体は動いていないのに「天井がグルグル回る」「立ち上がれない」などの感覚に襲われるのが「めまい」です。ほとんどの場合、命にかかわる病気ではないのですが、そのままにしておくと日常生活に支障が出ることも。そうならないためにも、対処法を知り毎日を健康に過ごしましょう。
「めまい外来」を開設している肥塚 泉先生によると、めまいを引き起こす主な病気に「良性発作性頭位めまい症」「メニエール病」「めまいを伴う突発性難聴」「前庭神経炎」の4つがあり、めまいの持続時間で見分けられるそうです。
めまいは、「眩暈」「目眩」と書き、「目」に関連がありそうですが、実は原因の多くは「耳」にあります。耳の「三半規管」は、体の平衡感覚を感知するセンサーの働きをしています。三半規管の内部はリンパ液で満たされており、頭の動きによって生じたリンパ液の流れを感知します。頭が回転するとリンパ液も移動し、その動きを脳に伝達します。三半規管内にある「耳石器」も同様に、頭の動きを感知する役割を担っているのです。
「良性発作性頭位めまい症」は自宅で治せます
30秒から1分以内でおさまるめまいが「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」。めまい患者の半数以上を占め、閉経後の女性や骨粗鬆症の人に多くみられます。カルシウム代謝が低下し、耳石がはがれやすくなるからです。「はがれた耳石はリンパ液に入り込み、頭を動かすたびにその耳石が移動。リンパ液に流れが生じると、頭を動かした後じっとしていても『頭が動いている』と間違った情報を脳に伝えるのです」。
めまいは30秒から1分以内でおさまり、難聴や耳鳴りなどの聴覚の異常は起こりません。症状がよく出るのは「朝起きたとき」。睡眠中は長時間同じ姿勢なので、三半規管の中でばらばらに存在していた耳石が1カ所に集まって塊になり、三半規管の中で動き、より強いリンパ液の流れが生じるからです。治療は、自分で治す方法を行います。
寝返り体操と枕の高さを変えて自分で治す
...三半規管に入り込んだ耳石を取り除くリハビリ運動
「良性発作性頭位めまい症」は寝返り体操で治す
(1)布団やベッドの上にあおむけに寝て1から10まで数える。
(2)寝返りを打つように体を左に傾けて1から10まで数える。
(3)再びあおむけに寝て1から10まで数える。
(4)寝返りを打つように体を右に傾けて1から10まで数える。
ポイント
●1日に2度、起床時と就寝時に(1)〜(4)を10回行う。
●左に寝返りを打ったときに、めまい症状が強い場合は右から開始してもよい。
●腰が痛む人は、(2)と(4)は体ごとではなくて、頭を傾けるだけでもよい。
枕を高くして治す
普段より少し枕を高くすることで、耳石のかけらが三半規管に入るのを防ぎます。
次の記事:「20分以上続く「めまい」は要注意!リハビリや治療が必要です/めまいを治す!(2)」はこちら。
肥塚 泉(こいづか・いずみ)先生
聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科教授。同大学卒業後、大阪大学医学部耳鼻咽喉科、米国ピッツバーグ大学医学部耳鼻咽喉科などを経て、2000年より現職。「めまい外来」を開設し、5万人以上の診察にあたる。