年を重ねるにつれ、誰もが感じるのが視力の衰え。いわゆる「老眼」ですが、これは加齢によって目の中の奥の水晶体が老化することから発症するもので、45歳前後を迎えるころから、ならない人はいない症状です。その仕組みや最新の医療技術、また、老眼になってからの生活を少しでも快適に送る方法などを、みなとみらいアイクリニック主任執刀医でクイーンズアイクリニック院長の荒井宏幸先生にお聞きしました。
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サプリは眼科で。安易なマッサージは危険です
ブルーベリーや目のマッサージなど、「目にいい」といわれているものは多くありますが、実際はどうなのでしょうか。テレビなどでもよく見かける2つの話題についてお話しします。
Q. ブルーベリーって本当に目にいいの?
ブルーベリーには視細胞の働きを助ける「アントシアニン」という色素が豊富に含まれており、目にいい食品といえるでしょう。アントシアニンはポリフェノールの一種で、老化を防ぐ抗酸化作用が高く、主に眼精疲労や視力の改善、暗い場所での識別の改善などに効果があるといわれています。
しかも、アントシアニンは即効性が高いのが特徴です。摂取して2~4時間後には効果が出始めるので、目の疲れを早くとりたいときには積極的に摂るといいでしょう。ブルーベリーのほか、ぶどうやなす、あずき、赤じそ、紫いもなどにも多く含まれています。
アントシアニンの効果の持続時間は24時間。体内で蓄えることができないので、毎日こまめに摂る必要があります。
アントシアニンやルテインなど、目にいいとされる栄養素はサプリメントで摂ることも多いと思いますが、その精製方法などはよく確認する必要があります。精製方法によって体内での吸収率なども変わるので、「ブルーベリー何個分」というような言葉に惑わされないことが大切です。
おすすめは眼科医が推奨するサプリメントです。栄養素は単体で摂るよりもその働きを補助する栄養素といっしょに摂取することが望ましく、医師が勧めるものであれば、必要な栄養素がきちんとバランスよく配合されていて、効果も得やすいといえます。
眼科ではだいたい販売されていますし、置いていない場合も適切な商品を教えてくれるので聞いてみるといいでしょう。
Q. 目のマッサージってしてもいいの?
してはいけません。眼球(目玉)はもともと丸く、柔らかいもの。また、瞳の部分は透明で薄い「角膜」というデリケートな組織がドームのように少し出っ張った形をしています。まぶたの上からであっても、押したりして物理的に圧をかけるのは危険です。角膜や網膜などの組織に悪影響が出ることもあります。
目が疲れたと感じたら、眼球ではなく、「眼窩上孔(がんかじょうこう)」という目のツボを押すのがおすすめです。まゆ頭からまゆ尻に向かった1/3ほどのところの内側で、ぽこっとくぼんでいるところが眼窩上孔。この骨の部分を押すと動眼神経や三叉神経、交感神経などさまざまな神経が通っている「上眼窩裂(じょうがんかれつ)」という部分に刺激が伝わり、疲れ目によいとされています。
アイマスクなどで目をリラックスさせるのもいいでしょう。温かいものでも冷たいものでも、目が気持ちいいと感じるほうを使って構いません。
取材・文/岡田知子(BLOOM)
荒井宏幸(あらい・ひろゆき)先生
みなとみらいアイクリニック主任執刀医、クイーンズアイクリニック院長、防衛医科大学校非常勤講師。1990年、防衛医科大学校卒業。近視矯正手術、白内障手術を中心に眼科手術医療を専門とする。米国でレーシック手術を学び、国内に導入した実績から、現在は眼科医に対する手術指導、講演も行っている。著書に『「よく見える目」をあきらめない 遠視・近視・白内障の最新医療』(講談社)、『目は治ります。』『老眼は治ります。』(共にバジリコ)ほか。