若いころは一晩寝れば一日中元気で頑張れたのに、年齢とともに「朝起きてもすっきりしない」「日中眠たくなる」「夕方になると集中力が落ちてストレスを感じる」など、睡眠の質が落ちたと感じている人が少なくありません。こんなお悩みを抱えている人たちに注目してほしいのがGABA(ギャバ)成分。どこかで聞いたことはあるけれど、実際にどんなものなのかわかっていない人も多いはず。そこで話題のGABA成分について、その効果と取り入れ方を紹介します。
睡眠の質の低下や夕方の集中力ダウンは年齢による体の変化のひとつ
多くの人が年齢とともに睡眠の質が落ちてきたと感じています。それは気のせいではなく、加齢による体の変化のひとつ。厚生労働省の睡眠脳波を調べた調査でも、年齢とともに深いノンレム睡眠が減り、浅いノンレム睡眠が増えるようになることがわかっています。そのため、夜中に何度も目が覚めるなどして睡眠の質が下がり、40代後半を過ぎると日中眠気がとれないという人が少なくないそうなのです。
年代ごとの睡眠時間
【出典】厚生労働省e-ヘルスネット「年代ごとの睡眠時間」
また、夜しっかり睡眠をとれないため、夕方になると集中力が落ちてそれがストレスになり、仕事や家事のパフォーマンスが落ちることに悩む人も少なくありません。
そんな、仕事や勉強等による一時的・心理的なストレスの低減や睡眠の質改善にもいいと話題なのが、GABA成分です。アミノ酸の一種で、トマトやカカオなどの食品に含まれています。この成分が入った食品を目にしたことがある人も多いのではないでしょうか?
もともとGABA成分とは、植物、動物、人間の体内などに存在するアミノ酸のひとつです。GABA成分は、主に脳やせき髄で「抑制性の神経伝達物質」として働いていて、これによって興奮を鎮めたり、リラックスをもたらしたりする役割をしています。
吊り橋実験で確認。GABA成分をとるとストレスを抑制してくれる?
GABA成分の研究を続けているという江崎グリコ株式会社の商品技術開発研究所研究員・古谷正樹さん。数あるアミノ酸の中でGABA成分に注目して研究を始められたきっかけについて伺いました。
「多くの方がチョコレートを食べるとリラックスした経験があるのではないでしょうか? その"ほっ"とする体感に着目して研究を進めたところ、チョコレートの原料であるカカオに含まれるGABA成分にたどり着きました」。
研究の結果、GABA成分には一時的な心理ストレスの低減作用や睡眠の質改善の作用があることがわかってきたそうです。
それは多くの実証実験で証明されています。例えば、ストレスの低減について。男女8名の高所恐怖症の人が吊り橋を渡るときの唾液中のクロモグラニンA(ストレスマーカー)の量を計測した実験があります。
GABA成分を摂取したグループと摂取しないグループに分かれ、出発前・中間地点・到着後の計3回の唾液を摂取し、唾液中のクロモグラニンAを計測しました。
【出典】株式会社ファーマフーズ総合研究所「GABAリラクゼーション効果」
吊り橋の中間地点でGABA成分非摂取グループはクロモグラニンAが増加=つまり神経が高ぶっているのに対し、GABA成分を摂取したグループはクロモグラニンAが減少している=GABA成分によってストレスによる神経の高ぶりが抑えられていることがわかりました。
また、別の実験ではGABA成分摂取による作業量向上効果も発表されています。
GABA摂取による作業量向上効果
【出典】J Nutr Sci Vitaminol,57, 9-15, (2011)
普段から「心身共に疲労を感じている」男女に計算試験を実施したところ、GABA成分を摂取したグループは、非摂取グループに比べて計算の正解回答数が多いという結果に。このことから、GABA成分が心理的なストレスを軽減し、集中力を保つサポートをしてくれることが想像できます。夕方になると集中力が途切れがちな世代にも、GABA成分をとることが仕事や家事のパフォーマンスを上げるサポートになりそうです。
睡眠の質を改善して日中眠くなるのを防ぐ
もうひとつはGABA成分の睡眠の質を改善する働きに関する実験です。夜行バスという寝苦しい環境を睡眠に不満を抱えている人に置き換え、夕食後にGABA成分を含む食品を摂取し、当日の夜バスに乗車。就寝中の脳波を測定しました。
【出典】株式会社ファーマーズ総合研究所「GABA夜行バス睡眠試験」
グラフを見るとGABA成分を摂取したグループはノンレム睡眠の割合が増える傾向にあることから、睡眠の質が悪い場合にGABA成分を摂取すると、よりよい睡眠に導くよう助けてくれる可能性があることが示唆されました。
このようにGABA成分は睡眠の質の低下や、思うように集中できないなどの心理的なストレスによいことがわかってきて、近年ますます注目度が上がってきているのです。
機能性表示食品でGABA成分を上手に取り入れる
では、GABA成分は何から、どのようにとるのがよいのでしょうか?
GABA成分は私たちが毎日食べている生鮮食品、例えば、トマト、なす、アスパラガス、果物や、漬物やキムチなどの一部の発酵食品、チョコレートの原料となるカカオや発芽玄米などにも含まれています。
GABA成分は、ストレス軽減には1回28mg以上の摂取、睡眠の質改善には1回100mg以上の摂取が目安です。
「生鮮食品にはGABA成分が多く含まれているものが多いのですが、品種や季節などによって含有量が異なることがあります。そのため、GABA成分の含有量や摂取目安量がわかっている機能性表示食品を活用することも1つの手段としてよいと思います」(古谷さん)
では、どんなタイミングでGABA成分をとり入れるといいのでしょうか?
「GABA成分はとってから血中に取り込まれるまで約30分程度かかるといわれています。そのため、例えばストレスの低減を目的とするならストレスを感じるような作業を行う前に。睡眠の質改善を目的とするならば、夕食後など就寝の約1時間~30分前にとることを推奨しています」(古谷さん)
GABA成分についてより詳しく知りたい場合は、WEBサイト「GABA成分ラボ」がおすすめです。これは、2003年ごろからGABA成分(γ-アミノ酪酸)に注目し、研究・商品開発を進めている江崎グリコがGABA成分の理解促進のために開いたWEBサイトです。ストレス低減・睡眠の質改善・認知機能の維持・血圧低下・筋肉維持など、さまざまな機能を持つGABA成分の基礎知識から最新研究までがまとめられ、GABA成分を正しく理解する手助けに。
「GABA成分ラボ」
GABA成分の知識を、ココロとカラダの健康づくりにぜひ役立ててみてください。