日ごろ、動悸や息切れを感じることはありませんか? 胸のあたりの違和感は、思わぬ病気が隠れている可能性があるので、放置せずに医師の診療を受けることが大切です。「こんな症状があって心配」または「症状がないけれど気になっている」という方のために、今回はCVIC心臓画像 クリニック飯田橋理事長、寺島正浩先生に、「心臓周囲脂肪」について教えていただきました。
おなかまわりにつくだけではない!心臓にこびりつく憎い内臓脂肪
「心臓のまわりにも脂肪が付着するのをご存じですか? この脂肪が悪玉物質(サイトカイン)を放出して血管を汚したり傷つけたりして、動脈硬化を悪化させてしまいます。これは生活習慣病を引き起こす内臓脂肪と同じメカニズムです」と寺島先生。
メタボリックシンドロームで有名になった内臓脂肪は、おなかまわりだけでなく、心臓にまでくっついて悪さをするのです!
太っていない人も注意。自覚症状なくたまる
「内臓脂肪であれば、腹囲が増加することで分かります。最近ちょっとおなかがポッコリしてきたな...という自覚症状があるのです。しかし残念なことに、心臓周囲脂肪は自覚症状がないまま、心臓のまわりの血管を傷つけていくのです。メタボ気味の人は注意が必要ですが、太っていない人も油断はできません。不整脈や狭心症など、心臓病の症状がある人はもちろんですが、症状のない人で、生活習慣病やさまざまな危険因子がある人は、ぜひ心臓MRI検査を受けてください」と寺島先生。
もともと太っていない人は、以前から太っている人に比べて脂肪を腹囲にため込むのではなく、本来は脂肪をため込むべきではない心臓のまわりに蓄積しやすいのだそうです。
脂肪から発生する悪玉物質が心臓を脅かす
心臓の周囲にこびりついた脂肪細胞からは毛細血管が生え出します。
そして心臓の冠動脈に向かって「炎症性サイトカイン」という悪玉物質を送り込むのです。
その結果、冠動脈の血管壁にプラークが付着したり、血管壁を傷つけて炎症を起こし、動脈硬化が進んで、不整脈、狭心症、心筋梗塞、心不全など命に関わる病気を引き起こします。
体にダメージのない心臓MRI検査で発見可能
心臓周囲脂肪の危険因子は
①高コレステロール、②高血圧、③運動不足、④肥満、⑤喫煙、⑥高血糖、⑦偏食、⑧精神的ストレス、⑨過度の飲酒
など、多岐にわたっています。
これらは修正可能な危険因子です。
該当するものが多いほど、心臓周囲脂肪が心臓を傷つけている可能性があります。
一度心臓MRI検査を受けてみることをおすすめします。
別名「エイリアン脂肪」。目で見ると異常さが一目瞭然!
非造影心臓 MRI(動いている心臓を動画として撮影できる技術)を用いて3D 画像化したもの。上が心臓周囲脂肪(エイリアン脂肪・異所性脂肪)がたくさん付着している40代男性の心臓。緑色の部分が心臓の周囲に付いた心臓周囲脂肪。
こちらは20代女性の健康な心臓で、心臓周囲脂肪は付着していません。心臓のエイリアン脂肪を体に負担をかけずに測定できるのはこの技術のみです。
画像提供/医療法人社団 CVIC 心臓画像クリニック飯田橋
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取材・文/宇山恵子 デザイン/根岸良介(omodaka)