誰かの言葉にすぐ反応。SNS、ツイッター、ネット記事に常に反応......毎日、ムダな「反応」をしていませんか? すべての「苦しみ」は、自分が「反応する」ことから始まっています。それを理解することが、悩みを解決する第一歩です。
本書『反応しない練習』で、ブッダの超・合理的な考え方を学び、あなたも‟反応しない練習"を始めてみましょう。
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前の記事「自分のカラダの感覚を"見つめて"みよう/反応しない練習(9)」はこちら。
アタマの中を分類する
これは、心の状態をいくつかの種類に分けて理解する方法です。「言葉で確認する」のと似ていますが、もう少しおおざっぱに、観念的に理解するところに特徴があります。
基本は、(1)貪欲(どんよく)、(2)怒り、(3)妄想、の三つに分類することです。
(1)貪欲――これは、過剰な欲求に駆られている状態です。平たくいえば、求めすぎ、期待しすぎ。焦りや、人間関係をめぐる不満は、たいていが、この「求めすぎる心」から来ています。
自分に、他人に「求めすぎていないか」を、つねに気をつける習慣をつけたいものです。
貪欲に支配されると、自分自身が苦しいし、関わる相手も必ず不幸にしてしまいます。
貪欲に駆られて求めすぎる人間は、本来力のなかった煩悩(ぼんのう)
に負けて、さまざまな苦悩を背負い込む。あたかも自ら打ち破った舟の穴から、水が浸入してくるように。
―スッタニパータ〈欲望〉の節
(2)怒り――これは、不満・不快を感じている状態です。イライラしている、機嫌が悪い、ストレスを感じているときは、「これは怒りの状態だ」と理解するようにしましょう。
もともと"求める心"に始まる人間の人生には、「怒り」が潜在的につきまとっているものです。「よくわからないけど、どこか不満を感じている」人は、かなり多いはずです。
でも、そうした毎日は、やはり幸せとはいえませんよね。だから、「わたしは怒りを感じている。でもこの怒りは"求める心"が作り出している、あまり根拠のない怒りである」と正しく理解して、心を静めるように心がけましょう。
「明らかに怒りがある」人は、要注意です。怒りっぽい性格の人。何かを失った「悲しみ」を抱えている人(悲しみも怒りの一種です)。過去への未練や、後悔、挫折感を引きずっている人。自己嫌悪やコンプレックスなどの心の重荷を背負っている人――。
こうした怒りを放っておくのは、「もったいない」(人生を損している)と考えましょう。
というのは、怒りは「理解する」という心の習慣によって解消できるからです。
逆に放っておくと、怒りは徐々に蓄積されていきます。怒りっぽさや、欲求不満、気難
しい性格となって、年を取るほどに外に現れてきます。
心の状態をよく見て、怒りがあることを感じたら、「怒りがある」と理解しましょう。
そうやって、怒りを「洗い流して」いけば、心はすっきりと軽くなっていくものです。
よく注意して、落ち着きを保っている人は、怒りによって、行いが、言葉が、思いがざわつくことを、よく防いでいる。かくして、心の自由をよく保っている。
―ダンマパダ〈怒り〉の章
(3)妄想――これは、想像したり、考えたり、思い出したりと、アタマのなかでぼんやりと何かを考えている状態です。「あれこれと、つい余計なことを考えてしまう」「落ち着
いて物事に取り組めない」という悩みの理由は、「妄想」にあります。
次の記事「「妄想」は人間が最も得意で一日中行っている煩悩/反応しない練習(11)」はこちら。
僧侶、興道の里代表。1969年、奈良県生まれ。中学中退後、16歳で家出・上京。放浪ののち、大検(高認)を経て東大法学部卒業。現在、インドで仏教徒とともに社会改善NGOと幼稚園を運営するほか、日本では宗派に属さず、実用的な仏教の「本質」を、仕事や人間関係、生き方全般にわたって伝える活動をしている。著書に『悩んで動けない人が一歩踏み出せる方法』(WAVE出版)、『独学でも東大に行けた超合理的勉強法』(サンマーク出版)、『消したくても消えない「雑念」がスーッと消える本』(大和出版)がある。
(草薙龍瞬/ KADOKAWA)
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