検査では異常がないのに、体の調子が悪いなんてことはありませんか? 実は骨盤のゆがみを正すことで、そんな自律神経の乱れから起こる不調を改善できるケースもあるんです。そこで今回は、神経内科クリニック院長の久手堅 司(くでけん・つかさ)先生に「"自律神経失調症"の原因などの基礎知識」について教えていただきました。
積み重なる症状の原因は
前屈みの悪い姿勢
季節の変わり目は、低気圧や寒暖差などの影響で体調を崩しやすいですね。
頭痛、めまい、動悸などに加え、更年期症状にみられやすい多汗やのぼせなどの症状が重なる人もいます。
少しでも良くなりたい一心で、頭痛は脳神経内科、めまいは耳鼻咽喉科、動悸は循環器内科など、たくさんの診療科を受診しても検査で異常が見られず、「自律神経失調症」と診断されることがあるでしょう。
症状は多彩でも病名はたった一つ。
それは自律神経の働きに関係しているのです。
「自律神経は、交感神経と副交感神経がシーソーのように働き、体温、発汗、内臓や血管などの働きを自動的に調節しています。自律神経が乱れて、交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、さまざまな不調に結びつくのです」と久手堅司先生は説明します。
知っておきたい
「自律神経」の基礎知識
自律神経とは?
循環器や消化器、呼吸器などの働きを自動的に調整する神経。自分の意思とは無関係に24時間働き続けている。
自律神経の乱れとは?
体の活動時や昼間に活発になる「交感神経」と、安静時や夜に活発になる「副交感神経」の2つのバランスが崩れた状態。
主な症状は?
頭痛、めまい、動悸や息切れ、胃腸の調子が悪い、多汗など。
自律神経のバランスが保たれている
交感神経が優位なとき
イライラする、ドキドキする、眠れないなど
副交感神経が優位なとき
だるい、眠い、やる気が出ないなど
例えば、血管が縮むのは交感神経が優位に働くときです。
興奮したり、ストレスを感じたとき、あるいは、寒いときなどに血管はキュッと縮みます。
すぐに拡張すれば良いのですが、交感神経が優位な状態が長引くと血流が滞り、老廃物が神経を刺激して頭痛を引き起こします。
逆に、副交感神経が優位で血管が急に拡張したときには、血管の周りの神経を刺激するので、やはり頭痛が起きるのです。
では、なぜ自律神経が乱れるのでしょうか。
最大要因はストレスです。
ストレスといっても、人間関係以外に、環境の変化や感染症などもストレスになります。
自律神経に影響を与える4つのストレス
1.物理的ストレッサー
暑さや寒さ、騒音、混雑、悪臭など
2.化学的ストレッサー
酸素の欠乏・過剰、公害物質、薬物など
3.生物的ストレッサー
炎症、細菌・ウイルスの感染、睡眠不足など
4.心理・社会的ストレッサー
人間関係や社会生活上の問題など
医学・心理学においては心と体にかかる外部からの刺激を「ストレッサー」と呼ぶ。
職場などの人間関係やコロナ禍の環境の変化などは逃れようもなく、自律神経に悪影響を及ぼすことが。
とはいえ、ストレスを回避しても、症状が治まらないことがあります。
「骨格が乱れていても、自律神経に悪影響を及ぼすのです。自律神経は脳の視床下部から背骨の脊髄を通り、全身につながっています。姿勢が悪く背骨がゆがんでいると、自律神経が圧迫されて正常な働きができなくなるのです」と久手堅先生は指摘します。
正常な背骨はS字に近いカーブを描き、体重の約1割を占める頭を支えています。
例えば、体重60kgの人の頭の重さはおよそ6kg。
スマートフォンやパソコン操作、家事などで、前屈みになるような姿勢を長時間続けていると、重い頭が前方に位置するため骨格がゆがんでしまうのです。
「セルフチェックで、壁に沿って立ってみて、理想的な姿勢かどうかを確認しましょう」
理想的な背骨は、首の頸椎7個が前にカーブし、胸椎12個が後ろにカーブを描き、腰椎5個が前にカーブしている状態です。
セルフチェックで頭が壁につき、壁と腰の間に指1本分の隙間ができれば、理想的なカーブといえます。
また、正面から見て、縦の軸(背骨のライン)と横の軸(耳のライン)がまっすぐになっているかもチェックします。
左右どちらかに傾いている場合は、ゆがんでいる証です。
【姿勢セルフチェック】
壁に沿って立つだけでOKです
かかと、お尻、肩甲骨の3点を壁につけたときに、自然に頭が壁につき、壁と腰の間に指1本分の隙間ができるのが正しい姿勢。
Point
全身(側面と正面から)の写真をスマートフォンなどのカメラで撮ってもらいましょう。自分の姿勢を確認できます。
こんな人は要注意!
●高いハイヒールをよく履く
骨盤が前傾して腰が反り、首が前に出るような姿勢になりやすいので注意が必要です。
●猫背
猫背は背中が丸くなることに加え、首が前方に出てストレートネックの状態になります。
●スマートフォンを見る時間が長い
前屈みで画面を見ることが多いと猫背やストレートネックなどになりやすいといえます。
取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史