爪がないと歩けない!? 体重を支える足の爪の仕組み/足の爪の変形

爪がないと歩けない!? 体重を支える足の爪の仕組み/足の爪の変形 pixta_35874080_S.jpg普段はあまり気にすることのない、足の爪。小さなパーツですが、変形したり、色が変わったりしていませんか? 巻き爪をはじめとする足の爪の異常は、実は歩き方や姿勢などの生活習慣や外反母趾など、さまざまな要因の積み重ねから複合的に起こっているもの。大したことないと思っていると、やがて強い痛みを伴い、歩行困難にもつながるので、注意が必要です。

さまざまな足の爪の異常やその原因、正しいセルフケアの方法を、皮膚科医で、「日本フットケア学会」の理事も務める高山かおる先生にお聞きしました。

 

爪は指先の機能を高める大事な皮膚の一部

意外と知られていませんが、指の先を覆っている爪は、実は皮膚の一部で、皮膚の最も表面にある角質層が硬化したものです。

「私たちが『爪』と呼んでいるところは、医学的には『爪甲(そうこう)』という部分です。爪甲は爪の生え際の『爪母(そうぼ)』という部分で作られ、指先のほうに伸びていきます。爪甲と接触している、いわゆる爪の下の皮膚の部分は『爪床(そうしょう)』といいます。爪甲はこの爪床から栄養や水分をもらって成長します」と、高山先生。

健康的な爪は
●ピンク色をしている
●適度な厚みがある。手の爪で約0.3~0.6㎜、足の爪はそれよりやや厚め
●適度な弾力がある
という特徴を持っています。

手の爪の場合は1日に約0.1㎜ずつ伸び、爪全体が生まれ変わるのに6カ月ほどかかります。足の爪はもっと遅く、手の爪の2倍近くかかります。ですから、足の爪のケアや治療には時間がかかります。症状が改善して次の新しい爪に生まれ変わるまで1年以上は見たほうがいいことになります。
加齢とともに伸び方は緩やかになり、年齢を重ねるにつれ、乾燥して厚くなる傾向にあります。

爪は体の中では小さなパーツですが、指の機能を高めるためになくてはならないものです。主に次のような役割があります。
(1)指先を保護する
(2)指の力を強くする
(3)指の触感を鋭くする
(4)指の動きのバランスを取る 

もし爪がなかったら、さまざまな不具合が生じます。
「例えば、手に爪がないと、指先に力が入らなくなるため、物をつかむことや細かい作業ができなくなります。足の爪がなくなると、歩く時につま先に力が入らないので、バランスを崩して転倒しやすくなったりします。足の爪には『体重を支える』という大きな役割もあるのです」(高山先生)

足も手も、指先の骨(末節骨)は指の一番先まではありません。足の指の場合、地面から受ける下からの力が指に加わった時、骨のない指先の部分を上から爪が支えてくれるので、足の指でうまく地面をつかんだり、後ろに蹴ったりできるのです。

爪の病変は手よりも足のほうによく起こると、高山先生は言います。手の指はよく動かし、しょっちゅう使うので、大きなトラブルにはつながりにくいですが、足は違うそうです。

「立っている時も、歩いている時も、足には全ての体重がかかります。しかも、下の地面からも強い衝撃を受けているので、足にかかる負担はとても大きいのです。

特にトラブルに見舞われやすいのが、足の第1指、つまり、親指です。『巻き爪』をはじめとする足の爪の異常は多くの場合、この親指に起こります。体重を支えている時、足の親指には他の指よりずっと大きな力がかかっています。また、歩いたり走ったりする時は、足の第5指(小指)から第2指(人さし指)の4本に体重を移動させるように踏み締め、最後に親指を地面から離すようにして前に進みます。親指はそれだけ爪にもひずみが出やすいということです」(高山先生)。

関連記事:「親指に多い「巻き爪」。外反母趾、靴、深爪が主な要因です/足の爪の変形」

足の爪は小さくても、立ったり歩いたりするのに欠かせない、大事な部分です。痛みや異常を感じたまま、ケアをしないでいると、やがて歩行困難や寝たきりを引き起こすこともあります。皮膚の一部ですから、異常を感じたら、まずは近くの皮膚科を受診しましょう。

 

次の記事「足の爪が変形する4つの原因とは?/足の爪の変形(2)」はこちら。

取材・文/岡田知子(BLOOM)

爪がないと歩けない!? 体重を支える足の爪の仕組み/足の爪の変形
<教えてくれた人>
高山かおる(たかやま・かおる)先生

医師・医学博士。済生会川口総合病院皮膚科主任部長、東京医科歯科大学臨床准教授。接触性皮膚炎、フットケアを専門とする。難治性の巻き爪、陥入爪、肥厚爪などの疾患に対し、トラブルの根治を目指した原因の追求、診察、専門治療のほか、セルフケアの指導を行う。「100歳まで自分の足で歩ける社会」を目的に発足した「足育研究会」の代表、日本フットケア学会の理事を務め、フットケアの啓発活動も行っている。著書に『巻き爪、陥入爪、外反母趾の特効セルフケア』(マキノ出版)、監修に『皮膚科医が教える本当に正しい足のケア』(家の光協会)

 

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