近年、口腔機能の低下が全身の不調につながるとよく知られるようになってきました。こうした口腔機能の低下には、歯周病や虫歯などによるかむ力の低下・だ液の減少・舌の筋力の衰えなどがあげられます。ただ口と歯は、日々のセルフケアで健康に保てます。
今回は自分自身で毎日できる"口腔機能を健康に保つ方法"を、東京医科歯科大学講師で認定歯科衛生士(老年歯科)の小原由紀先生に伺いました。
前の記事「虫歯?誤嚥?酸蝕歯(さんしょくし)? 口と歯の健康度をセルフチェック/口と歯(2)」はこちら。
正しい歯磨きは毎食後すぐ!が基本です
●基本の歯磨き
1カ所 20 回を目安に、磨く順番を決めて行います。
1.毛先を歯の表面に当てる
歯ブラシの毛先を、歯と歯茎の境目、歯と歯の間に直角に当てます。
2.小刻みに動かす
歯ブラシは5~10㎜の幅を目安に小刻みに動かし、1~2本ずつ磨いていきます
【歯ブラシは軽い力で !】
磨くときは、歯ブラシの毛先が広がらない程度の力で。1週間程度で歯ブラシの毛先が広がる人は、力が強すぎます。
◎ここは念入りに
歯ブラシが届きにくい場所はひと工夫を。
▶歯と歯茎の境目
歯と歯茎の境目に対して、歯ブラシを45~90度の角度で毛先が当たるようにして、5㎜幅程度で動かします。
▼
▶背の低い歯
奥歯の背の低い歯はポイント用のブラシ (ワンタフトブラシ)を使いましょう。
▼
【歯磨きは、食後すぐに!】
食べかすを取り去り、細菌の繁殖を抑えるためには、食後なるべく早めの歯磨きが基本です。ただし、酸蝕歯(※)で口の中が極端に酸性に傾いてしまっている人は、食後30分程度たってから行いましょう。
※酸蝕歯 飲食物や胃液に含まれる「酸」が原因で歯が溶けてしまうこと。酸によって柔らかくなった状態の歯は歯磨きによってエナメル質が削れやすい。
【利き手側の歯にご注意!】
歯磨きをする際は、磨く順番を決めて行うと、磨き残しが少なくなります。特に、利き手側は磨き残しが多くなりがちなので、丁寧に行うように気を付けましょう。
●うがい
フッ素の効果を期待するなら歯磨き後のうがいは1 回のみ!
歯磨きの際はフッ化剤(フッ素)入りの歯磨き剤を使い、うがい(水15 mL)は少なめにして口の中にフッ化剤を残した方が、虫歯予防に効果的です。 特に就寝中は、だ液の分泌量 が落ちて口の中の細菌が増殖しやすいので、寝る前に歯磨きを行ったら、うがい1回で十分と覚えておきましょう
次の記事「歯と歯の‟スキマ"で使い分け。歯間のケアは歯間ブラシやデンタルフロスを/口と歯(4)」はこちら。
取材・文/笑(寳田真由美) イラスト/はせがわめいた
小原由紀(おはら・ゆき)先生
東京医科歯科大学講師、認定歯科衛生士(老年歯科)。東京都健康長寿医療センター非常勤研究員、日本歯科衛生士会理事。