「不老」や「若返り」は人類が夢見る恒久の願い。しかし、老化学研究の最先端をもってすれば、それも夢ではないかもしれません。いまや、老化のコントロールさえも現実のものとなりつつあるというのです。生命科学博士の早野元詞氏が著した『エイジング革命 250歳まで人が生きる日』より、エイジング研究の最前線をお届けします。
※本記事は早野元詞著の書籍『エイジング革命 250歳まで人が生きる日』(朝日新聞出版)から一部抜粋・編集しました。
孤独も老化の要因に
ソーシャルストレスは、人と人との関わりから生じるストレスです。
「ならば、そもそも人と関わらなければ、ソーシャルストレスを受けなくて済むのでは?」
「いつも単独で過ごしていれば、ストレスによる老化を避けられるのでは?」
そのように考えるのももっともですが、実際は違います。
単独で過ごす。すなわち孤独も、脳内ストレスの一要因となります。
人によって程度は異なりますが、孤独のもたらす悪影響は、マウスレベルの実験で明らかにされています。
仲間のマウスと一緒に飼育されている場合と、生まれたときから1匹で飼育されたマウスでは、明らかに寿命が異なります。孤独なマウスは、短命なのです。その理由は、脳の神経機能の低下です。脳の神経細胞は、他者との交わりによって活性化されます。その交わりが失われると、活性化しなくなる。すなわち機能自体が低下し、全身のホルモン制御機能にも悪影響が生じてくる。ひいては免疫機能も弱り、感染症にも罹りやすくなる。そして長く生きることなく、死に至るのです。
孤独がもたらすストレスについては、アメリカのハーバード大学にある「健康と幸せセンター(Lee Kum Sheung Center for Health and Happiness)」での研究が知られています。同センターでは、人とのつながりが幸福や健康に与える影響や、男性が孤独死しやすい原因を調べています。その結果、孤独感は個人のウェルビーイングを低下させ、健康上のリスクを高める可能性もあると指摘されています(*3)。
「集団でも生じるし、1人でも生じるのなら、心理的なストレスは避けようがないじゃない?」
いえいえ、希望を捨てるのはまだ早い。ストレスをストレスにしなければいいのです。