背中の老いが命取りになる理由。専門医が指摘する「背中の丸まり」が招く深刻なリスク

背中の老いが命取りになる理由。専門医が指摘する「背中の丸まり」が招く深刻なリスク pixta_83199157_S.jpg

『人は背中から老いていく 丸まった背中の改善が、「動ける体」のはじまり』 (野尻 英俊/アスコム)第3回【全7回】

「最近、疲れやすい」「背中が丸くなってきた」と感じていませんか? 実は、人の老化は「背中」から始まると言われています。丸まった背中(脊柱後弯)は、見た目年齢を上げるだけでなく、転倒や骨折、寝たきりのリスクが高まる傾向にあるのです。書籍『人は背中から老いていく 丸まった背中の改善が、「動ける体」のはじまり』(アスコム)は、整形外科専門医、脊椎脊髄外科専門医、脊椎脊髄外科指導医である野尻英俊先生が、「背中の老いのメカニズム」と対策を医学的アプローチで解説します。今回はこの本の中から、健康寿命を延ばし、いつまでも自分の足で元気に歩き続けるために知っておきたいことをご紹介します!

※本記事は野尻 英俊 (著)による書籍『人は背中から老いていく 丸まった背中の改善が、「動ける体」のはじまり』から一部抜粋・編集しました。

「背中の老い」がもたらす転倒・寝たきりリスク

「このあいだね、お茶飲み友だちの向井さん(仮名)が、転んで脚を骨折しちゃったのよ。そのまま寝たきりになってしまうんじゃないかって心配してたわ。私も最近、よく転びそうになるから本当に不安。年寄りが転ぶのって、けっこう大きな問題なのよね?」

声の主は、80代女性患者の小林さん(仮名)です。友人の向井さんが転倒して骨折したことと、ご自身にも同じようなことが起こらないかと不安になっていることを、沈痛な面持ちで話してくださいました。

小林さんのいうように、高齢者の転倒は本当に危険です。骨折と、それにともなう寝たきりの可能性を高めてしまいます。

とくに脚の骨折は、長期間の自立歩行を妨げ、筋力低下を増幅してしまうので、最大限気をつけなければなりません。

高い確率で、身体機能や認知機能が著しく衰えて要介護になりやすい、いわゆる「フレイル」と呼ばれる状態に直結してしまいます。

日本老年医学会は、「脊柱後弯角が大きい高齢者は、要介護状態になりやすく、ADL(日常生活動作)の低下が顕著になる」ことを指摘し、「とくに、コブ角(脊柱のなかでもっとも傾きのある上方の骨と下方の骨それぞれから直線を伸ばし、2本の直線が交差する部分の角度のこと)が40度以上後弯している高齢者は、転倒→骨折→入院→寝たきりという流れに陥るリスクが高まる」という見解を示しています。

また、アメリカの老年医学誌『ジャーナル・オブ・ジェロントロジー』に2005年に掲載された論文には、「胸椎の後弯が強い女性は、歩行困難やADL制限の発生率が高いため要介護状態に移行しやすく、とくにコブ角が標準より大きいグループの約7割の人は、移動能力の制限のリスクが約2倍になった」という研究結果が記載されています。

脊柱後弯は、その度合いが大きくなればなるほど、要介護状態になるリスクを高めてしまうのです。

人間は年を重ねると、筋力、視力、判断力などが衰え、転びやすくなります。そして、脊柱後弯があるとそのリスクはさらに上昇することが、さまざまな研究によって明らかにされています。

「背中の老い」がもたらす悪影響は、内臓疾患だけにとどまりません。日常生活に支障をきたし、スムーズに歩けなくなり、転倒とそれにともなう骨折、場合によっては寝たきりという、考えたくもない悪循環をまねいてしまう可能性を高めるのです。

「そんなに恐ろしいこと言わないでよ、先生。寝たきりなんて嫌だから、ちゃんと今日から運動します。はい、約束します。若く見られるのもいいけど、何よりまだ死にたくないから(笑)」

みなさんも小林さんに倣って、高齢者の転倒の危険性と深刻さに、しっかり意識を向けるようにしましょう。そして、転ばない対策、ひいては背中の老いの予防に、意欲的に取り組んでください。

 
※本記事は野尻 英俊 (著)による書籍『人は背中から老いていく 丸まった背中の改善が、「動ける体」のはじまり』から一部抜粋・編集しました。
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