他人との比較をやめれば、不要なストレスは抑えられる。ストレスと老化の興味深い関係

『エイジング革命 250歳まで人が生きる日』(早野元詞/朝日新聞出版)第4回【全4回】

「不老」や「若返り」は人類が夢見る恒久の願い。しかし、老化学研究の最先端をもってすれば、それも夢ではないかもしれません。いまや、老化のコントロールさえも現実のものとなりつつあるというのです。生命科学博士の早野元詞氏が著した『エイジング革命 250歳まで人が生きる日』より、エイジング研究の最前線をお届けします。

※本記事は早野元詞著の書籍『エイジング革命 250歳まで人が生きる日』(朝日新聞出版)から一部抜粋・編集しました。


孤独も老化の要因に

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※写真はイメージです(画像提供:ピクスタ)

ソーシャルストレスは、人と人との関わりから生じるストレスです。

「ならば、そもそも人と関わらなければ、ソーシャルストレスを受けなくて済むのでは?」

「いつも単独で過ごしていれば、ストレスによる老化を避けられるのでは?」

そのように考えるのももっともですが、実際は違います。

単独で過ごす。すなわち孤独も、脳内ストレスの一要因となります。

人によって程度は異なりますが、孤独のもたらす悪影響は、マウスレベルの実験で明らかにされています。

仲間のマウスと一緒に飼育されている場合と、生まれたときから1匹で飼育されたマウスでは、明らかに寿命が異なります。孤独なマウスは、短命なのです。その理由は、脳の神経機能の低下です。脳の神経細胞は、他者との交わりによって活性化されます。その交わりが失われると、活性化しなくなる。すなわち機能自体が低下し、全身のホルモン制御機能にも悪影響が生じてくる。ひいては免疫機能も弱り、感染症にも罹りやすくなる。そして長く生きることなく、死に至るのです。

孤独がもたらすストレスについては、アメリカのハーバード大学にある「健康と幸せセンター(Lee Kum Sheung Center for Health and Happiness)」での研究が知られています。同センターでは、人とのつながりが幸福や健康に与える影響や、男性が孤独死しやすい原因を調べています。その結果、孤独感は個人のウェルビーイングを低下させ、健康上のリスクを高める可能性もあると指摘されています(*3)

「集団でも生じるし、1人でも生じるのなら、心理的なストレスは避けようがないじゃない?」

いえいえ、希望を捨てるのはまだ早い。ストレスをストレスにしなければいいのです。

 

早野元詞

慶應義塾大学医学部整形外科学教室特任講師。生命科学博士。 専門は老化、エピジェネティクス。環境やストレスに応じた遺伝子発現パターンと細胞のアイデンティティを決定する後天的な老化制御に興味を持っており、化合物、ゲノム編集、デバイスによる老化の定量とコントロールを目指している。2005年よりDNA複製タイミングの制御因子の単離と解析に従事し、2011年に東京大学大学院新領域創成科学研究科博士を取得。2011年から2013年まで東京都医学総合研究所ポスドクとして研究に従事。2013年より米ハーバード大学医科大学院のデビット・A・シンクレアのラボへ留学。2014年よりHuman Frontier Science Program (HFSP) long-term fellowおよび日本学術振興会海外特別研究員。シンクレア研究室にて新規老化モデルICEマウスを構築。2017年より慶應義塾大学医学部、特任講師。

※本記事は早野元詞著の書籍『エイジング革命 250歳まで人が生きる日』(朝日新聞出版)から一部抜粋・編集しました。
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