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「すぐにイライラしてしまう」「なんとなくモヤモヤする」...そんな「負の感情」との付き合い方に悩んでいませんか?
年齢を重ねれば誰もが感情のコントロールが難しくなるもの。「負の感情」をコントロールし、スッキリ生き生きと生きるために、脳科学や心理学の知見によって得られた効果のある実践的な方法を、書籍『「感情に振りまわされない人」の脳の使い方』から学んでいきましょう。
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知識偏重から抜け出せない
日本では物事をよく知っている、知識をたくさん得ている人が頭のよい人と思われる傾向がありますが、欧米では独創的な発想ができる人、問題発見能力の高い人が頭のよい人と思われています。
日本人は一般的に、知識は多いけれども前頭葉があまり働いていない人が多いのです。言い換えれば、クリエイティブでない人が多いのです。
脳というものは、他の体の部分同様に使っていないと働きが鈍ります。ですから学校教育でも前頭葉を鍛える内容が重要です。
もちろん、年少の子どもに対しては自分で考える材料となる知識を叩き込む必要がありますが、年齢が上がってくるにしたがって発想力を鍛えるような教育が必要ということです。いろいろな詰め込み教育をした上で知識を使うような教育をするのが理想です。詰め込み教育が問題なのではなく、その後に、応用教育をしないことが問題だということです。
日本の場合は、高校までは世界でもトップレベルの知識を取得するのに、それを応用するような教育が大学でなされません。やはり、大学でも教授が自説や知識を教える詰め込み教育に近いことが行われるのです。
その影響で、社会に出てからも知識を仕入れることでストップしている人が多いというのが私の印象です。知識というものは知っているだけでは何の意味もなく、それを使ってはじめて意味があるものです。知識を用いて新しいことをはじめたり、問題を解決したりすることが必要のはずです。
そうでなくても考える習慣がないのに、前頭葉の機能が低下すると、知識を使って考えるということがおっくうになっていきます。だんだん、考えるよりも、知識を得るだけで満足するようになってしまいます。すると、前頭葉を使って考えることをしないのでさらに前頭葉が衰えるという悪循環に陥ってしまいます。
こうした脳内のパターンが定着してしまうと、そこから抜け出すのはかなりの労力を必要とします。そうなってしまう前に、知識偏重を打破することが大切です。
次の記事「脳に柔軟性がないと時代の変化についていけない!?/「感情に振りまわされない人」の脳の使い方(20)」はこちら。
和田秀樹(わだ・ひでき)
1960年、大阪府生まれ。精神科医。1985年、東京大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て独立。エグゼクティブ・カウンセリングを主とする「和田秀樹こころと体のクリニック」を設立し、院長に就任。国際医療福祉大学大学院教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)、川崎幸病院精神科顧問。老年精神医学、精神分析学(とくに自己心理学)、集団精神療法学を専門とする。著書に『感情的にならない本』(新講社)ほか多数。
『「感情に振りまわされない人」の脳の使い方』
(和田秀樹/KADOKAWA)感情の不調は"脳"で治す! 医師にしてベストセラー作家が教える、誰でもできる習慣術。「笑い」を解放することが前頭葉を刺激する、「"こだわり"にこだわらない」がポイント、競輪競馬やゴルフ、マラソンの向上心は脳にいいなど、脳科学や心理学の知見によって得られた「効果のある」「実践的な方法」を一挙に紹介!