「最近、人の名前がパッと出てこない」「やる気を出して出かけたのに、すぐにカフェで休憩したくなる」。そんな日常の「あれ?」を、年齢のせいにして見過ごしていませんか? 実はその小さな変化、心と体が「ガス欠」を起こしかけているサイン=「フレイル」かもしれません。
そんな50代からの心身の変化をユーモアたっぷりに詠む「50歳からのフレイル川柳」受賞作品発表会(主催:株式会社ツムラ)が開催されました。応募総数はなんと3万件超え! 50代ど真ん中のスペシャルゲスト・中川家のお二人や浮世川柳家のお鶴さんも共感した、大盛況のイベントをレポートします。
■人生の曲がり角は50代? 「老いの坂道」の正体とは

「フレイル」という言葉の意味はなんとなくわかっても、具体的にどういう状態なのか、ピンとこない方も多いのではないでしょうか。ステージに登場した、医師でありフレイルの専門家である東京大学の飯島勝矢先生は、これを「老いの坂道」という言葉で説明しました。
誰でも年を取れば体力は落ちるもの。でも怖いのは、なだらかだった坂道がある日突然「ガクッ!」と角度を変えて急降下することです。この「健康」と「要介護」の間にある崖っぷち状態こそがフレイル。しかも先生いわく、坂道が急になり始めるのは、なんと「50歳」から! 足腰が弱るだけじゃなく、「出かけるのが面倒」「誰とも会いたくない」という心のブレーキもセットになって、転がるように落ちていってしまうのだとか。

ここでキーワードとなるのが、医学用語で「筋肉の衰え」を意味する「サルコペニア」。加齢で気力が落ちて、なんとなく家でゴロゴロ...。そんな生活をしていると、「痛くも痒くもないのに、筋肉がどんどん減っていく」そうなのです。
例えば、元気な高齢者がもし2週間寝たきり生活をしてしまうと、普通なら5〜7年かけてゆっくり減るはずの筋肉が、たったそれだけの期間で失われてしまうこともあるのだとか! これがサルコペニアの怖さなんですね。
筋肉が減ると、ドミノ倒しのように不調が押し寄せます。認知機能や血糖値への悪影響はもちろん、「尿漏れ」や、食事中の「ムセ」も、実は筋肉不足がその一因なのだとか。夏場の熱中症だって、水分タンクである筋肉が減っているからなりやすいのだそう。
そこで先生が提案するのが、フレイル予防の「3つの柱」である「栄養(食事・口腔機能)」「身体活動(運動・家事など)」「社会参加(人とのつながり・お喋り)」。ジムに行かなくても、家事をテキパキこなしたり、友達とランチでお喋りしたり。そんな「楽しい日常」をしっかり送ることこそが、私たちの気力と体力を守る近道なんですね。
■応募総数3万件超え! みんなの「リアルな叫び」に勇気をもらう!
日本人の平均寿命は84.07歳。世界でもトップクラスの長寿国です。でも、実は、健康に何不自由なく過ごせる「健康寿命」との間には、約10年もの差があるのだそう。「人生のラスト10年はずっと不調ってこと...?」と想像すると、正直怖くなってきますよね。だからこそ、病気になる手前の「フレイル」の段階で気づいてケアすることが何より大切。そこで、「人生の折り返し地点、50代から本気で対策していこう!」と、株式会社ツムラが2025年1月からスタートさせたのが「50歳からのフレイルアクション」プロジェクトです。
今回の川柳キャンペーンも、その作戦のひとつ。「最近、体がいうこと利かないなあ...」なんていう変化や不調をユーモアたっぷりの「5・7・5」にして笑い飛ばしちゃおう!というポジティブな企画なんです。なんと応募総数は3万1937件! 会場で発表された受賞作品は、どれも「わかる!」と膝を打ちたくなるものばかり。笑いながら、「あ、これってフレイルだったんだ」と気づかせてくれる名句をご紹介します。
【グランプリ】 観光に 来たはずなのに カフェはしご (埼玉県 50代 たけちん)
「名所を巡ることよりも『休憩場所』が気になり始めたら...それはフレイルの入り口かもしれません」と株式会社ツムラの北村誠さんは審査員を代表してコメント。「旅先で歩き、語らい、楽しむという当たり前の幸せを、一生続けていってほしい」という願いと共にグランプリに選出されました。
【準グランプリ】 推し活で 自律神経 チューニング (福岡県 40代 あやいちろ)
審査員の浮世川柳家・お鶴さんが評価したのは、その前向きな姿勢でした。「症状への不安や心配を詠んだものも多いなか、私はこの句を見た時に『かっこいいな』と思いました」 不調を嘆くのではなく、「推し活」というエネルギーで乗り越えようとする。そのポジティブなメンタル自体が、最高にカッコいいフレイル対策と言えそうです。
【中川家 ザ・ラジオ賞】 覚えてる 五分前より 五年前 (愛知県 40代 さごじょう)
さっき聞いたことは右から左へ抜けていくのに、昔のことは鮮明に覚えている不思議。中川家のお二人も、この記憶の逆転現象には深く共感していました。「最近のことは思い出せないのに、昔話だけは止まらない」という症状、もはや世代共通の「あるある」として笑い飛ばすのが正解のようです。
【審査員賞】 柿を見て 梨と言ってる なんでだろ (茨城県 60代 御伽草子)
お鶴さんが「うまい川柳」と唸ったのがこちら。頭ではわかっているのに、違う単語が口をついて出るミステリー。「日常生活で困るわけじゃないけれど、『あれっ?』と思うことが少しずつ起きてくる。フレイルの症状を『柿と梨』だけで全て網羅しているのがすごい!」深刻になりすぎず、「なんでだろ」という明るい結びが、不安を吹き飛ばしてくれます。
【審査員賞】 ゴリラ顔 違うのこれは 舌回し (千葉県 50代 あきのそら)
鏡の前ですごい顔をしているのを家族に見つかった!...なんて気まずい瞬間でしょうか。 でもこれ、ただの変顔じゃないんです。フレイル専門家の飯島先生によると、この「舌を回す動き」こそが、お口の機能低下(オーラルフレイル)を防ぐための立派なトレーニングなのだとか。つまり、このゴリラ顔は健康への第一歩。先生のお墨付きとなれば、今日から堂々と、家中でゴリラ顔ができそうです!
■「何もないけど はよ帰る」中川家・剛さんの本音に思わず共感!
トークセッションでは、50代当事者として登壇した中川家のお二人が、「気候を理由にすぐカフェで休みたくなる」「何かにつけてため息をついている」といったフレイル予備軍なエピソードを次々と告白。会場からは「わかる!」と言わんばかりの笑いが起こりました。そこで剛さんが発表したのが、今の心境を素直に詠んだこの一句です。
「仕事して 何もないけど はよ帰る」
「昔のような打ち上げに出る体力がない。家で何かあるわけじゃないけれど、早く帰って素の自分に戻りたい」と語る剛さん。実はこの「気力の低下」こそが、フレイル対策の要。飯島先生も、「栄養・運動・社会参加」というフレイル予防の3本柱を支えるのは「気力」だと語ります。時には漢方薬などの助けも借りながら、気力を底上げすることも有効だというアドバイスに、お二人も深く納得されていました。
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「老いによる不調」と聞くとつい身構えてしまいますが、今回のイベントを通して感じたのは「みんな同じなんだ」という安心感でした。自分の変化をネガティブに捉えるのではなく、川柳にして笑い飛ばしてみる。そして「じゃあ、今日は一駅分歩いてみようかな」「友達とランチに行こうかな」と、少しだけ行動を変えてみる。そんなちょっとした心がけこそが、50代からの「老いの坂道」をゆるやかに下る一番の秘訣なのかもしれません。


