キユーピーは6月、「国際ヒアルロン酸学会」で、口から摂取したヒアルロン酸が大腸の腸内細菌によって分解、吸収され、皮膚で作用する仕組みを解明したと発表。同社は30年以上にわたるヒアルロン酸研究開発の実績をもちます。そこで今回は、キユーピー株式会社研究開発本部技術ソリューション研究所 主任研究員の栗原 仁(くりはら・ひとし)さんに「ヒアルロン酸が吸収される仕組み」についてお聞きしました。
肌の潤いを保つヒアルロン酸。
口から摂取すると、皮膚の水分量を増やす、しわが改善するといった報告はこれまでもありました。
しかし、摂取後、どのように働くのかは明確ではありませんでした。
キユーピーは、神戸大学との共同研究により、そのメカニズムを解明。
「口から摂ったヒアルロン酸は、野菜に含まれる食物繊維と同様、胃液や小腸の消化酵素では分解されず、大腸まで達して腸内細菌によって分解されることが分かりました」と、同社で研究を担当する栗原仁さん。
大腸で分解されて低分子化(※1)したヒアルロン酸は体内へ吸収され、皮膚へと作用します。
「口からヒアルロン酸を摂ることで、肌の奥にある真皮の線維芽細胞(※2)を体の内側から刺激します。また、コラーゲンの代謝も活性化。こうした働きにより、しわの軽減や皮膚の水分量のアップ、肌の弾力性の改善が見られました」
1日120mgのヒアルロン酸を摂取した群(黒線)とそうでない群(グレー線)を比較。
※(上)12週間後の顔の水分量の増減率、(下)12週目までの腕の弾力性の増減率。キユーピーと台湾のHungKuang University(弘光科技大學)許慈芳准教授との共同研究より。
さらに今回の研究では、ヒアルロン酸を分解する腸内細菌も特定。
同社では2002年よりヒアルロン酸のサプリメントを販売していますが、効果が出やすい人と出にくい人がいるといいます。
「ヒアルロン酸を分解する腸内細菌を特定できたことで、その菌とヒアルロン酸を合わせたより効果の出やすい商品の研究・開発も考えられます」
メカニズムの解明により、新たな「食べるヒアルロン酸」が登場する日も、そう遠くはないかもしれません。
《ヒアルロン酸を食べるとどうして皮膚に作用するの?》
口から摂ったヒアルロン酸は、胃液や小腸の消化酵素では分解されず、大腸の腸内細菌によって分解されます。
低分子化したヒアルロン酸は大腸で体内に吸収されてから皮膚に到達し、肌の保湿力を高めることが分かりました。
ヒアルロン酸が大腸で吸収されると?
●しわを軽減
コラーゲンの代謝が活性化され、しわを改善します。
●弾力性アップ
皮膚の水分量が高まり、肌の弾力性も改善されます。
※1 人体が十分に吸収できるよう小さい分子量にすること。消化器官から体内へ効率の良い吸収が見込めるようになります。
※ 2 線維芽細胞には、肌の中でヒアルロン酸やコラーゲンなどを新たに作り出す作用があります。
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取材・文/オフィス・エム(寳田真由美) イラスト/坂木浩子