
『人は背中から老いていく 丸まった背中の改善が、「動ける体」のはじまり』 (野尻 英俊/アスコム)第7回【全7回】
「最近、疲れやすい」「背中が丸くなってきた」と感じていませんか? 実は、人の老化は「背中」から始まると言われています。丸まった背中(脊柱後弯)は、見た目年齢を上げるだけでなく、転倒や骨折、寝たきりのリスクが高まる傾向にあるのです。書籍『人は背中から老いていく 丸まった背中の改善が、「動ける体」のはじまり』(アスコム)は、整形外科専門医、脊椎脊髄外科専門医、脊椎脊髄外科指導医である野尻英俊先生が、「背中の老いのメカニズム」と対策を医学的アプローチで解説します。今回はこの本の中から、健康寿命を延ばし、いつまでも自分の足で元気に歩き続けるために知っておきたいことをご紹介します!
※本記事は野尻 英俊 (著)による書籍『人は背中から老いていく 丸まった背中の改善が、「動ける体」のはじまり』から一部抜粋・編集しました。
「背中の老い」の原因として注目されるスーパーオキシドとは
これまで紹介してきた「背中の老い」にまつわる数々の知見は、すべて調査や研究に裏打ちされた医学的根拠のあるものです。想像や憶測による話はいっさい含まれていません。
そんななか、この章の最後に、まだ仮説の段階ながら、おそらくそうであろうという事実をほぼつかみかけている、私自身が中心となって進めている基礎研究を紹介したいと思います。
テーマは、背中の老いと酸化ストレスの関連性です。
私は今から20年ほど前に、「過剰なスーパーオキシドが運動器を変性させる」という仮説を立て、それ以来、変性の原因をコントロールする方法を探り続けています。
スーパーオキシドとは活性酸素の一種で、酸素分子に1個の電子が還元された状態のことを指します。
このスーパーオキシドが過剰に発生すると、酸化ストレスを引き起こす可能性があり、それが筋力低下や姿勢変化(背中の老い)に関与しているのではないかと考えているのです。
その関係性が明らかになり、原因をコントロールすることができれば、脊柱後弯の新たな治療法を見つけだすことができるかもしれません。
SOD1遺伝子欠損マウス(遺伝子操作によって特定の遺伝子を無効化させたマウス)を用いた研究において、細胞質のスーパーオキシドが骨組織に与える影響を調査し、酸化ストレスが骨密度の低下や骨質の劣化を引き起こすことが判明しました。
また、SOD2(ミトコンドリアで発生するスーパーオキシドを分解し、細胞に有害な酸化ストレスを軽減する作用のある抗酸化酵素)を骨格筋で欠損させたマウスモデルを用いた研究では、ミトコンドリア機能不全が運動耐性の低下を引き起こすことが示されました。さらにSOD2は、骨・軟骨・椎間板などの脊椎を編成する組織において、加齢変性を調整していることが解明されました。
つまりこの研究によって、酸化ストレスと運動機能維持に大きな関係がある可能性が示唆されたということです。
この研究はまだ道半ばですが、いつか核心にたどりつくことができると、私は信じて疑っていません。
そのあかつきには、脊柱後弯の新たな治療法を確立し、背中の老いに悩む人たちを、ひとりでも多く救いたいと思っています。
その瞬間が訪れることを、ご期待ください。








