴下をこまめにはき替える)
●水仕事をする際は手袋(綿の手袋の上にゴムの手袋)を着用する
●アルコール消毒は石鹸で手が洗えないときに応急的に使用する
ハンドケア方法
(1)クリームを手の甲にのせる
(2)両手の甲で広げる
(3)手のひらでなじませる
(4)指の先に向かって1本ずつほぐしながら塗りのばす
(5)爪の周りをマッサージ
(6)指の間も忘れずに
(7)親指と人さし指の間を押す
フットケア方法
(1)足裏、かかと、指の付け根、側面にクリームを塗る
(2)かかとを包み込むように手のひらで温める
(3)足の裏を両手の親指でほぐすようにマッサージ
(4)足指の付け根から指先に向かって1本ずつほぐす
(5)爪の周りをマッサージ
(6)ゆったりとした靴下をはく
しもやけを予防・改善するためには、手足を冷やさないことと血行を良くすることが大切です。
上で紹介した方法を試してみてください。
また、日常生活の中で温度差をなるべく少なくする対策も必要です。
台所にマットを敷く、スリッパを履く、脱衣所を温める、水仕事のときには綿の手袋とゴムの手袋を重ねて使うなど、できることから始めてみてください。
セルフケアを行っても症状が改善しない、急激に悪化するなどの場合は、リウマチなどの膠原病や、糖尿病、動脈硬化など、別の病気が隠れているケースもあるので、速やかに医療機関を受診しましょう。
血液検査など精密検査が必要なこともあります。
取材・文/古谷玲子 イラスト/片岡圭子 参考資料/ユースキン製薬