発達障害のピアニストが奏でる音楽が心を和らげるのはなぜ? その秘密は心が和らぐ脳内物質の分泌にあり!

音楽を聞くと心がホッとしたり、やさしい気持ちになったりしませんか? 脳科学者の中野信子先生は「音楽には、心を和らげる効果を持つことが科学的に説明できます」と話します。その中野さんが「ファン」だと公言する発達障害の天才ピアニスト・野田あすかさんと一緒に取り組んだ共著『脳科学者が選んだやさしい気持ちになりたいときに聞く 心がホッとするCDブック』(中野信子&野田あすか/アスコム)より、「ピアノが野田さんの生き方にもたらした効果」などを脳科学視点でくわしく解説します。

心04.jpg

あすかさんのピアノへの「共感」も大切な「気づき」なのです

時には、野田あすかさんのピアノにつられて思わず笑ったり、なぜか悲しく泣けてきたりもするでしょう。

こうした音楽への「共感」も、大切な「気づき」の一つです。

ただし、「わかる」ことと「共感する」ことは違います。

脳科学的にいうと、脳には「ミラーニューロン」という神経細胞があります。

これは、他人が行動するのを見ている状態で活発になる細胞です。

他人が何か行動するのを見て、自分自身が同じ行動をとっているかのように、つまり「鏡」のように反応するので、「ミラー」と呼ばれるようになりました。

このミラーニューロンが、「共感」の能力を担っていると考えられています。

あすかさんのピアノに共感して、自然と笑みがこぼれてきたら、なぜだろうと自分の心と向かいあってください。

そこでまた、新たな気づきがあるでしょう。

ミラーニューロンとは?

P45画像.jpg

自分が悲しいわけではないのにもらい泣きする、大勢が笑っていると別に楽しいとも思わないのにつられて笑う、テレビで誰かが踊り出すと見ている子どもがつられて踊るというのは、いずれもミラーニューロンが関与してそうなるのです。

やさしい気持ち──その時、脳はどうなっている?

あすかさんのピアノを聞いて自分を見つめ、心がホッとやさしい気持ちになった時、脳のなかで起こっていることをお話ししておきます。

ごく簡単にいえば、緊張している時の脳は、周波数の細かい脳波が出て、ノルアドレナリンという脳内物質が出ています。

脳の指令によって心拍数・血糖値・血圧なども上がり、戦闘に備える体の状態になります。

逆に、緊張がほぐれ、心がホッと安らぐ時の脳は、セロトニンが充分に出て、ノルアドレナリンを抑えます。

セロトニンが足りないと気分が沈み、うつ状態になってしまいます。

脳が緊張・興奮すると、覚醒して戦闘に備えるわけですから、ふつうの意味の「意識」を失ってしまう「睡眠」(眠り)とは、まったく逆の状態です。

眠るためには、緊張や興奮を取り除く必要があり、心をホッとさせ、やさしい気持ちにならなければなりません。

睡眠は、脳や体を休めるほか、細胞レベルでの修復(自然治癒 )、成長(成長ホルモンの分泌)、肌の新陳代謝などに強く関係しています。

適度な睡眠が脳に与える効果は非常に大きく、次の3つがあります。

(1)前頭葉機能を増進させ、よい行動を選び、悪い行動を抑制する能力を高めます。

睡眠不足で抑制が効かないと、食欲が異常に増したり暴力的になったりします。

(2)記憶力を向上させます。

脳の「ニューロン」(木の枝のように分岐した神経細胞)のつなぎ目に「シナプス」という接触点があり、その形成・結合・消滅などの変化が記憶と大きく関係しています。

シナプスの正常な働きには、睡眠が必要です。

(3)ニューロンが出す老廃物が睡眠中に掃除され、機能の維持に役立ちます。

やさしい気持ちは睡眠に必要で、適切な睡眠は体にとって、特に脳にとってよいことです。

ですから、あすかさんのピアノを聞いて心をホッとさせ、やさしい気持ちになることは、みなさんの健康にとっても、長い目で見てプラスになっていくことなのです。

こんな脳内物質が、こんな働きをしている

▼ノルアドレナリン

「戦う」「逃げる」などの反応を起こし、心拍数を上げるように交感神経系を働かせます。

脂肪からエネルギーを放出して、筋肉の素早い動きを促進させます。

セロトニン

生体リズム・神経内分泌・睡眠・体温調節などに関わっています。

ドーパミンやノルアドレナリンなどによる感情的な情報をコントロールして、精神を安定させます。

▼ドーパミン

運動調節・ホルモン調節・快の感情・意欲・学習などに関わっています。

アドレナリン・ノルアドレナリンの前駆体(アドレナリン・ノルアドレナリンに変わる前の物質)でもあります。

▼オキシトシン

「戦おう」「逃げよう」「怖い」といった感情を減少させます。

母親が赤ん坊を抱っこする、恋人同士で手をつなぐ、家族団らんの時など、よい対人関係が築かれている時に分泌される物質です。

【野田あすか】

広汎性発達障害、解離性障害が原因で、いじめ、転校、退学、そし て自傷、パニック、右下肢不自由、左耳感音難聴などで入退院を繰り返してきたピアニスト。たくさんの試練をのりこえてきたことで、あすかの奏でる「やさしいピアノ」は多くの人の感動をよんでいる。

▼コンサート情報

9月19日(土)~22日(火)オンラインコンサート開催

※9月20日(日)~22日(火)はアーカイブ視聴可能

【まとめ読み】『脳科学者が選んだやさしい気持ちになりたいときに聞く 心がホッとするCDブック』記事リストはこちら!

脳科学者が選んだやさしい気持ちになりたいときに聞く心がホッとするCDブック脳科学者が発達障害を持つピアニストの「音楽と心の関係」を全3章にわたって徹底解明。全10曲が入ったCD付きです。

 

中野信子(なかの・のぶこ)
医学博士/脳科学者/認知科学者。フランス国立研究所「ニューロスピン」に博士研究員として勤務。帰国後は脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行う。科学の視点から人間社会で起こりうる現象および人物を読み解く語り口に定評があり、テレビのコメンテーターとしても活躍中。『脳はなんで気持ちいいことをやめられないの?』など著書多数。

野田あすか(のだ・あすか)
ピアニスト。発達障害や解離性障害が原因で、いじめ、転校、退学、自傷、パニック、右下肢不自由、左耳感音難聴などで入退院を繰り返してきた。たくさんの苦しみを抱え、自分の障害と向き合ってきたことで、同ピアニストが奏でる「やさしいピアノ」は多くの人の感動をよんでいる。2016年プロのピアニストとしてデビュー。全国でリサイタルを行う。

脳科学者が選んだやさしい気持ちになりたいときに聞く心がホッとするCDブック.jpg


脳科学者が選んだやさしい気持ちになりたいときに聞く

心がホッとするCDブック

(中野信子&野田あすか/アスコム)

話題の発達障害を持つピアニストと脳科学者が「しなやかな脳と心を育てる」ことを目的に作ったCDブック。音楽と心の関係を、「天才ピアニストが音楽とともにたくさん乗り越えて歩んできた人生」と照らし合わせながら脳科学者がくわしく解説しています。ホッとしたい。やさしい気持ちになりたい。収録された10曲入りのCDを聞くだけで、ストレスの多い現代人たちに心の癒しをもたらす一冊です。

【コンサート情報】

9月19日(土)~22日(火)オンラインコンサート開催

※9月20日(日)~22日(火)アーカイブ視聴可能

■『発達障害を持つ天才・ピアニスト野田あすか』の紹介動画もチェック!

※この記事は『脳科学者が選んだやさしい気持ちになりたいときに聞く 心がホッとするCDブック』(中野信子&野田あすか/アスコム)からの抜粋です。
PAGE TOP