
『働きすぎで休むのが下手な人のための 休息する技術』 (菅原 道仁/アスコム)第3回【全7回】
「休む」というと、ただゴロゴロすることだと思っていませんか? 寝ても疲れが取れないのは、あなたが「疲れの正体」を知らないからかもしれません。書籍『働きすぎで休むのが下手な人のための 休息する技術』(アスコム)では、脳神経外科医の菅原 道仁氏が、長年の研究からたどり着いた「疲れを取るための技術」を分かりやすく解説しています。ご自身の体の状態を理解することから始め、その時のあなたに合った「正しい回復法」を実践するだけで、少しずつ体が軽くなっていくのを実感できるでしょう。今回はこの本の中から、だるさや重さから解放され、毎日をいきいきと過ごすためのヒントをご紹介します。
※※本記事は菅原 道仁 (著)による書籍『働きすぎで休むのが下手な人のための 休息する技術』から一部抜粋・編集しました。
疲れの種類そのものが昔とは変わった?
疲れやすく、休息を欲している日本人は、昨今どんどん増えつつあります。
その一因は、疲れの種類や感じ方が変わってきていることにあると考えます。
昔は仕事にしろ、プライベートにしろ、自分の体を動かすことが多く、体の疲れを感じることが多かったはずです。体の疲れは脳の疲れと異なり、安静や睡眠によってスムーズに回復を図ることができます。
それに対して現代は、コミュニケーションツールの進化、ECサイトやネットバンキングの利便性の向上、フードデリバリーサービスの拡充などにより、直接人に会ったり店舗に足を運ばなくても、大切な仕事や用事を簡単にこなせるようになりました。
コロナ禍の到来により、その風潮がさらに強まったことはいうまでもありません。相対的に、体の疲れよりも脳の疲れのほうを感じやすくなったのです。
疲れの根源のひとつは「空気の読みすぎ」
他人との関わり方や、距離のとり方の基準や常識が変わったことも、大きく影響しているでしょう。
「他人への気づかい」はいつの時代も大切ですが、自己主張をセーブし、人間関係になるべく波風を立てないように振る舞うことが、昔よりも重んじられるようになった気がします。
いわゆる「空気を読む」という行為です。
自分が悪目立ちしないように、他者から攻撃されないように、過剰に空気を読んで言動や行動を慎重に選択することは、大きなストレスを生みます。
それに輪をかけて、SNSの爆発的な普及が状況をエスカレートさせつつあります。
家族、友人、仕事で関わる人たちへの気づかいだけではなく、会ったこともない見ず知らずの人への配慮も怠ると、炎上したり、誹謗中傷されたりすることが起こり得るようになったのです。
空気を読むことにとらわれ、四六時中、周囲への過剰な気づかいをしていたら、ストレスは際限なく蓄積していき、自律神経も乱れまくってしまうことでしょう。これが、昔と今で異なる疲れの種類のトレンドです。
「スルーする力」を鍛えて上手にやり過ごす
私がみなさんにお伝えしたいことは、自分の心が疲弊しきってしまうほど、周囲に対して配慮しなくてもいい─これに尽きます。
空気を読まなくていいとは言いません。とくに組織に属していれば、折り合ったり、妥協点を見いだしたりすることも、時に必要となるでしょう。
しかし、空気を読みすぎるあまり、自分自身が疲れてしまうのは大問題です。そこまで気にすることはありません。
自分が違うと思えば主張していいですし、それで波風が立つことを危惧するのなら、相手の言うことを受け流してしまいましょう。
仮に険悪なムードになったり、自分の立場が悪くなったりしても、長い人生において、それは一時的なつまずきに過ぎません。その相手とこの先、一生付き合っていくのかと自らに問えば、その答えはほとんどが「ノー」となるでしょう。ならば、重く受け止める必要はないということです。
和を乱さないことばかりを気にして疲れがたまり、心を病んでしまっては身も蓋もありません。私たちに必要なのは「スルーする力」です。
自分を守ることを優先して、うまくやり過ごしていきましょう。








