冷え性や生理不順、むくみに便秘...「自分の体質だから」とあきらめていませんか? その悩み、毎日の食事などを少し意識すれば解決するかもしれません。ヒントとなるのは中医学(中国伝統医学)のセルフケア。そこで、東洋と西洋の医学に精通した医学博士・関隆志さんの初著書『名医が教える 東洋食薬でゆったり健康法』(すばる舎)から、中医学をベースにした「不調を治す食事&運動の考え方」を連載形式でお届けします。
複合的な同時アプローチこそが中医学の特長
中医学には、多様な治療手段があります。代表的なものに漢方薬、鍼灸(※1)、推拿(すいな)(※2)、薬膳があり、さらに気功や太極拳(タイチエクササイズ)なども治療手段として使われる場合があります。
これらの治療手段を組み合わせ、さまざまなアプローチから複合的に健康な体を目指すのが、中医学の特徴と言えるでしょう。
そんな多種多様な治療手段の中でも、食薬はふだんの生活に簡単にとり入れられる点が大きな魅力です。
また、同様にふだんの生活にとり入れやすく、食薬と組み合わせることで大きな効果が期待できるものに、鍼灸の「ツボ押し」が挙げられます。
鍼や灸、指圧などにより特定のツボを刺激することで、体内で、ある一定部分の血流量を上げたり、自律神経や中枢神経の働きを整えるなど、不快な症状を改善する効果が期待できます。
※1鍼灸(体に鍼や灸を用いて刺激を与える治療法)
※2推拿(手技療法。なでる、押す、揉む、叩くなどの手技を使って健康を増進させる方法のこと)
ツボを刺激すると内臓に変化がおきる
ツボ治療の基本には、「経絡(けいらく)(経脈)」という考え方があります。
中医学では、人の体には頭部や胸から手足の先へと縦につながる「経絡」という刺激が伝わる道のようなものがいくつかあり、気き血(体内のエネルギーや血液)が運行する主要な通り道になっていると考えられています。それぞれの経絡は、各臓器と体の中でつながっていると考えられています。
経絡は、血管やリンパ管、神経を足したようなものだとイメージしていただくといいかと思います。
主な経絡は12本あり、それぞれが特定の臓器と深く関係しています。そして、これらの経絡のルート上にあるのが「経穴(けいけつ)」です。この経穴のことを、日本では一般的に「ツボ」と言っています。
急所や要点を示す慣用句として、「ツボを押さえる」「ツボを心得ている」などの表現もありますので、なじみがある人が多い言葉ではないでしょうか?
ツボは皮膚上に多数存在し、その部位を押したり、温めたり、冷やしたりという物理的な刺激を加えることで、特定の内臓に特定の変化が生じることがわかっています。逆に、内臓の状態の変化が、ツボに変化を起こすことも知られています。
ツボと臓器は経絡でつながっていると考えられているため、臓器が不調になれば、その臓器と関連するツボにも異変がおこるのです。
中医学では、こうした関係を利用して、外からは見えない臓器の異変をツボ周辺の状態から類推したり、ツボに刺激を与えることで、筋肉の凝こりや痛み、内臓の不調・疲労などを改善したりすることをおこないます。
鍼灸治療は、これらのツボや経絡に鍼を刺したり灸で温めるという物理的な刺激を与えることで、心身に変化をおこし、病気を治そうとする治療法です。
さらに、太極拳(タイチエクササイズ)などのように体を動かすことでも、特定の経絡やツボに刺激を与えることが可能です。
自分の体質に合った食事をとる「食薬」と合わせ、経絡やツボを刺激する運動や鍼灸、ツボ押しといった異なる方向からの同時アプローチで、「健康な体」を、しっかりと実現していきましょう!
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理論よりも実践がメイン。4章にわたって体質・体調に合わせたレシピやツボを刺激するエクササイズが写真付きで紹介されています