誰かの言葉にすぐ反応。SNS、ツイッター、ネット記事に常に反応......毎日、ムダな「反応」をしていませんか? すべての「苦しみ」は、自分が「反応する」ことから始まっています。それを理解することが、悩みを解決する第一歩です。
本書『反応しない練習』で、ブッダの超・合理的な考え方を学び、あなたも"反応しない練習"を始めてみましょう。
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妄想を「上手にリセットする」方法がある
「妄想」を上手に解消する方法を考えてみましょう。
「妄想」こそは、人間が最も得意で、大好きで、ほぼ一日中絶え間なく繰り広げている、ナンバーワンの煩悩(ぼんのう)です。楽しい妄想だけならよいですが、仕事や家事に「追われている(あれもこれもやらなきゃ)」と感じたり、「この先どうなるのだろう」と不意に不安に駆られたり、悲しい過去を振り返って落ち込んでしまったりという心境もまた「妄想」から来ています。「ムダな妄想はリセットする」ことが一番です。
妄想をリセットする基本は、「今、妄想している」と客観的に言葉で確認することです。これは「ラベリング」です。仏教の瞑想本にも、そう書いてあります。ただ実践してみると、これがけっこう難しいのです。というのも、妄想は「無意識のうちにハマってしまっている」ものだからです。たいていは、妄想していたことに「後で」気づきます。これは、座禅修行に勤めるお坊さんたちも、みんな実感していることです。
本書では一歩踏み込んで、妄想を抜ける秘訣を「本邦初公開」しましょう。それは、「妄想している状態」と「妄想以外の状態」とを区別することです。
たとえば今、目を閉じてみます。目の前に見える暗がりに、何かを思い浮かべてください。今朝食べたものや、テレビで見た映像など、なんでも想像してみてください。
次に、目をぱっちりと開いて、前を見ます。部屋の中や外の景色を、よく見つめてください。そして、「ああ、これが見えているという状態(網膜が光を感知している状態、視覚)なのだ」と意識します。このとき、さっきまで脳裏に浮かんでいた映像は、存在しませんね。「さっき見ていたものは、妄想である」「今見ているのは、視覚(光)である」と、はっきり意識してください。
こうして、妄想と、それ以外の状態とを見分けられることが大事なのです。「妄想」対「視覚」、「妄想」vs.「カラダの感覚」です。そして、妄想とはまったく別種の「カラダの感覚」に意識を向けます。呼吸しているときの「鼻先を空気が出入りする感覚」または「お腹がふくらんでいる・縮んでいる感覚」を意識します。
こうして、「妄想」と「感覚」の違いを意識しながら、「感覚のほうに意識を集中させる」練習を積んでいくと、「妄想から抜ける」ことが上手になっていきます。
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僧侶、興道の里代表。1969年、奈良県生まれ。中学中退後、16歳で家出・上京。放浪ののち、大検(高認)を経て東大法学部卒業。現在、インドで仏教徒とともに社会改善NGOと幼稚園を運営するほか、日本では宗派に属さず、実用的な仏教の「本質」を、仕事や人間関係、生き方全般にわたって伝える活動をしている。著書に『悩んで動けない人が一歩踏み出せる方法』(WAVE出版)、『独学でも東大に行けた超合理的勉強法』(サンマーク出版)、『消したくても消えない「雑念」がスーッと消える本』(大和出版)がある。
(草薙龍瞬/ KADOKAWA)
すべての「苦しみ」は、自分が「反応する」ことから始まっています。それを理解することが、悩みを解決する第一歩です。その事実と、具体的な方法論を教えてくれるのは、2500年前の悟った人、ブッダ(原始仏教)。本書では、原始仏典を紐解きながら、現代人の人生に活かせる合理的な考え方を紹介します。