脳腫瘍の手術後性格が激変したエリート商社マンの例/「感情に振りまわされない人」の脳の使い方(9)

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「すぐにイライラしてしまう」「なんとなくモヤモヤする」...そんな「負の感情」との付き合い方に悩んでいませんか? 
年齢を重ねれば誰もが感情のコントロールが難しくなるもの。「負の感情」をコントロールし、スッキリ生き生きと生きるために、脳科学や心理学の知見によって得られた効果のある実践的な方法を、書籍『「感情に振りまわされない人」の脳の使い方』から学んでいきましょう。

前の記事「社会的成功に不可欠なEQ(心の知能指数)も前頭葉と深い関係がある!/「感情に振りまわされない人」の脳の使い方(8)」はこちら。

前頭葉が損傷するとEQ能力も落ちる

前頭葉の働きがよい人ほどEQの働きがよいことは、アメリカにおける認知神経学の第一人者である、アイオワ大学の神経学部長アントニオ・ダマシオの研究がヒントになっています。

つまり、前頭葉に大きな損傷を負うとEQの能力が落ちるというのです。

ダマシオが診察したエリオットという30代の患者は、過去には仕事で成功した体験をもちながら、前頭葉が損傷を受けたため、仕事が続けられず廃人同様の生活をしていました。

もともとエリオットはエリート商社マン(本人が特定できないように身元情報に改変を加えており、弁護士だったという説がある)だったのですが、若くして脳腫瘍という病魔に侵されてしまいました。
優秀な脳外科医の手によって手術が行われ、腫瘍は完全に脳から摘出されました。手術は成功したかに思われましたが、術後の回復直後からエリオットの性格は変わってしまいました。

仕事を途中で投げ出し、どうでもいいことにこだわるようになりました。職を転々とするようになり、さまざまな新規事業を立ち上げるもののことごとく失敗するという憂き目に遭いました。また、結婚と離婚を繰り返すようにもなりました。
ダマシオが、変わってしまったエリオットを検査した結果、前頭葉の表面は無事でしたが、内側がかなりの程度、損傷していることがわかりました。

ダマシオが検査した結果では、エリオットの知覚能力、過去の記憶、短期記憶、新しい学習能力、言語、計算能力はまったく問題がないことがわかりました。知能テストの結果はすべて異常なしという結果が出たのです。
問題があったのは、感情が平たんになること、その割に感情のコントロールが悪く、意思決定能力に欠けること、まともな道徳観が衰えるという点でした。

ダマシオはこれらの異常が似たような病変をもつほかの患者にも見られることに気づきました。
この話が、ダニエル・ゴールマンのEQの解説書の冒頭で紹介されるように、多くのEQ研究者は、EQは前頭葉の働きを示すものと考えています。

エリオットのような極端なケースでなくても、老化によって前頭葉が萎縮することによってEQ能力が落ちることが想定されるようになったというわけです。ゴールマンによると40代以降は放っておくとEQ能力が落ちるということですが、この時期から前頭葉の萎縮が始まるのです。

このことは、逆にとらえれば、前頭葉の働きをよくできれば、EQを向上させることができるということでもあります。

 

次の記事「40代以降は「知能の老化」より「感情の老化」に注意が必要!/「感情に振りまわされない人」の脳の使い方(10)」はこちら。

和田秀樹(わだ・ひでき) 

1960年、大阪府生まれ。精神科医。1985年、東京大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て独立。エグゼクティブ・カウンセリングを主とする「和田秀樹こころと体のクリニック」を設立し、院長に就任。国際医療福祉大学大学院教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)、川崎幸病院精神科顧問。老年精神医学、精神分析学(とくに自己心理学)、集団精神療法学を専門とする。著書に『感情的にならない本』(新講社)ほか多数。

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『「感情に振りまわされない人」の脳の使い方』

(和田秀樹/KADOKAWA)

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この記事は書籍 『「感情に振りまわされない人」の脳の使い方』からの抜粋です
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