夏の尿トラブル解決のキーワードは「水分」「漢方」「夏冷え対策」!/尿もれ

夏の尿トラブル解決のキーワードは「水分」「漢方」「夏冷え対策」!/尿もれ pixta_39764966_S.jpg「くしゃみをすると尿がもれる」「頻繁にトイレに行きたくなる」など、尿トラブルは誰にでも起こることです。女性は男性に比べて尿道の長さが短く、また出産などで骨盤底筋が緩んだりするため、排尿のトラブルが起こりやすくなります。しかし「尿もれ」はデリケートな悩みのため、病院へ足を運ぶことをためらう人も。

そこで今回は、尿もれや頻尿などの尿トラブルの改善法を、よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニック院長の奥井識仁先生と、セントソフィアクリニック院長の伊藤知華子先生のお二人に伺ってみました。

前の記事「レーザー治療もあるの!? 最新の「尿もれ」治療で不快トラブル解消/尿もれ(6)」はこちら。

 

日常生活を見直せば、尿の悩みは改善します!

尿トラブルの原因は、日常生活の中にも潜んでいます。特に夏に注意したいのは、水分の摂り方です。「水分を大量に摂ると尿もれにつながります。一方、極端に水分を制限すると脱水症状の原因に。水分は少しずつ摂りましょう」(伊藤先生)。

次に気をつけたいのは、冷房による下半身の冷え。「下半身が冷えると血流が悪くなり、尿もれの原因になります。腰周りを温めるよう心がけてください。失禁対策用の下着を活用するのもいいでしょう」(伊藤先生)。

尿もれ改善には、漢方薬も有効です。「特に70代以上の場合、スクワットで下肢の筋肉を鍛えるのと併せて、漢方薬を服用することで症状の改善が見込めます」(奥井先生)。漢方を利用する場合、自己判断で誤った薬を飲むとかえって症状が悪化することがあります。また、同じ薬を長く飲み続けることで副作用が生じることも。必ず医師や薬剤師に相談しましょう。

 

●水分...1日に摂るべき水分量は1000~2000ml

水分を摂り過ぎると...余分な水分は、すぐに体の外へと出てしまいます。そのため、多く摂り過ぎた水分はすぐに尿となり、頻尿が悪化しやすくなります。

水分が少な過ぎると...頻尿だからと水分を制限すると、尿が濃くなって膀胱が刺激され、尿意が強くなります。夏場は熱中症や脱水症状で体調を崩す原因にもなります。

《気をつけた方がよい飲み物は?》
カフェインが多い飲み物
コーヒーや緑茶、紅茶のように、カフェインが多く含まれている飲み物は利尿作用が高く、自然と尿の量が増えてトイレが近くなってしまいます。お茶ならば、カフェインが含まれていない麦茶やルイボスティーなどがおすすめです。

カリウムが多いお酒
アルコールには利尿作用がありますが、カリウムにも利尿作用があるため、カリウム含有量の多いビールやワインはトイレが近くなります。カリウム含有量の少ない、日本酒や焼酎、ウイスキーなどを適量楽しむようにしましょう。

 

●漢方...スクワットに漢方を合わせると、尿もれの改善効果がアップ!

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
[含まれる生薬]
・人参 ・当帰(とうき)・陳皮(ちんぴ)・升麻(しょうま)
・白朮(びゃくじゅつ)・大棗(たいそう)・甘草(かんぞう)
・黄耆(おうぎ)・柴胡(さいこ)・生姜(しょうきょう)


[こんな人に]
・尿もれが気になる人
・骨盤臓器脱の人

[どう効くの?]
もともと胃下垂や脱肛(※)、子宮脱など、筋肉の緊張不足のトラブルに用いられてきた漢方で、筋肉の緊張を調整します。尿もれには最もよく使われる漢方です。

※脱肛とは、直腸の下部分の粘膜が肛門の外に出てしまう疾患で、いぼ痔などが原因で起こります。軽度の場合は塗り薬や座薬での治療が一般的。悪化した場合は手術が必要となります。

 

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
[含まれる生薬]
・当帰(とうき)・川(せん)きゅう・茯苓(ぶくりょう)
・白朮(びゃくじゅつ)または蒼朮(そうじゅつ)・沢瀉(たくしゃ)
・芍薬(しゃくやく)

[こんな人に]
・若年層で尿もれが気になる人
・足腰が冷える人

[どう効くの?]
血行を良くして体を温めるとともに水分代謝を整え、冷え性や生理不順を改善します。30~40代前半の人の治療に使われることが多いです。

 

 

●夏冷え...冷房の効いた屋内やお出かけの際は、失禁対策下着を活用!

骨盤周りを下着でサポート
室内のエアコンをはじめ、夏は体を冷やしやすい季節。一方で、ハイキングや旅行など、お出かけの機会も多くなりますよね。体が冷えるとトイレが近くなり、尿トラブルを起こしやすくなります。失禁対策の施された下着など、便利なアイテムを活用して、快適に過ごしましょう。

尿もれ対策パンツはこう選びましょう

(1) 吸収量に注目!
失禁対策用のパンツは、股の部分が補強されているものが一般的です。下着を選ぶ際は、日ごろの尿もれの量に合わせることが基本。また、消臭機能付きのタイプなどもあります。

25cc程度
くしゃみしたときなど少量の尿もれがある人に。補強部分が薄くはき心地も快適です。

50cc未満
長時間トイレに行けないときに。25cc程度の失禁対策パンツでは不安な人にも。

50cc以上
多めの尿もれに対応可能。尿もれパッドのようにずれず、安心して着用できます

 

(2) 補正下着はNG!
補正下着はおなかを圧迫し続けるため、膀胱や骨盤底筋の機能を低下させて尿トラブルの悪化を招きます。尿もれ対策には、骨盤や骨盤底筋のみに働きかける下着を選びましょう。

 

取材・文/笑(寳田真由美) 

 

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奥井識仁(おくい・ひさひと)先生

よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニック院長。東京大学大学院医学系修了。ハーバード大学臨床留学、ブリガム&ウイメンズ病院で女性手術を学ぶ。専門は骨盤臓器脱。年間800件に及ぶ尿失禁手術を行う。


 

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伊藤知華子(いとう・ちかこ)先生

セントソフィアクリニック院長。名古屋第二赤十字病院産婦人科、成田病院勤務を経て、米国サウスカロライナ医科大学生殖遺伝学教室留学、2008年より現職。専門は婦人科。生殖医療専門医。

この記事は『毎日が発見』2018年7月号に掲載の情報です。

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