鼻づまりや鼻水が止まらない、においが分からない...などの症状のある副鼻腔炎。生活にも支障をきたし、生活の質も低下させます。今回は東京女子医科大学病院 耳鼻咽喉科教授である野中 学先生に「副鼻腔炎」の治療法と自分でできる対策を教えていただきました。
「花粉症を合併している人や、すでに喘息を患っている方は、慢性副鼻腔炎になりやすいので注意してください。早い段階で適切な治療を受けることが、有効な予防法としても役立ちます」
と野中先生は話します。
喘息は呼吸困難を伴うために、発作が生じると医療機関を受診するケースが多いといえます。
最近は、吸入器による薬剤の発展で、死に至るような重篤な症状を防ぎ、症状をコントロールすることが簡便になっています。
ところが、症状が治まりやすくなったことで、治療を途中でやめてしまう人もいるそうです。
「喘息の治療をおろそかにすると、気管支の炎症が悪化することで、好酸球性副鼻腔炎や好酸球性中耳炎の発症リスクも高まります。治療はきちんと受けましょう」
と野中先生はアドバイスします。
好酸球性中耳炎は、好酸球によって中耳に炎症が起こる病気で、喘息の人の約3割が合併しているそうです。
原因不明で増える好酸球を抑制するのは難しいのですが、増えてしまった好酸球を早い段階であればおとなしくさせることができます。
また、慢性副鼻腔炎の引き金や悪化を後押しする風邪を予防することや、花粉症予防も、副鼻腔を守るために重要といえます。
「慢性化膿性副鼻腔炎の最大の予防は風邪予防です。当たり前のようですが、マスクを着用し、手洗いとうがいをこまめに行うなど、生活習慣を整えましょう」と野中先生。
ストレスはなるべく発散し、食生活を見直して、鼻の症状が止まらないときには耳鼻咽喉科へ。
その心がけを持ちましょう。
副鼻腔炎の治療
●薬物療法
<慢性化膿性副鼻腔炎の場合>
抗生物質(マクロライド系抗菌薬など)を使用。副鼻腔の炎症、特に鼻水を抑えるのに効果があります。
<好酸球性副鼻腔炎の場合>
主にステロイド薬を使用します。ステロイド薬には鼻噴霧薬と内服薬があり、アレルギーの炎症を抑える効果があります。
●局所療法
鼻水や膿を吸い出す処置をし、薬を霧状にして噴射するネブライザーという装置を使って薬を吸入します。炎症部分に薬を直接届けることができ、内服薬に比べて薬の量が少なく済むので副作用が少ないとされています。
●手術
鼻茸がある場合には行います。内視鏡を使って行い、痛みも出血も少なく、患者さんへの負担が少なくなっています。そのほかに、炎症によって閉じてしまった副鼻腔と鼻腔を広く開通させる単洞化手術を行うこともあります。
鼻づまりを和らげる生活習慣
一般的に蓄膿症予防などで「鼻うがい」が行われています。水道水による自己流よりは市販薬を使った方がベター。主治医に相談しましょう。水のような鼻づまりのときには、鼻を温めて血行を良くすると鼻の通りが良くなって症状が和らぎます。朝、起きたときに試してみましょう。
はなを思いっ切りかむと鼻の粘膜が傷つきやすくなります。粘膜のダメージは細菌感染や炎症につながります。はなは優しくかみましょう。
取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史