仕事や日常生活で困ったとき、人は「いい手はないかな?」とあれこれ考えます。でも、簡単にアイデアは思いつきません。しかし、「課題に素早く対応できる人はその糸口と具体的な行動がナビのように見えています」と語るのは、問題解決のプロ・高橋輝行さん。その高橋さんの著書「思考と行動を高速化する 超速! 問題解決」(アスコム)から問題解決に素早く対応できる方法をご紹介します。
「3つのボックス」で聞く
すぐに実践できるトレーニングの一つが、会話をするときに常に「3つのボックス」で整理することです。
人は意外と、色々な話をしているようで、肝心な情報をやりとりしていないことがあります。
それは、お互い何が必要で、何が必要でないかの選別ができていないことが原因です。
相手の話を「3つのボックス」にわけるだけでも、面白いことに、話の抜け漏れや、前後のつながりのおかしさなど、様々な粗が見えるようになります。
例えば、営業の報告会のような場でやってみると、違和感が際立ちます。
報告者「今月の予算は未達でした。来月は達成に向けて頑張ります」
上司「どうして予算を達成できないのか理由を説明しろ」
報告者「顧客の反応が芳しくなく......」
こんなやりとりを「3つのボックス」にわけようとしたら、どうなるでしょうか。
どのボックスも「?」だらけになってしまうはずです。
「なんでそうなるの?」「一体何の話をしているの?」といった気持ち悪さを感じるようになります。
このように会話の粗がわかるようになると、次に何を考えればいいのかがわかるようになります。
会議で「何か質問がある人は?」とおきまりのフレーズが出たら、「顧客の現状はどうなっているのでしょうか?」と建設的に議論を進めるチャンスです。
私が会議でよく違和感を覚える要注意フレーズがあるので、突っ込みどころのヒントとして紹介しておきましょう。
①状況だけ、数字だけの報告
「売上があと1億円足りません」
「危機的な状況です」
「100%必達を目指します」
現状や理想を説明するときのこういったフレーズは、情報としてほとんど意味を持ちません。
「ヤバい」と言っているのとさほど違いはなく、現在地も目的地もわからないので地図になっていません。
こうしたフレーズが出てきたら、要チェックです。
「具体的に現状がどう危機的なのか」
「1億円を挽回している状態とはどのような状況なのか」と質問し、要素を分解して「構造化」して書くようにしましょう。
②アイデアをほしがる質問
「どうしよう?」と聞いてしまうと、アイデアの乱れ打ちになります。
「売上を伸ばしたいんだけど、どうしよう?」
⇩
「テレアポを増やしてみては」
「確度の高い顧客を絞った提案」
「できる営業パーソンのノウハウ共有」
こんな風に、「現在地」と「目的地」をインプットしないまま、経路検索するような状況に陥りやすいのです。
こういうケースでは、アイデアが行き詰まってきたタイミングを見計らって、問題の背景を明らかにします。
「そもそも、どんな状況を実現するといいんだろう?」
「それはなぜかというと、どういう現状だから?」
そこを吟味したうえで、あらためて「適したアクションはどれだろう?」と話を進めていくと、絞り込みやすくなります。
ただし、「そもそも論」で議論を巻き戻すのは、タイミングを間違えると、盛り上がっている人たちに冷水をぶっかけたような雰囲気になる危険があります。
みんなが張り切ってアイデアを出し合っている真っ最中に「そもそもさ......」と切り込んでしまうと「空気を読めないヤツ」となりがちなので、ひとしきりアイデアを出し切って、みんなが「行き詰まった」と感じているタイミングを狙いましょう。
③意気込みだけの宣言
「ノルマをクリアできるよう頑張ります!(気合系)」
「見込み客のフォローを強化します!(あいまい系)」
「人員を増やす予定です!(先送り系)」
これらはアクションを示すフレーズですが、やはり悲しいほどスカスカです。
問題解決は実行できるアクションを決めて人が動くことではじめて成立すると述べてきましたが、これでは誰が何をするのかまったくわかりません。
「3回考える」を思い出して、具体的にはどういう状態が理想なのか、それを実現する取り組みは何か、キラークエスチョンを投げ込んでみましょう。
ここで紹介した要注意フレーズは、指摘されてみると低レベルなように感じますが、実際のビジネスの現場では頻出しています。
特に、いつまでたっても根本的な問題が解決せず、その都度、気合と根性で乗り切っているような組織ほど、要注意フレーズがビュンビュン飛び交っているものです。
一刻も早く問題解決するためには、せめて「3つのボックス」にわけることだけでも徹底することです。
ぜひ身の回りの様々な会話に注意して、違和感をキャッチできるようになってください。
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