「病院に行くべきかどうか...」と悩むレベルの困った症状、いろいろありますよね。今回寄せられたのは、「胃の上の辺りがキリキリ痛く、食事も辛い...」という70代男性のお悩み。医療法人社団同友会理事長 高谷典秀先生がお答えします。
Q
胃の上辺りがキリキリ痛く食事も辛い...
70歳の男性です。私は以前より胃腸が弱く、お腹や胸がむかむかすることが多かったのですが、最近症状がひどくなりましたので相談いたします。
以前は胸焼けをするくらいだったのですが、最近は胃の上辺りがきりきりと痛み、食欲も無くなってきました。それでも我慢して食事をすると、食べ物を飲み込む際にも痛みを感じます。
先日はついに、食べた物を戻してしまいました。ただの胸焼けで、こんなにも辛い症状が出るものなのでしょうか。それとも、なにか病気が隠れているのでしょうか。
A
逆流性食道炎の疑い
まず内視鏡検査を
今回は胸焼けや強い胃の痛みなどの症状でお困りの方からのご相談です。もともと胸のむかつきがあり、最近になって食べ物を飲み込む時にも痛みが出てきたということですが、典型的な逆流性食道炎の症状で、それが酷くなっているという印象を受けます。
逆流性食道炎というのは、胃の中の酸が、食道の方へ逆流してしまうことにより、食道の部分が炎症を起こしてしまう病気です。通常は食道と胃を繋いでいる部分の筋肉がしっかりと口を閉じるような働きをしているのですが、その筋肉が弛んでいたり、胃酸の分泌が盛んだったりすると、胃酸が食道へ上がってきてしまうことがあるのです。すると食道の粘膜は胃酸に対して弱いものですから、胃酸が触れると炎症を起こして、ただれてしまいます。これが逆流性食道炎です。
人によっては、胸の痛みが強く心臓が悪いのではと心配して精密検査を受けられ、実は逆流性食道炎だったということもあります。その他にも、口の方へと胃酸が逆流するために呑酸(どんさん)といってゲップがでたり、気管支喘息、慢性の咳などの症状がでたり、副鼻腔炎や、虫歯の原因になったりもすることもあります。
逆流性食道炎の診断については、やはり内視鏡の検査を受けることが大切です。内視鏡で見ると、炎症を起こしてただれている部分が観察できますし、万一、何か他の病気が隠れている場合も診断をつけることができます。稀ではありますが、食道がんや胃がん、あるいは胃潰瘍などの可能性も否定できませんので、やはり一度は内視鏡検査を受けられることをおすすめいたします。
検査の結果、やはり逆流性食道炎であれば、最近ではプロトンポンプ阻害薬という良いお薬があります。これは十二指腸潰瘍や胃潰瘍の治療にも使われる薬ですが、胃酸をしっかりと押さえる作用がありますので、逆流性食道炎にも非常に効果が高いものです。こういった薬を処方してもらい、しっかり飲んでいただければ、炎症も改善し、症状も良くなってくかと思います。
また、生活習慣との関連でいえば、食事をした後、すぐ横になったりすると、胃の中の物が逆流しやすくなってしまうので、食後すぐには寝ないで、しばらく体を起こしておくと良いでしょう。また、夜寝ている間にも、胃酸が食道へと上がってきてしまうため、少しベッドを起こして、上半身を高くするようにして寝ていただくと良いでしょう。最近ではメタボとの関連も指摘されているため、過食を避け、肥満の是正に努めていただき、過度のアルコールやカフェイン摂取も控えることが良いでしょう。(老友新聞社)