肩こり、腰痛、目の疲れ、何をやっても疲れがとれない...。年のせいかと思いきや、その原因はあなたの「脳」にあるかもしれません。そこで、『疲労回復の名医が教える 誰でも簡単に疲れをスッキリとる方法』(アスコム)を執筆した梶本修身さんが提唱する疲労回復法を連載形式でご紹介。疲労と脳の関係や実践的なストレッチを学んで、毎日をリセットしましょう。
いびきは睡眠の大敵
脳を休めて回復させるには、毎日の疲れをリセットすること。その最適な方法はよい睡眠をとることです。睡眠の最大の目的は、「前日までの疲れを回復させること」。よい睡眠こそが前日までの自律神経の疲れをしっかり癒いやしてくれるのです。よい睡眠を得るには、安全で快適な環境において、心身ともに安心できる安定した状況で眠ることが必要です。
その「よい睡眠」を妨げる最も大きな要因が「いびき」です。いびきを「熟睡の証(あかし)」と思っている方が少なくありませんが、これは間違いです。
ここで、いびきをかくメカニズム確認しておきましょう。いびきは、狭くなった気道を空気が通るときの摩擦音です。いびきをかいているときは、舌の根元やのどの筋肉、あるいは脂肪が気道をふさぎ、空気の通り道が狭くなっています。そのため呼吸をしていても、酸素が十分に体内にとり込まれません。
しかし、脳へも安定して酸素供給しないと疲労回復ができないので、司令塔である自律神経は、「心拍を上げて!」「血圧を上げて!」とせっせと指令を出し続けます。
本来、睡眠時は自律神経もできる限り活動を抑えて回復を図りたいわけですが、いびきで酸素不足になっている状態では、心拍や血圧を上昇させ、まるで睡眠中に運動しているように働かざるを得なくなります。「寝ても寝ても疲れがとれない」という慢性疲労や睡眠負債の訴えは、実はいびきが原因だったということが非常に多いのです。
呼吸は、生きている間、ずっと続くものです。普段はあまり意識することがありませんが、実はかなりのハードワークなのです。肺を風船、気道をストローにたとえると、6時間の睡眠では、平均して4000個以上の風船をストローで膨ふくらませている計算になります。
ただでさえ呼吸は重労働ですが、いびきをかいていると気道が狭くなります。極細のストローを使って風船を膨らませているようなものと考えると、いびきが起こすダメージを想像しやすくなるでしょう。
女性のいびきは特に危険
ちなみに、女性のいびきのダメージは、男性のいびきよりも甚大です。女性は肺活量が少ないためにいびきの音は小さいですが、肺活量が少ないということは、吸入できる酸素量も少ないということです。さらに、女性は貧血や低血圧の症状を合併することが多いので、脳に酸素が十分に行き渡らない状態に陥りやすい傾向があります。
特に、女性は更年期になると、女性ホルモンの減少で舌の筋肉の働きが低下します。気道が狭くなって寝息がいびきに代わることも多いため、注意が必要です。自分がいびきをかいているかどうかわからない場合は、スマートフォンを枕元に置き、録音機能を使って睡眠中の呼吸音を録音してみましょう。いびきの録音・測定に特化した無料アプリを活用するのもおすすめです。
また、ベッドに入ってすぐに眠りに入る、いわゆる「寝つきのよさ」を熟睡の証と考えている方も多いと思いますが、これも誤りです。一般にベッドに入ってから寝つくまでの時間は10分程度。5分以内に眠ってしまうのはいわゆる「寝落ち」であり、睡眠負債、すなわち慢性的に睡眠不足や睡眠の質が低下しているサインです。
実は、睡眠のリズムを作っているのも自律神経です。寝落ちするほど自律神経が疲れていると、よい睡眠を得るのは困難です。睡眠負債が自律神経の慢性的疲労を起こし、自律神経の疲弊が睡眠の質を低下させる悪循環に陥ることになります。毎日寝落ちしている方は、いびき同様、生活習慣の改善が必要です。
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4章にわたって疲労と回復の考え方から生活改善法まで学べます。簡単に作れる「疲労回復レシピ」も